5月29日に年金改革法が成立しました。
これによりかねてより話題となっていた各種年金制度のルール変更が現実のものとなりました。
今回はその内容にポイントについて解説すると同時に、それによりどんなことが可能になるのか参考になる着眼点について記載いたします。
参照:日本経済新聞電子版 2020年5月30日 年金改革法成立、高齢者の就労後押し 財政に課題も
目次
年金改革法成立に伴う年金制度の変更点
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以下、公的年金と私的年金の2つに分けて説明いたします。
公的年金
2022年から受取りは原則65歳までで、繰上げ受給で60歳から繰下げ受給で70歳までが今までのルールでした。
このうち、繰下げ受給が75歳までに変更になります。
1か月繰下げすると、年金の受給金額が0.7%増えますので、75歳まで遅らせるとトータルで84%増加することになります。
私的年金
2022年から、個人型確定拠出年金(イデコ)の加入上限は60歳から65歳まで、企業型確定拠出年金(DC)は70歳から75歳までに変更となります。
さらに同年から、企業型確定拠出年金(DC)加入者も個人型確定拠出年金(イデコ)に加入することが可能になります。
これらの変更点からどんなことができるようになるか、いくつかの着眼点について以下で説明いたします。
老後生活資金の準備を「早める」
老後生活資金というと、まとまった金額が必要なので、できるだけ若いうちから準備しておきたいと考える人もいます。
その場合に、企業型確定拠出年金(DC)に掛け金を拠出していても、2022年以降は個人型確定拠出年金(イデコ)も利用して、さらに掛金額を大きくすることが可能となります。
こうすることで、公的年金だけでは足りない老後生活資金を事前にある程度充足できるようになります。
さらに、このような準備ができれば、公的年金の繰下げ受給もしやすくもなります。
そうすれば、公的年金を繰下げしてさらにトータルでの老後年金の受取金額を増やすことも可能になります。
老後生活資金の準備を「遅らせる」
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老後生活資金も大事ですが、今の生活を乗り切るので精一杯な方や実際に老後のライフプランが見えてから本格的に準備したいという人もいます。
今回の改正で、このようなことをお考えの方にとっても各種年金制度は利用しやすくなります。
確定拠出年金は、個人型も企業型も、加入者期間(掛金を払った期間)と運用指図期間(掛金を払わずに年金資産の運用だけ行った期間)が合計で10年必要です。
今回、加入上限年齢が引き上げられたことで、老後が見えてきたタイミングからでも老後資産づくりがしやすくなります。
例えば、個人型確定拠出年金(イデコ)の場合は55歳から加入して10年掛金を拠出することで運用し、65歳から受取りすることも可能となります。
また、会社の制度上70歳まで勤務可能であれば、企業型確定拠出年金(DC)にギリギリまで加入をし続けて掛金を積み上げていくことも可能となります。
今の生活が苦しかったり、お子さんの教育費や住宅ローンがかさむなどの事情がある方でも50代から本格的に準備しやすくなり、無理して先のことを考え過ぎずに今の生活に集中しやすくもなっていきます。
老後のためにライフプランを再考しよう
2022年度から年金の受け取り方法の自由度が増します。
自由度が増すライフプランも、それに伴い変更点が出てくる方もいると思います。
今回の記事の内容も参考に、ぜひ老後生活のライフプランについても再度考えてみてください。(執筆者:佐藤 彰)