テレビや新聞のニュースで「円安」、「円高」という言葉を聞いたことがある人は多いことでしょう。
特にこれから投資を始めようと考えている人にとって、円安と円高について理解することはとても重要です。
しかし、
「海外旅行に行くならどちらがお得なの?」
といったように、馴染みのある言葉なのですが内容まで理解している人は少ないようです。
そこで今回は、円安と円高について具体例を用いながら詳しく解説していきます。
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目次
円安、円高とは結局どういうことなのか
「円安」、「円高」とは円の価値が他国の通貨に比べて、相対的に高いまたは安い状態を表現するために使う言葉です。
たとえば1か月前に1米ドル = 100円だったが、今日になり1米ドル = 110円になれば、「円安になった」と表現されます。
以下で詳しく見ていきましょう。
円安になれば「外貨預金で得」をする
外貨預金では円高の時に外貨を購入し、円安の時に決済することで為替差益(利益)を受け取ることができます。
たとえば、1米ドル = 100円の時に、100米ドルの外貨預金を始めたとしましょう。
1米ドル = 100円
そして、1年後に1米ドル = 110円の円安になったとします。
1米ドル = 110円
⇒ 利益:1万1,000円(売却した金額) – 1万円(購入した金額) = 1,000円
1米ドル = 100円の状態から1米ドル = 110円の円安の状態になったことで、為替差益1,000円を受け取ることができるのです。
ただし、1米ドル = 100円から1米ドル = 90円の円高の状態になると、マイナス1,000円となり損失が発生してしまいます。
こう見ると円高はあまりメリットがないように思えますが、実は得することもあるのです。
以下で見てみましょう。
海外旅行するなら円高がお得
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海外旅行は円高の時にするのがお得です。
円高の状態は他国の通貨と比較して価値が高い状態となり、両替できる外貨の量が増えるためです。
たとえば、1ドル = 100円の時にハワイに旅行するとしましょう。
ハワイで使える通貨は米ドルであるため、日本円から両替します。
ここでは、1,000米ドルを両替するとします。
1米ドル = 100円
1ドル = 100円の時に1,000米ドル両替するためには、100,000円必要です。
ところがこの時よりも円高の状態である1米ドル = 80円の時に、同じように1,000米ドルを両替すると以下のようになります。
1米ドル = 80円
1米ドル = 80円の方が、同じ1,000米ドルを手に入れるのに2万円も安く両替できるのです。
言い換えれば、同じ金額の日本円でより多くの米ドルを手にすることができたということです。
外貨預金は円安の時に始め、海外旅行は円高の時にする方がお得だということは分かりましたが、どのような基準で円安、円高と判断されるのでしょうか。
以下で詳しく見ていくことにします。
円安、円高の基準
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上記の画像は米ドル/円の10年チャートです。
2020年6月26日現在、1米ドル = 107円となっていますが、2011年年末あたりでは1米ドル = 80円を下回っています。
こうしてみると、現在は2011年と比較すると「円安」の状態であるといえます。
ところがさらに時代を遡ると、1960年は1米ドル = 360円という時代もありました。
実は「円安」、「円高」を判断することは難しく、過去のどの時点と比較するかで表現が変わってくるのです。
現在1米ドル = 107円で、2011年末と比較すると「円安」ですが、1960年と比較すると「円高」になるということです。
ただし、1960年は今と比べて特殊要因もあったため、一般的な表現としては、
と言えます。
では、以下で少し視野を広げ、日本経済にとって円安、円高はどちらのほうが有利かを見ていきましょう。
日本は輸出企業が多いため円安の方が有利
日本は輸出企業が多いため、円安の方が有利だといえます。
ある自動車メーカーがアメリカと貿易する場合を例にして見てみましょう。
1米ドル = 100円
1台あたりの価格:300万円 ÷ 100円 = 3万米ドル
その後、為替レートが1米ドル = 120円の円安になったとしましょう。
1台あたりの価格:300万円 ÷ 120 = 2.5万米ドル
あなたがアメリカ人の立場になって、全く同じ車を3万米ドルの時と2.5万米ドルの時のどちらで買いたいと思いますか。
答えは2.5万米ドルの時だと思います。
つまり、円安の時のほうが海外ではモノがよく売れて、日本企業の輸出が増えるのです。
日本は相対的に輸出企業が多いため、円安になると企業の売上が伸びて、株価も上がりやすくなるといわれます。
ただし、円安になると輸入品が割高になり、ガソリン価格などが上がるため、円安になれば全て良しということでもありません。
「円安」、「円高」の意味を理解して、日常生活や資産形成に役立てていきましょう。(執筆者:福森 俊希)