コロナウイルスの拡大により4月には緊急事態宣言が発出されました。
商業施設や大規模イベントをはじめ多くの業種で自粛を余儀なくされ、全国的に経済活動はストップすることになりました。
不動産投資の分野においても、「物件を見ることができない」、「金融機関がリモートワークで融資の審査が進まない」などといったことから取引が大きく減りました。
5月に緊急事態宣言が解除されて以降は経済活動も徐々に再開しており、政府の支援融資などによって株価は上昇し、不動産価格も今のところ極端に下がってはいません。
しかし、世界を見るといまだにコロナウイルス患者は増えています。
日本でも東京においては日々の感染者数が増加傾向にあり、第2波の懸念もあります。
すでに倒産する企業も多く、その数は今後さらに増えると言われています。
コロナウイルスによる経済状況の悪化で今後の不動産価格は下がるのでしょうか。
目次
首都圏の中古マンションへの影響は小さい

居住用のマンション、特に都心部では大きく価格は下がっていません。
公益財団法人 東日本不動産流通機構が発行している5月の「月例Market Watch」でも、中古マンションの首都圏における5月の成約件数は前年同月比で取引件数は-38.5%ですが、価格は+0.4%とむしろ上がっています。
一方で札幌市では、取引件数が-30.9%、価格が-17.4%、仙台市は取引件数が-46.1%、価格が-2.7%となっており、首都圏に比べて地方都市ではコロナショックの影響が出ていると言えます。
実際に私も大阪市内の北区や西区、中央区などの都市部の物件を預かって売却のお手伝いをしていますが、相場通りの価格で出せば1か月以内で成約に至るケースが多く、都心部のマンション、特に駅徒歩10分圏内の物件は根強い人気があり、当面価格が大きく下がることはないと思います。
しかし、タワーマンションなどの高額帯になると売主の目線が高いこともあり、相場よりも高値で売り出されていることが多く売れにくい状況です。
中古戸建については首都圏で影響大

中古戸建の成約件数は-20.5%、価格は-16.2%とマンションと比べると大きく下がっています。
若い世代は広さや環境を求めて戸建を選ぶよりも利便性の高い都心部の駅近マンションを好む傾向にあり、その影響も出ているのではないかと考えられます。
コロナの影響でテレワークが盛んになり、あえて都心部に住まなくてもよいと考える人も増えているという話はありますが、件数としては限定的だと思います。
一方で札幌市では、取引件数が-11.2%、価格が+10.6%、仙台市では取引件数が-16.7%、価格が+2.7%となっています。
特に札幌市では取引件数は減っていますが価格は上昇傾向にあり、2020年に入ってから2月以外は前年比で大きく上昇しており、札幌市では戸建の人気が高いと言えます。
首都圏の新築マンションは販売件数が減っても価格が下がらない
首都圏の新築マンションは、リーマンショック時には中堅デベロッパーの資金繰りの関係で価格が大幅に下がりました。
しかし、今年5月の成約件数は前年同月比82.2%と大きく減ったにも拘らず価格はほとんど下がっていません。
その理由は、現状ほとんどの物件を大手デベロッパーが手掛けており、安売りしなくても在庫を抱えて持ちこたえられるからです。
建築資材の価格高騰が続いているという背景もあり、価格を下げられない状況だとも言えます。
首都圏をはじめとした都心部の新築マンションの価格は今後も下がらないことでしょう。

収益物件は在庫不足
アパートや区分マンションなどの収益物件の価格はほとんど下がっていません。
コロナの支援融資などで資金を得た投資家によって購入されたり、ある程度の規模や実績のある法人や自己資金のある投資家、資産家などに対しては金融機関も融資する傾向にあり、現在も収益物件については取引が盛んに行われています。
しかし、ここ数年はスルガ銀行やレオパレスの問題や不正融資など不動産業界での不祥事が相次いだため、金融機関の融資審査は全体的に厳しくなっています。
特に、これまで不動産ブームを牽引してきたサラリーマン大家さんに対してはほとんど融資が出ない状況で、自己資金を2割~3割要求されるケースがほとんどです。
そのため、プレーヤーが一気に減り、サラリーマン大家向けに新築アパートを建築していた不動産業者の倒産や撤退が増えています。
コロナ後に不動産価格は下がるのか
現状では、首都圏などの都心部では不動産価格は大きく下げてはいません。
この状況が続けば、今後も不動産価格が大きく下がるということはないと思われます。
しかし、企業の倒産などが増えて経済が悪化していけば、当然のことながら不動産価格も下がります。
特にマンション価格は日経平均と連動していることもあり、このまま日経平均が株価を維持できれば大きく下げることはありませんが、株価が下がるようだと徐々に下げていくことでしょう。
その時期がいつなのかは予測が難しいところですが、売却を予定している、検討しようと考えている方は、価格が維持されている今のうちに決断するのがよいと言えます。(執筆者:山口 智也)