1日や数日といった短期間だけ派遣先の企業で働く日雇い派遣は、学生や主婦のちょっとした空き時間や会社員の副業として働きたい方にとっては、都合のいい働き方かもしれません。
しかし、2012年(平成24年)10月の労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)の改正によって、日雇い派遣は原則禁止となりました。
ただし、例外として条件をクリアすれば働けます。
どのような条件を満たせば日雇い派遣ができるのか解説します。
目次
なぜ禁止になったのか

日雇い派遣が禁止になる前は、さまざまな職種で重宝されていました。
しかし、日雇い派遣の結果、派遣会社・派遣先それぞれ「働く人が働きやすい環境を作る」という管理責任を果たしていない場合が多く、労働災害発生の原因になっていたことが挙げられています。
日雇い派遣のような短期的な仕事のみで生活をしている派遣労働者の保護と雇用の安定を図るため、原則禁止になりました。
原則禁止とされているのは「30日以内の派遣の仕事」です。
アルバイトやパートのような直接雇用による日雇就労は、30日以内の労働契約であっても問題ありません。
「日雇派遣原則禁止」の例外
例外事由には「業務」と「働く人」の2つがあり、どちらか当てはまっていれば、日雇い派遣で働けます。
例外事由の業務
「適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認める業務」は、日雇い派遣禁止の例外となっていて、日雇い派遣として働けます。
具体的には、以下のような職種です。
・ ソフトウエア開発
・ 機械設計
・ 事務用機器操作
・ 通訳、翻訳、速記
・ 秘書
・ ファイリング
・ 調査
・ 財務処理
・ 取引文書作成
・ デモンストレーション
・ 添乗
・ 受付・案内
・ 研究開発
・ 事業の実施体制の企画、立案
・ 書籍などの制作・編集
・ 広告デザイン
・ OAインストラクション
・ セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
働ける人の例外事由

・ 雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる昼間学生。昼間に学校に行き、夜アルバイトなどで働く学生)
・ 年収500万円以上の方で副業として日雇派遣に従事する方
・ 世帯年収の額が500万円以上の主たる生計者以外の方
60歳以上の方や学生さんは正社員として雇用される機会が少なく、本人または世帯の年収500万円以上である収入に余裕のある方は、日雇い派遣によって生活に影響が出にくいと考えられます。
短期的な仕事のみで生活をしている日雇い派遣労働者の保護と雇用の安定を図るため、原則禁止になったという理由から、このような例外事由が定められていると思われます。
例外事由の注意点
雇用保険の適用を受けない学生
昼間学生は学業がメインであるため、日雇い派遣の仕事が生活の中心にはならず、例外として認められています。
ただし、以下に該当する学生は、昼間学生に含まれず、日雇い派遣で働けません。
・ 大学の夜間学部の課程の人
・ 高等学校の夜間または定時制の課程の人
・ 休学中の人
年収500万円以上の方で副業として日雇派遣に従事する方
年収が税金や保険などを引かれる前の額面が、500万円以上あることが条件です。
世帯年収の額が500万円以上の主たる生計者以外の方
「主たる生計者」とは、世帯年収のうち50%以上の収入を担っている人のことです。
たとえば、
です。
この場合、世帯年収は500万円を超えているので、妻は日雇い派遣として日雇い派遣での仕事が可能です。
日雇い派遣をする前の注意点
副業が禁止されていないか
最近では副業OKの会社も増えてきましたが、まずは、主となる勤務先の就業規則を確認しましょう。
副業を禁止しているにも関わらず副業が発覚した場合、解雇される場合もあります。
日雇い派遣の条件をクリアしているか
働き始める時に派遣会社で年齢を確認できるもの、学生証、収入を確認できるものの提示を求められる場合が多いです。
けれど、自分が例外に当てはまっているか不安という場合は、派遣会社に相談・確認を取りましょう。
コロナ禍が進む中で、少しでも収入を増やしておきたいところです。
日雇い派遣は原則禁止されていますが、例外事由に該当すれば可能です。
本業に支障がでない程度にうまく活用できればいいでしょう。
ただし、年間の収入が20万円を超えたら、確定申告をお忘れなく。(執筆者:社会保険労務士 望月 葵)