「ローンを延滞すると、ブラックリストに乗ってしまいます」
「個人信用情報に傷が付くと、もうローンを借りることができなくなります」
これらはネット記事で良く見かけるフレーズです。
ブラックリストって本当にあるの?
新しい生活様式が進みつつある現在、住宅ローンなど「ローン、借金」に対する知識を、整理することも必要だと思います。
今回はこうした素朴に、銀行員がお答えします。

目次
延滞とは
延滞とは、住宅ローンやカードローンなどの返済が遅れる(遅延する)ことです。
「遅れる」とは決められた返済日(約定返済日といいます)に入金がなく、返済ができない状態です。
延滞にもいろいろなケースが考えられます。
(1) 朝イチは残高不足だったが昼休みに入金したので、当日返済に間に合った
(2) 返済日を忘れていたら銀行から電話で「返済できていない」と言われて、あわてて入金し返済日より3日遅れで返済した。
(3) 銀行の返済は知っていたが、お金がなく、電話も無視していたら、銀行から督促の手紙が来るようになり、その後も手紙の内容はだんだんと厳しくなってきたので、なんとか入金したが、4か月遅れの返済になってしまった
(1) ~(3) のケースはすべて延滞になります。
(1) の「当日返済できた」場合も延滞です。
(1) は軽傷
返済日の当日中に入金すれば延滞利息(遅延損害金、延滞損害金などとも)は発生しません。
しかし、金融機関では返済日当日(正確には日付が変わった瞬間)に残高がないと、延滞とカウントします。
ただし当日中に入金されて返済になれば延滞とはならず(「延滞の解消」と言います)延滞利息も発生しません。
返済日の当日に入金され、延滞が解消した場合は「当日延滞」と言います。
「当日延滞」は銀行に記録として残ります。
また個人信用情報情報にも記録はされますが深刻なダメージにはなりません。
こうした意味で当日延滞は、ケガの具合なら「軽傷」と言えるでしょう。
ただし、当日延滞を何度も繰り返すと、その後のローン審査にマイナスとなる場合もありますので、やはり無傷ではないことを忘れないでください。

(2) は重傷
まず(2) の数日は、返済日の当日に入金がなく返済が遅れたので延滞となります。
「返済不能(約束の日に返済ができなかった)」と個人信用情報には記録され、融資の審査では大きなマイナス要素になってしまいます。
ケガの具合では「重傷」です。
(3) は致命傷
そして(3) の4か月遅れは、個人信用情報に「異動」と登録され「金融事故」となります。
新しい借入は不可能となります。
個人信用情報について
銀行にも個人信用情報にもブラックリストはありません。
ただし延滞や異動の記録は一定期間残り、その期間は新規融資が不可能になります。
そういった意味で異動のことをブラックリストに載ると表現しています。
異動はなぜ致命傷なのか
異動になれば新規融資は不可能になることに変わりはありません。
代位弁済(返済不能になり保証会社などが全額立替払いした)
破産手続き開始(いわゆる破産宣告)など
が該当します。
異動になる理由はどれを見ても、「借金が返済できない、返済できなかった」証拠であり、当然次の融資はできないことが理解いただけるでしょうし、だからこそ致命傷と言えるのです。
なお例示したのは個人信用情報では代表的な「CIC(Credit Information Center・(株)シー・アイ・シー)」の基準です。
参照:CIC
延滞と個人信用情報はどのように影響するか

延滞や、その先にある個人信用情報の異動は、たとえば住宅ローンでは次にように影響してきます。
まず金利引き下げですが、これは交渉で非常に不利となります。
たとえば「金利を下げて欲しい」と要望されても、私の勤務する銀行では、延滞がなく、正常に返済している人でなければ、金利引き下げには応じていません。
これは、突き詰めれば「延滞している人は、他の銀行で借換のローンを組めないだろうから、金利を引き下げする必要がない」という論法です。
延滞や異動など個人信用情報でマイナスの記録があれば、借換えは無理ですし、そもそも新しくローンを組むことも困難だと考えられます。
そして返済が困難になった場合の「リスケ(ローン返済額を一時的に減らすこと)」でも、延滞している人、異動になった人は対応がスムーズにいきません。
なぜなら「今まで頑張って、延滞せず返済してきた人」と「延滞や異動がある人」に同じ対応をしていたら、それこそ頑張ってきた人には不公平になるからです。
頑張った人が不公平になってはいけないという観点
いろいろな事情がありますので、延滞した人が不真面目と言っているわけではありません。
対応に差はあったとしても、相談すればその人に応じた支援をしてもらえるでしょう。
しかし、上記したように「頑張った人が不公平になってはいけない」という観点からギャンブルや散在など不真面目な理由で返済ができなくなった場合は、支援の手を差しのべてもらえないこともあります。
この点はぜひ覚えておいてください。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)