個人事業主などの小規模の事業を営んでいる方から、働けなくなった場合や本業の収入が減少した場合に備えて資産運用の相談を受けます。
安定した副収入を得るには、不動産投資や債券投資などの定期的な収入があるものが適しているのですが、小規模事業はやや安定性を欠く場合もあり、現金化に時間のかかる恐れのある資産運用方法では、万が一の際の対応に不安が残ります。
今回は個人事業主の方が資産運用を行う際の注意点について解説します。

目次
相談者の悩み
公務員や会社員と異なり、個人事業主の場合は休職時の補償や年金による収入が不足しがちになります。
若い頃は実感が湧き難いですが、加齢とともに病気のリスクや年金の受給時期が迫ってくるとリスクを感じやすくなることが多いようです。
今回は個人事業主の方から休職時やリタイア後、または不況時の本業の落ち込みに備えて、資産運用により収入を複線化したいとの相談を受け、所見を述べました。
収入の確保のための対策が必要
資産運用を用いてリタイアや万が一の事態に備える場合、収益が定期的に入ってくることが重要となるため、債券や不動産投資などが適しています。
しかし、近年は低金利が定着してしまい、支えとなるほどの金利収入を得ることが難しくなってしまいました。
不動産投資に関しても、物件をまるごと購入してしまうパターンでは資金的にもハードルが高くなってしまうため、少額から始めることができる不動産小口化商品が手掛けやすいのではないかと考えます。
しかし、小規模事業者がリスクに備える手段は資産運用以外にも存在します。
老齢給付を増額する付加年金や小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の役員・会社経営者だけが利用できる年金・退職金制度ですが、小規模事業者のリスクに併せたサポートが行えるよう制度設計が成されています。
共済金は廃業時だけでなく死亡時にも支払われるため、生命保険としての効果を期待できます。
また、予定利率も1.0%と比較的高く設定され貯蓄性に優れている他、掛金は全額所得控除されるため、節税効果も併せて得ることも可能です。
この他にも、緊急に資金が必要になった場合に備えての契約者貸付も備えており、事業リスクに備えつつ、将来の資金も確保できる応用の利く公的制度のため、リスクを伴う資産運用よりも優先的に利用すべき制度と言えるでしょう。
小規模事業主は資産運用<公的制度の利用を
個人事業主や小規模事業者が休業への対策やリタイア後の資金計画について備える場合、資産運用を検討する前に公的制度による準備を行うのが大切です。
特に小規模事業者が抱えることの多い問題への解決策として、制度が設計されている小規模企業共済をまず検討してみることをお奨めします。(執筆者:菊原 浩司)