健康保険・介護保険制度における費用負担軽減(高額療養費制度など)は、8月~翌7月を単位としているため、例年8月に改正が行われます。
2020年(令和2年)はさほど改正点は無いのですが、保険財政上の問題から負担増となることが多いので、コロナ禍においては知っておかないと思わぬ盲点になります。
目次
後期高齢者医療保険料均等割の軽減割合縮小
これは保険料の話なので、2020年度の後期高齢者医療保険であれば7月には確定しているのですが、低所得者に対する均等割の軽減割合が縮小されます。
世帯内で世帯主+後期高齢者の所得合計が33万円以下の場合は、本則では7割軽減となっております。
ただ特例で、被保険者全員の所得合計が80万円以下の場合は8.5割、それ以外は8割軽減が2019年度まで認められていました。これが2020年度は7.75割/7割に縮小、2021年度以降はいずれも7割の本則に戻されます。
年金受給者はコロナで収入が丸々無くなることはないでしょうが、低所得者向けの保険料軽減を縮小するので、気をつけたいところです。
高額介護サービス費の上限額増
介護サービス費の月または年度(8月~翌7月)の上限を定め、上限を超えた支払分は給付されるのが高額介護サービス費制度ですが、所得に応じて4区分の上限が定められています。

住民税課税世帯のうち
・全員課税所得145万円未満
または
・全員介護サービス費の負担割合1割で、課税所得145万円以上の被保険者がおり、かつ世帯内被保険者の収入合計が520万円(単身383万円)未満の世帯
に該当する場合の特例として、2019年8月~2020年7月の1年間は上限44万6,400円(3万7,200円 × 12か月分)とされていましたが、2020年8月以降はこの上限が撤廃され、月4万4,400円を超えた分の給付はなくなります。
2017年7月までは月3万7,200円だったのを、翌8月からは4万4,400円に引き上げていたのですが、激変緩和措置として年度あたりの上限44万6,400円を据え置いていました。
なお住民税課税世帯の上限額に関しては、課税所得に応じた引上げが検討されており、早ければ2021年8月から変更される動きがあることにも注意しましょう。

表2の限度額改正案に関してはまだ正式決定されていませんが、この動きについては上記関連記事にて解説しております。
所得合計に関する注意点

後期高齢者医療保険料の均等割軽減判定・高額介護サービス費の区分判定において、所得合計を参照しますが、両者では微妙な違いがあり、さらに確定申告や住民税の所得とは異なるアレンジがされています。
所得を合計する際に、公的年金等は収入ベースで加算します。その他の所得に関する注意点ですが、上場株式などの繰越損失があった場合には均等割軽減判定では控除後、高額介護サービス費の区分判定においては控除しないで合計します。
マイナンバー制度の効果的活用を望みたい
所得に応じて医療保険料や医療費・介護費用の軽減が行われる場合、マイナンバーに記録された住民税の所得情報が活用されます。
マイナンバー関係の法律で税・社会保障(医療保険・介護保険含む)に利用すると規定しており、介護・医療分野で税情報を参照するのは、迅速にできるようになりました。
しかし新型コロナ関係の給付金でマイナンバー制度がうまく活用できず、迅速な給付につながらなかったことも問題視されています。
マイナンバー法で、非常時の給付事務を行う際にも税情報が参照できることを盛り込むのが望ましいでしょう。(執筆者:石谷 彰彦)