毎月、給与から控除される健康保険と厚生年金の保険料(まとめて「社会保険料」とします)は、社会保険に加入してからずっと金額が同じとは限りません。
ごくごく簡単に言えば、社会保険料は、3か月分の給与の平均額から決まります。
そして、毎月の給与額は変動するものです。
基本給に変わりはなくても、残業代や皆勤手当などによって、給与額が変わることもあるでしょう。
実際に支給された給与額と社会保険料の月額が合っているかどうか、定期的に見直しをしなくてはなりません。
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目次
算定基礎届および定時決定とは何か?
社会保険料が適切かどうか1年に1回、7月に見直しを行い、あらためて届出をします。
その際に提出するのが「算定基礎届」です。
そして、算定基礎届に基づいて、厚生労働大臣があらたに社会保険料を決めることを「定時決定」と言います。
定時決定で社会保険料の計算のもととなるのが、4月~6月に支給された給与の平均額です。
原則として、7月1日時点で社会保険に加入している人たち全員について、定時決定を行います。
定時決定された社会保険料は、基本的に9月から翌年8月まで適用されます。
以下に該当する人たちは、定時決定の対象外
・ 6月1日以降に社会保険に加入した人
・ 6月30日以前に退職した人
・ 7月改定の月額変更届を提出する人
・ 8月または9月に随時改定が予定されている人
社会保険には、定時決定とは別に「随時改定」というものもあります。
これは、基本給などの固定的賃金の変動に伴って、給与額が大幅に変わったときに行われる社会保険料の変更です。
コロナで休業した日がある場合、定時決定はどうなる?
前項で、社会保険料の計算のもとになるのは、4月~6月の給与額だとお伝えしました。
ですが、給与の支払いの対象となる日数(支払基礎日数)が17日未満の月は、計算には含めません。
支払基礎日数とは、正社員のような月給制や週給制であれば、暦日を指します。
ただし、欠勤してそのぶん給与が減った(給与の支払いの対象にならなかった)ならば、暦日から欠勤した日数を差し引きます。
コロナウィルスの影響で休業しても休業手当が支給されず、給与が減ったなら、その日は支払基礎日数には含まれません。
休業して給与が減ったとしても、支払基礎日数が17日以上あれば、その月の給与は定時決定で計算に用いられることになります。
【4月、5月、6月ともに支払基礎日数が17日以上】
(4月給与+5月給与+6月給与)÷3の金額で、定時決定
【4月は支払基礎日数が17日未満、5月、6月は支払基礎日数が17日以上】
(5月給与+6月給与)÷2の金額で、定時決定
【4月は支払基礎日数が17日以上、5月、6月は支払基礎日数が17日未満】
4月給与の金額で、定時決定
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パートなどの短時間就労者の定時決定
パート、アルバイトのような短時間就労者の定時決定は、正社員のようなフルタイム勤務者とは、取り扱いがやや異なります。
まず、支払基礎日数についてですが、パートなどの短時間就労者は時給制、あるいは日給制が主でしょう。
この場合、支払基礎日数とは出勤日数を指します。
ただし、有給休暇を取得したならば、その日は給与の支払いの対象日となり、支払基礎日数に含まれます。
短時間就労者は、支払基礎日数が15日以上17日未満の月も、定時決定で社会保険料の計算の対象になります。
【4月、5月、6月ともに支払基礎日数が17日以上】
(4月給与+5月給与+6月給与)÷3の金額で、定時決定
【4月、5月、6月ともに支払基礎日数が15日以上17日未満】
(4月給与+5月給与+6月給与)÷3の金額で、定時決定
【4月は支払基礎日数が15日未満、5月、6月は支払基礎日数が15日以上17日未満】
(5月給与+6月給与)÷2の金額で、定時決定
【4月、5月、6月ともに支払基礎日数が15日未満】
以前の社会保険料のまま、定時決定
定時決定の基本は知っておくと便利
社会保険料は、翌月の給与から控除される企業が多いようです。
定時決定による9月からの社会保険料の変更も、10月給与から反映される人が多いでしょう。
コロナによる休業の影響で、今年の定時決定では、社会保険料が下がる人が増えるかもしれません。
もちろん、定時決定を行っても、社会保険料が変わらないというケースもあります。
社会保険に加入している以上、算定基礎届は毎年あります。
今後のためにも、算定基礎届の基本を知っておくことは役に立つでしょう。(執筆者:社会保険労務士 嵯峨 朝子)