人間、いつ病気になったりケガをしたりするか、わかりません。
そして、その傷病によって、いつ障害を負うことになるかもわかりません。
障害があるゆえに、生活や仕事をするうえで制限が加わり、収入が減ってしまうおそれもあります。
一方で、障害者であるがゆえに受け取れるお金や、免除されるお金もあります。
万一の事態に備えて、知っておいても損はないでしょう。
目次
障害者が受け取れるお金とは
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障害給付・障害補償給付
労災によって障害を負った場合に、支給されるお金です。
労災には業務災害と通勤災害があり、どちらに該当するかによって名称が異なります。
障害等級は第1級から第14級まであり、第1級から第7級までは年金が、第8級から第14級までは一時金が支給されます。
障害等級に応じて、給付基礎日額あるいは算定基礎日額の何日分が給付されるかが、定められています。
障害基礎年金
初診日に国民年金保険に加入していることなど、支給要件が定められています。
障害基礎年金が支給されるのは、障害等級が1級か2級に該当する人だけです。
令和2年度の障害基礎年金は、以下のとおりです。
・ 2級:78万1,700円
一定の要件を満たす子供がいる場合は、さらに「子の加算」が上乗せされます。
令和2年度の子の加算額は、以下のとおりです。
・第3子以降:各7万5,000円
障害厚生年金
初診日に厚生年金保険に加入していることなど、支給要件が定められています。
障害厚生年金が支給されるのは、障害等級が1級から3級に該当する人です。
障害厚生年金では、報酬比例の年金額をもとに年金額が算出されます。
・ 2級:障害基礎年金(2級)+ 報酬比例の年金額
・ 3級:報酬比例の年金額
報酬比例の年金額のみの3級については、最低保障額が定められています。
令和2年度の最低保障額は、58万6,300円です。
また、1級、2級については、一定の要件を満たす配偶者がいる場合、さらに「配偶者の加給年金」が上乗せされます。
令和2年度の配偶者の加給年金額は、22万4,900円です。
障害手当金
初診日に厚生年金保険に加入していることなど、支給要件が定められています。
障害等級3級よりも、やや程度の軽い障害が残ったときに支給される一時金です。
報酬比例額の年金額 × 2に該当する金額が支給されます。
最低保証額として、117万2,600円が定められています。
障害者が免除・減額されるお金とは
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障害者が免除あるいは減額されるお金として、主に、次のようなものがあげられます。
国民年金保険料
障害基礎年金および障害厚生年金2級以上に該当する人は、国民年金保険料の全額免除が受けられます。
免除された期間は、未納期間にはならず、老齢基礎年金の年金額の計算にも反映されます。
また、要件さえ満たせば、さかのぼって免除を受けることも可能です。
さかのぼった期間の国民年金保険料も返金してもらえます。
NHKの受信料
障害者手帳の種類や等級に応じて、全額免除あるいは半額免除が受けられます。
ただし、障害者手帳を持っているだけでは、免除はされません。
世帯構成員全員が市町村民税非課税であること、世帯主が受信契約者であることなど、他にも条件が定められています。
国民健康保険料
これは、すべての市区町村にあてはまるわけではありません。
国民健康保険は、市区町村が運営しています。
そのため、障害者手帳を持っていることで国民健康保険料が減免されるかどうかも、市区町村ごとに扱いが異なります。
役所に問い合わせるなどして、確認をしてください。
所得税、住民税
税金は免除にはなりませんが、障害者控除を受けることで、減額できる可能性があります。
年末調整または確定申告において、障害者控除を申請すれば、障害の等級に応じて税金の控除額が増えます。
これは、申告をする本人が障害者の場合に限りません。
一定の要件を満たす配偶者や扶養親族に障害者がいる場合も、障害者控除を受けられます。
入館料や運賃など
・ 美術館などの施設の入館料
・ 公共交通機関の運賃
なども、障害者手帳の種類や等級に応じて、全額免除や減額が受けられることがあります。
障害者本人だけでなく、同行する介護者についても、免除が受けられる場合があります。
障害に関する制度の情報は積極的に集めよう
上記で紹介した制度は、あくまでも一例にすぎません。
他にも、障害者が受け取れるお金や、免除されるお金はあります。
インターネットなども活用して、積極的に情報収集するのがおすすめです。
ちなみに、障害者手帳が発行されたからといって、それによって障害年金が支給されたり、国民年金保険料が免除されたりするわけではありません。
それぞれについて別々の手続きが必要ですので、その点ご留意ください。(執筆者:社会保険労務士 嵯峨 朝子)