最近は生活スタイルが多様化するとともに、晩婚化も進んでいるため、住宅ローンにおいても年齢層が高めの申し込みが増えています。
年齢層が高めの人は、年収なども高めの人が多いため、住宅ローンの申し込みにおいては有利と考えがちですが、実際に申し込んでみるとさまざまな壁にぶつかります。
今回は、40代での借入れを前提に、住宅ローンで注意したいポイントを3つに絞ってご紹介します。
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目次
注意1:「団体信用生命保険」に加入できるか
これは、年齢層が高めの方が最も注意しなければならない問題です。
住宅ローンでは、申込人である債務者が、死亡や高度障害になった時に、保険金から残債が支払われる「団体信用生命保険」に加入することが、フラット35を除いて必須となっています。
そして、この「団体信用生命保険」に加入するには、持病や過去の病歴があれば「告知事項」として記載することになっています。
実際の所、30代までの申込人は「告知事項」が少ないですが、これが40代以上になると増え、「団体信用生命保険」に加入できないので、住宅ローンが拒絶になるという事例も増加しています。
確かに、「団体信用生命保険」に加入できない人は、加入不要のフラット35を利用すれば良いという声も聞こえてきそうですが、万が一の保障をどうするかという問題は残ったままです。
これに付随する形になりますが、各行が提供している、「疾病保障付き団体信用生命保険」においても、年齢層が高めの場合不利になります。
例えば、三井住友銀行が住宅ローンとともに提供している「8大疾病」においても、以下のように年齢で保証範囲が変更されています。
がんと診断されたら、住宅ローン残高はすぐに0になる
【46歳~56歳未満の方】
がんと診断されて、就業不能が12か月を超えて継続したら住宅ローン残高は0になる
【56歳以上の方】
加入できません
これは、契約先の保険会社の規定によりますが、ほとんどの銀行がこのような形態になっています。
従って、「団体信用生命保険」加入はクリアしても、8大疾病保障などは、自分自身で対応する必要があります。
注意2:オーバーローンになりやすい
年齢層が高めの方は、年収もそれなりの水準にある方が多いでしょう。
そうなると、現在の低金利や銀行の融資姿勢で判断すると、簡単に高額な融資を受けられます。
ただし、ほとんどの方は融資を受けた時が年収のピークで、その後、出向・転籍などにより、年収が大幅にダウンする可能性があります。
それはわかっていても、今の年収が減ってみないと、実際に住宅ローンで苦労する姿が見えてこないのも事実です。
少なくとも、現在が年収のどの段階にあるのか、自分なりに把握した上で、無理のない融資額で妥結しましょう。
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注意3:住宅ローンが老後資金が消える恐れ
これは先ほどの話と被る部分も多いですが、住宅ローン残高があっても、退職金で返済すれば問題ないと考える人がいます。
確かに、公的年金が充実していた時は、実際にそのような運用をしても、老後は何とか暮らせました。
しかし現在は、他に資産がなければ、退職金は老後の貴重な資金で、これを住宅ローンで崩してしまっては、老後に生活できません。
特にこのような状況に陥ってしまうのが、年齢層が高くなってから結婚し、子供ができた場合です。
仮に、40歳で子供ができた場合、子供が成人する20歳の時に、親は60歳になっています。
おそらく、それまでは子供の教育費などでほとんど貯蓄ができず、退職金を住宅ローンの返済に使ってしまいます。
これは難しい問題ですが、家族を作る予定がある場合は、住宅への投資は最小限にとどめるなど、自衛策が必要なように感じます。
今後、上記のような問題がますます増えていくのではないかと危惧しています。
年齢層が高めの方は、自分の年齢と年収を慎重に考えながら、住宅ローンと向き合っていただきたいです。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)