資産運用を考える際に分散投資が大切だ、という話を良く聞きます。
しかし、分散投資とは言っても、何をどう分ければ分散投資になるのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。
「金利の低い債券に分散をしていても本当に意味があるの?」
「分散投資のためにラップ口座やロボアド運用に委託したら手数料が高いのでは?」
このような疑問をお持ちの方も多いと思います。
これらの悩みはあくまでの証券投資に限定したものです。
富裕層の多くは、証券意外にも資産を保有しており、管理しています。
証券市場は混乱しているのに、不動産市場は落ち着いている、ということは起きえます。
このように証券以外の複数種類の投資対象を保有することで、初めて分散投資の効果は生まれます。
今回は、分散投資を行動に移すための考え方についてお話します。
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目次
株、債券はあくまで証券投資の中での分散投資
投資信託に投資を行う場合、通常は株系に60%、債券系に40%のように一定割合を決めて分散投資をすることが一般的です。
しかし、このような分散投資は、あくまでの証券投資の中だけのお話です。
誰もが最も上昇する投資対象にだけ一括投資をしたいと考えるものですが、今後、ナスダックが良いのか、NYダウが有力なのか、あるいはインドの株式市場が良いのか、ということは、なかなか当てることはできません。
そこで、分散投資が有効です。
分散投資によって複数の投資対象に投資をしていれば、一定の利益を期待できます。
また、債券運用を織り交ぜることで資産価値の変動幅を抑えられます。
このような、投資信託等に投資をする場合の分散投資の手法は、今かなり浸透してきています。
しかし、富裕層は、証券投資以外にも投資対象を分散しています。
分散投資をするならバランスシート作る
証券投資以外の分散投資を検討する上で重要な資料がバランスシートです。
バランスシートとは、左側に資産の内訳を書き、右側に資産の構成として負債と純資産を書く表のことです。
バランスシートを作ることで、さまざまな視点を得られます。
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お金を生み出す資産、お金を生み出さない資産
バランスシートを作ることで、資産全体を俯瞰して把握できます。
資産には、大きく分けると2種類があります。
「お金を生み出す資産」と「お金を生み出さない資産」です。
お金を生み出す資産とは、株、債券、賃貸用不動産などの配当や金利収入を生み出す資産のことです。
一方、お金を生み出さない資産とは、マイホーム、自動車などの保有しているだけで費用がかかる資産です。
これらの資産が不要というわけではありません。
生きていく上では必要な資産です。
大切なことは、お金を生み出さない資産ばかりを持っていてもなかなか豊かな生活が送れないということです。
豪華な家には住めたけど、働けども働けども生活が楽にならないという現象が起きる可能性があるということです。
ここで投資信託、保険、金、暗号通貨等は、お金を生み出す資産なのか、という疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
まず、投資信託はお金を生み出さない資産です。
分配金が一見お金を生み出しているように見えますが、それは元本の払戻金です。
資産の一部を売却しているのと同じ行為です。
個人年金保険に関しても考え方は同じです。
自分で積み立てた資金を老後に取り崩すという仕組みです。
金や暗号通貨も金利が発生しませんのでお金を生み出す資産とは言えません。
現役時代の資産形成期には、お金を生み出さない資産も含めて資産を作り、徐々にお金を生み出す資産の割合を増やしていくことで、安定的な収入が得られる資産構成になっていきます。
このようなことを考えながら、資産形成を行わないと、「コツコツお金を貯めたけど全て円預金」というようなアンバランスな資産構成になってしまいます。
お金を生み出さない資産は、取り崩さないと使えません。
せっかく資産があるのに、使ったら減ってしまうという恐怖心からお金を使えないという人は数多くいます。
豊かな人生を送るためにはお金を生み出す資産を持つ、という目標を持つことがお勧めです。
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資産の偏りが見える
また、バランスシートを作ると、
「かなり分散投資をしたつもりだが、投資信託しか持っていない。」
といった偏りが見えてきます。
そして、多くの日本人のバランスシートに含まれていないのが、賃貸用不動産です。
賃貸用不動産は、ローンを借主の家賃で返済しながら資産を形成できる、という魅力があるものの、お金を借りて資産も持つことに抵抗があり、多くの方がはじめられていません。
しかし、賃貸用不動産はお金を生み出す資産であることは事実です。
賃貸用不動産の主なリスクは、空室リスクと賃料の下落です。
しかしこのようなリスクに関しては、調査をしっかり行った上で物件を購入すれば、リスクを低減できます。
賃貸用不動産を持つと、バランスシートの資産の部に物件の購入金額、負債の部にローンの金額を書き込むことになります。
10年後20年後には確実に負債の数字は減っていきます。
最終的にローンがなくなれば、賃貸用不動産の価値だけがバランスシートに残ります。
もちろんのその過程で、空室が生じたり、賃料の改定などはあるかもしれません。
それらのリスクは、ある程度過去のデータから試算ができます。
また頭金を入れて借入金額を抑えれば、多少賃料が下がってもローンの返済に問題は起きないでしょう。
もちろんここまで考えた上で、取れないリスクは取ってはいけません。
しかし、本来十分に対処可能なリスクに対し、避けているだけでは資産形成の機会を取り逃してしまうということです。
目標が見つかる
バランスシートを見つめていると目標が見えてきます。
「海外に移住したいのに、ドル資産が全くないからドル建ての投資信託を持っておこう。」
といった具体です。
企業がバランスシートを作るのは、現状を把握するためです。
個人がバランスシートを作るのは、理想の資産構成を考えるためです。
理想や目標が見えたら、あとはコツコツと時間をかけて行動していくだけです。
ゴールを見据えないまま、闇雲に預貯金を積み上げても、効率が悪いばかりか続かない可能性があります。
「預金に置いていても増えないから、使ってしまおう。」と言った間違った判断をしないためにも、未来のバランスシートを見据えて資産形成に取り組みましょう。
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バランスシートを推奨してくれない理由
聞いてしまえば簡単なバランスシートですが、セールスマンの立場で言うとバランスシートは都合が悪いツールです。
例えば、保険の営業マンはなるべく高額の保険料を成約したいという気持ちがあります。
住宅販売会社の方々が高額物件を売りたいのは言うまでもありません。
投資信託の販売ノルマに追われている証券マンや銀行マンは、顧客が投資信託以外の商品に興味を持ってしまったら困ります。
このような事情から、待っていてもバランスシートの作り方は、教えてもらえない場合が多いのです。
ご自身で自ら作ってみるという意識が大切です。
適度なリスクは資産形成の効率を上げる
バランスシートを作るとやってはいけないことも見えてきます。
例えば、負債の部にカードローンがあるにも関わらず、資産の部に何もなければ、非常に危険な家計状況と言わざるを得ません。
逆に資産の裏付けがある負債であれば、過度に恐怖心を持つ必要もないということです。
日本の義務教育では投資教育が行われていません。
ゆえに、ささいなリスクに対する恐怖心が資産形成への第一歩を妨げているという現象を良く目にします。
負えないリスクは厳禁です。
しかし、適度なリスクは資産形成の効率を飛躍的に上げます。
時間のあるときに、未来のバランスシートを作ってみましょう。(執筆者:1級FP技能士 遠藤 功二)