2011年の東日本大震災での東京電力管内の原発事故を受け、大手電力各社の原発が止まり約10年が経ちました。
震災直後こそ電力不足が問題となり、国民1人1人が節電の意識をもった事は記憶に新しいでしょう。
しかし最近は、人間の体温以上が続く猛暑の時期が続き、節電が叫ばれる事はなくなってしまいました。
震災後2~3年は経常赤字だった大手電力会社も、ここ数年は業績の回復もあり安定的な利益の中で配当も行うようになりました。
今回はかつて安定配当銘柄として人気だった電力株の投資についてです。
目次
電力各社の売上と利益の概略

現在の電力各社の売上は東日本大震災後の2011年と比較し、これまでに各社ともにアップダウンはありましたが、軒並み微増となっています。
2011年からの約10年間では、他業種に比べ目を見張る程の増収とはなっていません。
しかし、電力銘柄はストックビジネスの代表格でもあるため、もともと毎年の増収率も良くありません。
東日本大震災で1番影響を受けた業種でもある事を考慮すると、売上の緩やかな増加でも評価はできるでしょう。
利益について
各社ともに東日本大震災後の翌期2012年から2~4年程赤字が続いていました。
これは、原発の停止による影響が色濃く出ています。
この10年間で一部の地域の原子力発電所が再稼働となりましたが、今もほとんどの会社では原子力以外で事業を成り立たせています。
そのため、原発に依存しすぎず利益を残せる体制になったといえるでしょう。
今期は、各社ともに新型コロナウイルスの外出自粛による売上と利益への影響は避けられません。
しかし、電力各社の第一四半期の数字は前年比に比べ、極端な減収とはなっておらずコロナ禍でも十分戦える銘柄といえそうです。
電力各社の配当状況の概略
かつては安定的な配当銘柄として人気だった電力株も、東日本大震災後は各社赤字が続き、一部の電力会社を除き無配当となりました。
しかし、ここ数年は電力各社は原発に依存せず、利益も残せている状況で東京電力以外は配当も増加傾向にあります。
※東京電力に関しては原子力発電所の廃炉費用、補償費用などもあり今後の配当も厳しい見方が大勢のようです。
各社ともに東日本大震災以前の配当水準には遠いものの、年間の配当金も増加傾向であるという事実は評価できると思います。

電力各社の株価概略
東日本大震災後急落した電力各社の株価ですが、その後は原発の再稼働の可否によって株価のアップダウンが続く状況となりました。
最近は原発の再稼働のニュースもあまり聞かなくなりましたが、足元では審査中の原発が多数ある中で新基準に適合した原発もでてきています。
2020年4月のデータでは、日本国内にある60基の原発のうち、
・ 新基準に適合したものが6基
・ 審査中のものが12基
・ 未申請のものが9基
・ 今後廃炉となるものが24基
となっています。
現在の株価は、これらの状況を踏まえても、テクニカル面での株価の下値は限定的だと考えられています。
電力各社の今後の利益に注目
今後の電力各社の利益によっては、段階的な増配も十分考えられます。
そのため、配当金を受け取りつつ長期投資として考えると、電力株への投資はタイミングとしては悪くないといえます。
かつての配当株として投資対象だった電力株、その人気を再び取り戻す時期がそろそろ来たという事かもしれません。(執筆者:株式投資で運用資産1億、セミリタイヤを実現 松安 たいき)