賃貸経営の基本は「いかに入居者を確保するか」です。
しかし、今後の日本では、少子高齢化により賃借人は減少することが予想されています。
また、コロナウィルスの影響で工場の撤退や授業がリモートワークになった大学生が実家に帰ってしまうという現象も起こっています。
今後も賃貸経営を続けていくのであれば、賃借人の減少による空室問題は避けて通れません。
そうなるとこれまで敬遠してきた高齢者や外国人を受け入れも検討しないといけません。
今回は、実際に高齢者や外国人を受け入れる場合には、どういった点に注意すれば良いかについてお話しいたします。

目次
高齢者や外国人を受け入れるリスク
同じ家賃で賃借人に貸すのであれば、仕事がきちんとあって収入があり、年齢も若い方が良いのは間違いありません。
しかし、これからの日本ではそういった条件の良い賃借人は減ります。
それを補うためには、これまで敬遠していた高齢者や外国人の受け入れも検討する必要があります。
これまで高齢者や外国人が敬遠されてきた要因は、やはりトラブルの多さです。
高齢者のトラブル例
高齢者のトラブルで多いのは、身寄りのない高齢者の孤独死やケガです。
室内で孤独死してしまうと体液や臭いなどでフルリノベーションしないといけず、自然死のため事故物件ではないとしても告知はする必要があります。
そうなると家賃を下げないと入居が決まらないなど、賃貸経営に大きな影響を与えます。
例えば、孤独死をして1か月ほど放置され、体液のシミやにおいが残ってフルリノベーションしないといけなくなったとします。
その場合は、いったんスケルトン状態(設備等もすべて取り外した状態)にしなければなりません。
そうなると水回りも変えないといけませんし、消臭なども行わないといけないので20平方メートル程度のワンルームでも150万~200万程度掛かります。
家賃もよくて5割~7割程度となります。
収益物件の場合は、家賃が下がるとその分物件の売却価格も下がるので、資産価値も3割~5割減ってしまうことになります。
また、古い物件だと段差が多く、つまずいてケガをしてしまうとそのまま動けなって重傷を負ってしまうケースもあります。
近隣に身寄りがあれば発見も早いですが、遠方や近隣に身寄りがいないと発見が遅れて大きな事故に発展することもあります。
そのため、高齢者を受け入れる場合はバリアフリーのリフォームなども検討する必要があります。

外国人のトラブル例
外国人がトラブルを起こす要因は、言葉の壁と生活習慣といった文化の違いです。
・ 文字が読めないので間違った対応を繰り返す
・ 注意してもなかなか理解してもらえない
といったケースがあります。
他にも騒音やゴミの捨て方などでもトラブルになります。
国によって生活習慣の違いがあるので、
・ 分別してゴミを捨てない
・ 曜日も関係なしにゴミを捨てる
といったトラブルが起こりやすいです。
特に、騒音トラブルは長引くと他の入居者の退去につながりますので賃貸経営に大きな打撃となります。
入居者が減るだけでなく、売却の際には騒音トラブルについて告知する必要があります。
ですから、買う側もリスクのある物件は敬遠しますので、売却価格する際も価格を下げないと売れなくなります。
こういったリスクを回避するため、これまでは高齢者や外国人の入居者は敬遠されてきました。
高齢者を受け入れる際のポイント

ここでは、高齢者を受けいれる場合のポイントについてお話いたします。
高齢者を受け入れるリスクとして1番問題になるのは「孤独死」です。
そのため、近隣に身寄りがあるかどうかが重要になります。
しかし、ご家族が遠方のケースも多く、亡くなった場合の遺品整理なども考えると近隣に身寄りがいない場合はなかなか受け入れが難しいと言えます。
そういった場合は、残存物の処分や遺品整理などが含まれる高齢者向けの少額短期保険の加入してもらうと良いと思います。
次に、ケガの予防対策として、バリアフリーのリフォームを検討する必要があります。
バリアフリーのリフォームには、段差を減らしたり、浴槽を高さの低いものにしたり、手すりをつけるなどがあります。
リフォーム費用については、バリアフリー化を実施する場合は、自治体ごとに補助制度があるので必ずご確認ください。
現在では、バリアフリー物件ということで区別されており、バリアフリーのリフォームをすることで他の物件と差別化できます。
空室でお悩みの大家さんは、高齢者を受け入れられるようにバリアフリー化のリフォームを実施するのもひとつの方法だと思います。
外国人を受け入れる際のポイント
次に、外国人を受け入れ際のポイントについてお話いたします。
外国人の受け入れで問題になるのが「言葉の壁」です。
日本語で最低限の日常会話ができるレベルは欲しいですが、代理人が部屋探しをしに来るケースだと、日本語を理解できると聞いていたのに実際にはほとんど話せないといったことも多いです。
日本語が話せない、理解できないと入居後もトラブルになることが多いので、できれば日本人の保証人や緊急連絡先となってくれる人は最低限取り付けるべきです。
そうしておけば、何かあった場合にその人を通じて話せます。
次に、家賃の支払いについてです。
よくあるのが、家賃の滞納が続いたなと思ったら本国に帰ってしまって取立もできないといったケースです。
この場合はもう泣き寝入りするしかありません。
家賃保証会社をつける
そのため、現在ではほとんどの外国人との賃貸契約において、家賃保証会社をつけることになっています。
家賃保証会社をつけておけば、家賃を滞納されたとしても代理弁済してもらます。
最近ではGTN(グローバルトラストネットワークス)のような外国人専門の保証会社もあり、入居後のアフターフォローもしてくれるので非常に安心です。
その他では、外国人のトラブルで多いのが、知らない間に入居者が増えていたというケースです。
ワンルームに4人で住んでいたことがありましたが、そのときは騒音トラブルが原因で複数入居していたことがわかりました。
不法滞在者や犯罪に使われるケースもありますので、早目の対処が必要になります。
トラブルを予測しきちんと対策をすればリスクは減らせる
少子高齢化が進み、2055年には日本の人口は1億人を割ると言われております。
これは避けられず、賃貸経営には大きなハンデキャップとなります。
そこで勝ち残っていくためには、これまで避けてきた高齢者や外国人の受け入れが必要になります。
高齢者や外国人の受け入れには、トラブルが多いといったリスクはあります。
しかし、きちんとトラブルを予測し、未然に対策を行っておけば、リスクを減らせるのが賃貸経営です。
空室でお悩みの大家さんは、1度高齢者や外国人の受け入れも検討してみてください。(執筆者:山口 智也)