日本の大学・短大進学率は約58%、専門学校などを含めると高等教育機関への進学率は約83%に達します。
そうなると、気になるのは「教育資金」ではないでしょうか。
「学資保険」は、教育資金形成に特化した保険商品です。昨今では、学資保険代わりに外貨建て保険に加入する人も多くなりました。
今回は、「学資保険」と「外貨建て保険」どちらが教育資金準備に向いているか、メリットとデメリットも踏まえて詳しく解説します。
参照:文部科学省「令和元年度学校基本調査(確定値)の公表について(pdf)」
目次
教育費用準備が必要な理由
子どもが生まれて独立するまでには2,000万円前後の費用がかかると言われています。
実際の金額はそれぞれの家庭によって多少異なりますが、共通していることは「大半を教育費用が占めている」ということです。
とにかく高い教育費
文部科学省の調査によると、「1年間にかかる子どもひとりあたりの教育費用」はおおよそ次の通りです。
幼稚園~高校
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公立:22万3,647円
私立:52万7,916円
【小学校】
公立:32万1,281円
私立:59万8,691円
【中学校】
公立:48万8,397円
私立:140万6,433円
【高校(全日制)】
公立:45万7,380円
私立:96万9,911円
※学校費用(授業料・給食費・行事費等)と塾・習い事等費用の合算平均値。日用品や食費などは除外
参照:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査の結果について(pdf)」
大学
そして、大学進学時の「初年度費用(授業料+入学料)」の平均額が、次の通りです。
【公立大学】93万1,125円
【私立大学(文化系学部)】
116万6,922円
【私立大学(理科系学部)】
154万4,963円
【私立大学(医歯系学部)】
482万2,394円
参照:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移(pdf)」
参照:文部科学省「平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について(pdf)」
タイミングに合わせて確実に貯めることが大切
教育費用は「使うタイミングが決まっている」ものがほとんどです。
特に負担が大きな「大学入学時納入金」は、子どもが産まれたときから「18年後」に必要だと分かっています。
タイミングを合わせられるように、しっかりと逆算しておきましょう。
また、貯めている途中で他の目的に使ってしまわないように、隔離しておくことも重要です。
自動的に積み立てられて、時期が来るまで動かせない方法をとりましょう。
確実に貯めるために、保険は有効な手段の1つです。
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外貨建て保険で準備する場合のメリット・デメリット
外貨建て保険とは、円ではなく外貨(米ドルや豪ドル、ユーロなど)を用いる保険です。
扱う商品や外貨の種類は、保険会社によって異なります。
ここでは、学資保険代わりに使いやすい「満期保険金を受け取れる養老保険」を例に説明します。
なんといっても「増える可能性がある」という点ではないでしょうか。
メリット1. 日本円よりも金利が高い
マイナス金利の日本円よりも高金利の外貨を用いることで、運用利益を得られる可能性があります。
金利は下がる危険性もありますが、「最低保障予定利率」を設定して運用による元本割れ対策をしている保険会社もあります。
メリット2. 為替レートにより、さらに増える可能性もある
毎月の保険料を円から外貨にするとき、満期保険金を外貨から円にするとき、常に関わってくるのが為替相場(為替レート)です。
満期時の為替レートによっては、さらに資産が増える可能性もあります。
一方で、増える可能性があるのと同じくらい、減る可能性があるということを理解しておきましょう。
デメリット1. 為替相場によって、元本割れする可能性もある
為替レートによって資産が増える可能性について述べましたが、同様に資産が減る危険性もあります。
為替相場は、その時々で変動します。どのように動くかは誰にも予想できません。
仮に、運用自体は順調でも満期金を受け取ったタイミングの為替レートによっては、収益が減ったり元本割れしたりする可能性もあります。
デメリット2. 為替手数料など思わぬコストが必要となる
円から外貨、外貨から円に両替するときには「為替手数料」がかかります。
「保険料支払(毎月)× 18年 + 満期金受取時」と必要なタイミングも多く、そのコストは無視できません。
手数料の額は保険会社や金融機関によって異なります。
為替手数料を含んだ独自の為替レートを明記している保険会社もありますので、確認しておきましょう。
デメリット3. タイミングを合わせることが難しく、教育資金準備には向いていない
たとえば、満期時の為替レートが不利だったとしましょう。
老後のゆとり資金形成が目的であれば、満期金を外貨のままで受け取って相場が好転するまで待てます。
しかしながら、教育資金形成が目的の場合にはそうはいきません。
学費納入期日は決まっているので、為替相場の変動を待っている余裕はありません。
学資保険で準備する場合のメリット・デメリット
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学資保険は、教育資金形成に特化した保険です。
高校進学・大学進学・成人・大学卒業など満期タイミングを選べるものや、満期金の他に数回の祝い金が出るものなどもあります。
推薦入学者の手続きにも間に合うように、満期のタイミングを卒業年度の秋頃に設定しているものもあります。
メリット:親が亡くなっても保障を受けられる
もしも、親(契約者)が亡くなった場合でも、学資保険は残ります。保険料払込は、不要です。
保険会社が残りの保険料を立て替えて「約束のタイミングで約束通りのお金が受け取れるように」してくれます。
さらに、育英一時金や育英年金を受け取れるものもあります。
学資保険は、もしものときでも教育資金を確保する「多面的な子どもの保障」です。
デメリット:低金利を背景になかなか増えない
低金利の影響で、増えません。
また、学資保険の保険料は「貯蓄部分」と「保障部分」を含んでいます。
特約などを追加して保障を厚くするとその分「保障の保険料」が多くなり、保険料払込総額よりも満期金額が下回る可能性があります。
目的をしっかりと考えることが大切
「資金を増やしたいのか、確実に貯めたいのか」目的を明確にしておくことが大切です。
子どもや孫の教育費用は「確実に」準備して、「資金を増やしたい」場合には別枠で考えるべきです。
教育資金形成は学資保険で確実に積み立てつつ、外貨建て保険には余剰金で投資するのがおすすめです。(執筆者:仲村 希)