コロナウイルスの影響による経営悪化から解雇や雇い止めが多発し、厳しい雇用情勢が続いています。
さまざまな事情から、あるいは思うところあって、自発的な退職を考えている人もいるかもしれません。
新しい仕事が決まらないままの退職となった場合、頼りになるのが雇用保険の基本手当、いわゆる「失業手当」です。
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目次
自己都合退職の場合、失業手当の受給制限期間が長い
会社の倒産など非自発的な理由から退職した場合と、自己都合で自発的に退職した場合とでは、失業手当の受給について違いがあります。
それぞれの受給開始時期について、現在の制度をみてみましょう。
7日間の待機期間が終われば、失業手当の支給を受けられる
【自己都合による自発的な退職の場合】
7日間の待機期間に加えて、3か月間の給付制限期間が設けられる
この給付制限期間が終わってからでないと、失業手当をもらえません。
さらに、失業手当をもらえる日数(所定給付日数)についても、違いが生じる可能性があります。
所定給付日数は、雇用保険に加入していた期間、退職時の年齢、退職理由によって決まります。
ですから、雇用保険の加入期間と退職時での年齢が同じでも、退職理由が異なれば、失業手当をもらえる日数が異なります。
離職票を受け取った際は、記載されている「離職理由」を、きちんと確認するようにしてください。
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【令和2年10/1以降】自己都合退職の給付制限期間が短縮される
前項で、自己都合退職の場合、3か月間の給付制限期間があるとお伝えしました。
ですが、令和2年10月1日以降の自己都合退職については、この給付制限期間が変更されます。
ただし、この短縮が何度でも適用されるわけではありません。
5年間のうち2回まで、と定められています。
また、「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」により退職した人は、今までどおり3か月間の給付制限期間を受けます。
この点、ご留意ください。
令和2年9月30日までの自己都合退職については、給付制限期間は3か月間のままです。
退職日が1日違うだけで、失業手当の受給が始まるタイミングが1か月変わることになります。
もし今、自己都合での退職を考えているなら、退職日についてもよくよく検討することをおすすめします。
基本手当日額の計算方法
給与額が人それぞれ異なることから、失業手当の日額も人それぞれ異なります。
計算方法を簡単に説明します。
基本手当日額=賃金日額×給付率
給付率は賃金日額のおよそ50~80%(60歳~64歳は45~80%)とされています。
賃金日額=退職日の直前6か月間に支払われた賃金(賞与等を除く)÷180
令和2年8月以降、失業手当の限度額も変わった
基本手当日額は、上限額と下限額がそれぞれ定められています。
上限額に関しては、退職時の年齢によって分かれています。
令和2年8月1日、この限度額が変更されました。
上限額、下限額ともに、引き上げられています。
上限額
30歳未満:6,850円
30歳以上45歳未満:7,605円
45歳以上60歳未満:8,370円
60歳以上65歳未満:7,186円
下限額
全年齢:2,059円
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上限額、下限額が引き上げられたからといって、実際に自分がもらう失業手当が増額するとは限らないでしょう。
とはいえ、給付制限期間が短縮され、限度額が引き上げられたというのは、失業手当をもらう側にとってはありがたい変更ではないでしょうか。
自己都合退職はくれぐれも慎重に検討を
労働者の解雇や雇い止めだけでなく、企業の倒産も今後ますます増えていくおそれがあります。
転職するにしても、みずから開業するにしても、これまで以上に困難になるかもしれません。
自己都合での退職は、くれぐれも慎重に検討するようにしてください。(執筆者:社会保険労務士 嵯峨 朝子)