今回は、ウォーレンバフェット氏が日本の5大商社株に投資した理由について金価格の推移とともに解説していきたいと思います。

目次
ウォーレンバフェット氏が日本5大商社に投資
直近、米投資会社バークシャー・ハザウェー率いるウォーレンバフェット氏が日本の5大商社に投資したことが判明し市場の話題となりました。
しかし、なぜ商社株に投資したのか疑問に思った投資家は多く、現在の商社の業績を考えると高配当銘柄という理由だけでは説明することが難しいのです。
しかし、コモディティー、特に金に注目し商社株に投資したと考えるのならばそのつじつまは合うのです。
上昇を続ける金価格
金価格は、コロナショックによる世界的な不安定さの中で急上昇しています。
これは、世界的な景気後退局面を回避するために各国中央銀行が超金融緩和を行った結果であり、米消費者物価指数(CPI)が急上昇していることも金価格の上昇に拍車をかけているのです。
このCPIの急速な上昇は金価格の推移を予測する上で重要な指標であり、実質金利に大きな影響を与えるのです。
実質金利とは
実質金利とは、名目金利から物価上昇率を差し引くことで求めることができ、計算式は以下の通りです。
これが実際に市場に影響を及ぼす金利であり、これを元に為替や債券などが売買されているのです。
ここで重要なのが、金価格の推移もこの実質金利の影響を強く受けるということです。
この実質金利がマイナスにさらに転じると金価格がさらに上昇に転じる可能性があるのです。
政策金利の水準に目が行きがちですが、この推移には最も注意を払わなければならないのです。
ドル円の推移に注目
また、金価格の推移を考える上で重要となるのが為替の推移です。
一般的に金価格はドル円と逆相関関係にあり、ドル安になるほど金価格は上昇に転じる傾向にあります。
これは、ドルの信頼度が低下することにより相対的に有事の金が買われるための値動きです。
現状ドル円は円高水準が続いていることから、この水準が続くのならば金価格の水準を切り上がって来る可能性も考えられるので注目しておく必要があります。
ウォーレン・バフェット氏がGOLDに投資
前述にあるように、金価格は実質金利と為替に大きく影響されます。
現状、米国はゼロ金利政策を想定以上に長期間維持する考えを示しており、また物価上昇率が今後このペースで上昇を続けるのなら、この実質金利のマイナス幅が拡大することを意味します。
そうなると、金利が低下することで逆相関関係にある金価格は今後さらに上昇を続ける可能性があります。
そこに注目したのが、米投資会社バークシャー・ハザウェーを率いるウォーレン・バフェット氏なのです。
ここで注目していただきたいのが、ウォーレンバフェット氏の投資手法であり、従来まではバリュー株を長期間保有することでキャピタルゲインとインカムゲイン両方を狙いに行くのが主流でした。
しかし、現在のバークシャー・ハザウェーのポートフォリオを見ると、アップルの株式をポートフォリオの内44%も大量に保有しており、今までのやり方とは異なる投資手法を取っているのです。
従来投資していなかったものに投資したという変化には敏感に反応した方がいいものと思われます。
さらに、直近日本の5大商社に投資していることも公表されており、このニュースにより商社株の株価は急騰したのです。

では、なぜウォーレンバフェット氏は商社株に投資したのか
これは、配当が高いということが最大の理由ではなく、どちらかというと資源価格との連動性に着目した投資である可能性が非常に高いものと思われます。
これは、バークシャーの直近のポートフォリオの変化を見ても予測することができ、6月末時点でバリックゴールドコーポレーション(金と銅を生産する鉱山会社)に投資しているのが明らかとなっているのです。
これより、ウォーレンバフェット氏は金価格の推移に着目している可能性が高いため、今後はこの値動きに注目しておく必要があるのです。
金の投機的ネットポジションは高水準を維持
前述までは、金の上昇要因について解説してきましたが、もちろん注意すべき点もあります。
それは、金先物の投機的ネットポジションであり、機関投資家はこの買いポジションを大量に積み上げていることから将来的な売り圧力が強まる可能性があるのです。
現状過去最高水準のネットポジションであることから、それが売りに転じた時のインパクトは計り知れないので、その動向には注意しておく必要があるでしょう。
今後の資源価格の変動には注意を
以上より、米国の緩和長期間継続が発表されたことにより、今後実質金利はマイナス乖離してくる可能性が非常に高くなっています。
この変化は、ウォーレンバフェット氏も見逃すことができないほどの変化となっており、今後の資源価格の変動にはより注目しておく必要があるものと思われます。
また、為替もFRB、米中関係悪化を材料にドル安が進行していることにも注目しておいた方がいいでしょう。(執筆者:現役証券マン 白鳥 翔一)