今回は競馬の話です。
競馬と言っても馬券でお金を稼ぐ話ではなく、馬主になって競走馬が獲得した賞金を手にするという話です。
普段あまり競馬に接しない方々にも分かりやすく説明をしたいと思います。
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目次
競走馬とレースの区分け
日本のJRA(日本中央競馬会)に所属する競走馬(サラブレッド)は早ければ2歳の夏にデビューして、クラシックレースと呼ばれる3歳限定のG1(ジーワン・最高位クラス)レースを目指します。
牡馬(ぼば・オス馬)が中心となる「皐月(さつき)賞」、「日本ダービー」、「菊花賞」の3レースがそれに該当します。
牝馬(ひんば・メス馬)限定のクラシックレースとして、「桜花(おうか)賞」、「オークス」、「秋華(しゅうか)賞」があります。
秋華賞がクラシックレースに該当するのか諸説ありますが、今回は牝馬3冠という意味で含めています。
日本ダービーはニュースやテレビ中継でも取り上げられることが多いので、ご存じの方もいらっしゃるかと思います。
今年2020年のJRAクラシック戦線は牡馬・牝馬ともに同じ馬が優勝し、2冠を達成しました。
両馬ともに秋の菊花賞・秋華賞で3冠を目指します。
牝馬で桜花賞・オークスを優勝した競走馬は「デアリングタクト号」という馬です。
デアリングタクト号の馬主は「株式会社ノルマンディーサラブレッドレーシング」という株式会社です。
一口馬主とは
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株式会社ノルマンディーサラブレッドレーシングは、愛馬会法人「株式会社ノルマンディーオーナーズクラブ」を運営していて、ノルマンディーオーナーズクラブでは一口馬主となるクラブ会員を募集しています。
こういった一口馬主を募集しているクラブは確認できるだけで20数クラブ存在しています。
クラブ会員はクラブを通して競走馬の一口馬主となれるのです。
一口馬主は金融商品となる「競走馬ファンド」の契約(匿名組合契約)を結んで出資をします。
なお、それぞれの一口馬主クラブは第2種金融商品取引業者として登録されていて、金融庁の管轄下にあります。
競走馬の出資募集はおおむね1歳前後の時点で行われ、2歳時のデビューから引退までの数年の間を競走馬の一口馬主として過ごします。
他の投資とは違い、期間も長く安定的に収益が発生するものではないので、趣味の延長で参加している方が多いかと思います。
募集価格・募集口数・一口価格
出資募集の要項には、出資馬ごとに、募集価格(総額)・募集口数・一口価格が決められています。
募集価格
募集価格はおおむね1,000万円~4億円超までと幅広く、平均的な価格帯は2,000万円前後です。
活躍馬だけに絞るともう少し高額で3,000~4,000万円ほどの価格帯が多いようです。
募集口数
募集口数は40口~500口が多いようですが、なかには1万口という馬もいます。
一口価格
募集金額を募集口数で除した金額が次の一口価格です。
ただし、口数が多いと同じ割合で配当金が少なくなりますので注意が必要です。
実際に出資者が支払うことになる一口価格は数千円~数百万円と口数に応じて幅広くなっています。
40口の募集馬ですと数十万~数百万円、400口の募集馬ですと数万円ほどが妥当なところでしょう。
低い金額ですと数千円から募集している場合もありますが、募集口数が1,000口を超える場合が大半です。
回収率
ちなみに、上記で紹介したデアリングタクト号は、募集時の出資金額が一口4.4万円でしたが、現時点での総賞金が約3億円で、一口当たりの配当金は約70万円超です。
回収率は1,600%を超えています。デアリングタクト号はこれからも活躍が見込めますので、まだまだ収益は伸びることでしょう。
すでに引退した過去の一口馬主対象馬で最高の回収率を達成したのは、友駿ホースクラブ愛馬会が募集した2005年生まれのエスポワールシチー号で、
でした。一口当たりの配当金は約200万円です。
なお、競走馬は3歳の夏までの1年間で1勝を挙げて未勝利クラスを卒業しないと、ほぼ全て強制的に引退となってしまいます。
未勝利の馬でも活躍できる見込みがあれば引退せずに地方競馬に転籍して現役生活を続けることができますが、現役続行の判断は出資者ではなくクラブ側で行います。
以上のことから、一口馬主のオーナーには、まず1勝の壁を乗り越える競走馬を選ぶことが求められます。高額の馬でなければ、1勝を挙げるだけで回収率100%を超えてきます。
参加方法
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一口馬主に参加するには、まず一口馬主を募集しているクラブを見つけて会員になります。
年間を通して会員募集をしているクラブがほとんどです。時期によって新規入会キャンペーンなどを行っている場合もあります。
ほとんどのクラブは入会用の資料を取り寄せて、必要書類を同封のうえで会員申込書を郵送する形式です。
オンライン手続きのみというクラブも一部にはありますが、原則として本人確認資料の提出が必須です。
また、最近ではマイナンバーの提出が必須であるクラブが大多数です。
クラブごとに特色があり、
・ 高額馬をそろえるクラブ
・ 口数を多くして一口当たりの出資額を下げるクラブ
・ 人気種牡馬(オスの親馬)の子を集めたり、1頭当たりの口数を少なくし出資金や配当金を高めに設定しているクラブ
・ 比較的低価格帯の競走馬をそろえているクラブ
などいろいろです。
インターネットで「一口馬主」と検索すれば各クラブのホームページが出てきますが、一口馬主についてまとめたサイト(一口馬主DB他)などもありますので、そちらを参考にするとよいことでしょう。
注意点
注意点もあります。
ほとんどのクラブは入会のみという手続きはできず、入会と同時に何らかの競走馬に出資をする必要があります。
すでに会員の方でも引退等で出資馬が全くいなくなってしまうと一定期間(募集期間との兼ね合いでおおむね1年程度)経過後に退会扱いになります。
一口馬主にかかる費用と分配金
次に、実際に必要となる費用を確認しましょう。
主な費用としては次の通りです。
入会金 + 競走馬出資金(一口価格)
【毎月】
会費 + 維持費出資金(一頭毎)
【年1回】
保険料出資金
クラブによって差がありますが、
1万円~3万円(税別)
【会費】
1,000円~3,000円(税別)
が基本的な費用です。
なお、オンライン手続きが中心のDMMバヌーシーは入会金が0円です(2020年度)。
維持費・保険料
維持費や保険料は口数によって変化します。
維持費の目安は、40口なら月1万円強、400口なら1,000円程度です。
分配金
分配金には、月次分配と年次分配があります。
月次分配金
月次分配は主に賞金を獲得した翌月に分配されます。
レースでの1着から5着までの賞金に加え、諸々の奨励金や特別出走手当が交付されます。
賞金にはJRAの中央競馬だけではなく地方競馬に出場した際の賞金等も含まれます。
年次分配金
年次分配金は主にJRAやクラブ法人で源泉徴収された金額の精算で、還付金がある際に分配されます。
月末にはクラブから諸経費の請求と分配金の支払いが行われます。
相殺した金額ではなく、請求と支払いが別々に行われます。
実際に参加してみて
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私は2016年から一口馬主に出資しています。
複数の一口馬主のクラブから資料を取り寄せて検討した結果、先ほど紹介した「ノルマンディーオーナーズクラブ」にしました。
当時のノルマンディーオーナーズクラブはまだ有名馬も少ないクラブで会費も安いうえに、高額馬も少なく一口数万円から始められた点が決め手でした。
会費は1万円(税別)毎月の会費は1,000円と、一口馬主のクラブでは最も安いクラスの費用でした。
初年度には3頭に出資し、その翌年は少し増やして5頭に出資しました。
3年目は少し目先を変えて5頭に出資し、4年目は出資せず、5年目に1頭だけ厳選して出資しています。
戦績
5年間で全14頭に出資し、その合計出資額は61万8,000円です(競走馬出資金のみ維持費等は除く)。
控除前の配当金は合計で53万1,000円となり若干のマイナスで推移しています。
初年度
3頭のうち1頭が勝利をあげ、現在も現役で活躍してくれています。
2年目
5頭が全て未勝利で引退してしまい回収率は20%程度です。
3年目
2年目の経験から少し目先を変えて、低価格帯でまず1勝をあげられそうな競走馬を探して5頭に出資しました。
狙い通り5頭のうち2頭は勝利を挙げてくれ、残りの3頭も地方競馬に移籍後に地方で勝利を重ねて中央競馬に復帰してくれました。
おかげで3年目の世代では回収率が200%を超えています。
4年目
出資せず。
5年目
1頭のみに出資しました。
先月1戦目の新馬戦を勝利してくれて、出資馬で初めての重賞 (G3)レースに出走しました。
結果は4着で賞金も獲得し、回収率はすでに200%を超えています。
現時点で7頭の現役出資馬がいますので、今年中にはトータルの回収率も100%を超えて来くるかと思います。
競馬の世界は深く広い
今回は競馬を舞台にした一口馬主という少し特殊な投資を紹介しました。
競馬の世界には血統をはじめとした専門家が多数いるほど深く広いものです。
全くの知らない状態から一口馬主をはじめるのは難しいかもしれませんが、この記事が競馬のことを知るきっかけになれば幸いです。
また、以前から一口馬主に興味があったという方は、これを機にぜひとも参加していただきたいと思います。
一口馬主における注意点
・ この出資は元本が保証されたものではありません。たとえば出資した馬がデビュー前に怪我や事故で引退してしまう場合もあります。(引退の状況により見舞金等が支払われる場合もあります)
・ 出資申し込み後のキャンセルはできません。
・ クーリングオフ制度の対象外です。
・ 配当金は税法上の雑所得となり、確定申告の対象です。(執筆者:行政書士 風見 哲也)