厚生労働省の「平成30年(2018) 人口動態統計の年間推計」によると年間離婚件数は約20万組で、単純計算すると毎日500組以上の夫婦が別れていることになります。
離婚する際には、さまざまな手続きをしなければなりません。それは生命保険も同じです。
今回は、もしも離婚することになったら必要な保険の手続きと、注意事項について詳しく解説します。
目次
離婚する際に必要な保険の変更手続き
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離婚成立後だと、必要書類が増えて煩わしさも増加します。状況的に可能であれば、離婚が成立する前に各種の変更手続きをしましょう。
保険の契約は、「契約者(保険料負担者)・被保険者・保険金受取人」という3者で構成されています。
「被保険者」は保険の対象者なので途中で変更はできませんが、「契約者」と「受取人」は変更できます。
変更手続きは「契約者」がします。ただし、「契約者」や「受取人」など変更する内容によっては「被保険者」の同意が必要です。
契約者変更
夫婦それぞれが加入している保険は、契約者と被保険者が同人であることが多いと思います。
もしも、配偶者を契約者にしている場合には、自分の保険を自分で管理するために、早めに名義変更しておきましょう。
受取人変更
配偶者、あるいは子どもを受取人にしていることも多いことでしょう。
親権者は子どもに、親権を持たない元配偶者は自分の親兄弟を指定するのが一般的です。
元配偶者の受取人を「子ども」にしておく場合もありますが、次のことに注意が必要です。
いつでも変更手続きできる
たとえば、元配偶者が再婚した場合など、受取人を再婚相手や新しい家族に変更することは自然なことでしょう。
保険契約の諸手続は、契約者に権利があります。
受取人の変更に必要なのは「被保険者」の同意であって、旧受取人に知らせる義務はありません。
変更しておかないと、元配偶者が受け取ってしまう
逆の視点で考えてみましょう。元配偶者や子どもを受取人にしたまま、再婚後も変更手続きしないままに死亡してしまったとします。
その場合の死亡保険金は、再婚相手や新しい家族ではなく、離婚した元配偶者やその子どもに支払われてしまいます。
自分が「親権者・元配偶者・再婚相手」どの立場であったとしても、きちんと手続きしておく、あるいは確認しておくと安心です。
事務的な諸手続
もしも、契約者変更や受取人変更が不要な場合でも、名義変更や住所変更などの事務手続きはしておいてください。
改姓を伴う場合には、今後何らかの保険金や給付金を受け取る際に別途書類が必要となり、手続きが滞ってしまう可能性があります。
離婚して転居する場合には、必ず住所変更手続きをしておきましょう。
住所変更手続きを怠ると、年末調整に用いる保険料控除証明書や万一保険料支払いが滞った場合の振込用紙などの重要な書類が届かなくなってしまいます。
営業員や相談窓口に「離婚で必要な変更手続きをしたい」と申し出れば、必要な項目を見繕ってくれるので安心です。
学資保険は必ず「親権者が契約者になる」ことが重要
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学資保険は、子どもの学費のために長期間積み立てる保険です。
離婚時の話し合いによっては、「親権者は妻だが、学資保険の契約者は夫」のままにするケースもあるのではないでしょうか。
学資保険の保険料を夫が負担し続けることはメリットですが、それを打ち消すほどの大きなデメリットもあります。
デメリット1. 学資資金が解約される危険性
学資保険は貯蓄保険です。解約すると、これまでの積み立ての一部が解約返戻金として戻ってきます。
あらかじめ決めた期日より前に解約すると、これまでに支払った保険料総額よりも低い額の解約返戻金しか戻ってこないため損します。
しかし、「契約者ではない元配偶者」や「未成年の被保険者」には連絡がいくこともないので阻止する方法がありません。
また、保険料支払いが滞り、結果的に解約されてしまう可能性も否めません。
デメリット2. 満期保険金を使われてしまう可能性
学資保険の「被保険者」は子どもですが、「受取人」は子どもとは限りません。
多くの場合、受取人は契約者と同人が指定されているはずです。なぜなら、受取時の税金が異なるからです。
契約者も受取人も同じ場合は「所得税」
満期保険金を一括で受け取る場合の計算式は次の通りです。
自分で払って自分で受け取る満期保険金の場合には、払込保険料総額が必要経費として引かれます。
残念ながら現在の金利で、50万円も増える保険は望めません。つまり、ほとんどの場合には税金がかからずに受け取れるということです。
契約者が親、受取人が子どもの場合は「贈与税」
贈与税の計算をする場合の式は、次の通りです。
「税率 – 控除額」は、基礎控除後の金額によって異なります。
つまり、満期保険金額が110万円を超える場合には、贈与税がかかる可能性が高くなります。
学資保険をしっかりと受け取るために
離婚時の話し合いが円満だったとしても、生活をともにしなくなった相手がどう変わるかは分かりません。
保険料支払いの負担軽減と、解約返戻金受け取りという2つの魅力に抗えないほど、生活に困窮するかもしれません。
あるいは再婚を考えて、自分で貯めた満期金は新しい家族のために使いたいと思うかもしれません。
よけいなトラブルを避けるためにも、学資保険の契約者と受取人は必ず親権者に変更しておくべきです。
養育費代わりに保険料の払込を希望する場合には、同額の費用を振り込んでもらうなどの別の方法を考えましょう。
離婚後の保険内容の見直し
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離婚をしたことで必要になる保障、あるいは不要になる保障があることでしょう。
諸手続だけではなく、保険内容自体も見直しすることをおすすめします。
親権者の場合:子どものための保険をしっかりと準備する
万が一のことがあった際に、遺された子どもが困窮することのないような保障を準備しておくことが大切です。
「万が一」は死亡だけではありません。
ケガや病気で収入を得られなくなった時のことも考えて、「死亡保険」だけではなく「就業不能保険・介護保険」も準備しておきましょう。
離婚後に世帯収入が大きく減った場合には、居住地域の「ひとり親家庭支援」で医療費助成が受けられる場合もあります。
また、高額療養費制度の上限額が低くなり、利用しやすくなります。
保険料に余裕がない場合には、医療保険を切り捨てて「子どもに遺す」ことを重視するプランがおすすめです。
親権を手放す場合:養育費の支払いや再婚に備えておく
養育費を捻出するには、不要になった保険を整理しましょう。
家族を支えるための高額な死亡保障は、金額を下げても大丈夫です。ただし、今後再婚する可能性がある場合には、あまり下げすぎないように注意しましょう。
再婚して新たな家族を支えるために死亡保険や就業不能保険を追加したいと思っても、その時の健康状態によっては加入できなくなっているかもしれません。
最低限の保障は残しておいたほうがよいことでしょう。
ひとりで生きていく場合:自分のための保険を充実させる
子どもがいない場合で、再婚せずにひとりで生きていこうと決めた人は、「自分で自分の面倒を見るため」の保障を重点的に考えます。
万が一の介護状態になった際のことを考えて、介護保険や認知症保険などを準備しておきましょう。
一時金タイプより、
です。
遺す相手がいない場合には、死亡保障は最低限でかまいません。
ただし、大げさな葬儀は不要だと思っていても、最低限の火葬代は必要です。片づけ費用として、最低100万円は準備しておくといいですね。
離婚後の生活に必要なものを選ぶことが重要
離婚に至る事情は人それぞれです。中には、配偶者のDVから逃げ出した場合、または関係がこじれて裁判が必要な場合もあることでしょう。
離婚前にお互いに話し合う余地があるのであれば、保険のことを思い出してほしいと願います。
保険はお互いの金銭と命に関わる問題です。よけいな火種を残さないように、しっかりと整理しておきましょう。(執筆者:仲村 希)