コロナ禍の影響で、感染予防のために車通勤をする人が増えています。
しかし今まで電車で通勤していた距離を車で移動すれば、車にかかる諸経費が高くなるのも事実です。
「少しでも経費を少なく抑えたい」という気持ちから、自動車保険の見直しをする人が増えています。
しかし補償の内容次第では、保険料を抑えたことでとんでもない事態を引き起こす恐れもあります。
今回は、保険料と補償の範囲の観点から「間違った節約方法」について解説します。

目次
賠償保険は無制限が当たり前か
結論から先に言うと、賠償保険は無制限にしておくのがベストです。
無制限にすればそれだけ保険料は上がるので、少しでも保険料を抑えようとしたい人にとっては悩むところです。
しかし、賠償保険の補償を減額したために不測の事態を招くことがあります。
月100円の節約が仇となったAさん
Aさんは無事故無違反なので保険も20等級でしたが、保険料がもったいないと考え補償範囲を減らすことにしました。
無制限 = 高いと考えたAさんは、対物補償の範囲を500万としました。
無制限をかけていた時の保険料は月々5,820円でしたが、500万円にすることで5,730円と月100円ほど安くなりました。
しかし補償内容を変更した後に、コンビニの駐車場でアクセルとブレーキを踏み間違え、店舗に突っ込んでしまう事故を起こしました。
この事故で人を巻き込まなかったのは不幸中の幸いでしたが、お店の休業補償や修理代、破損した商品や機械の補償など、かなりの高額請求が来ていることを保険会社から伝えられ、毎日眠れなかったそうです。
Aさんは月々100円の節約したために心身に大きなストレスを抱えてしまいました。
と、対物保険で保険料を節約したことに後悔していました。
節約したいなら特約の減額を
ここで、Aさんの節約できた保険料と補償内容について確認していきましょう。
保険料は年間1,200円ほどの節約になります。
一方、補償内容は無制限から500万円と引き下げられました。
無制限ということは、仮に事故を起こしてもの数千万円の損害を与えても補償してもらえるということです。
この金額から見ても対物補償を引き下げるのは結果として、節約どころか家計を揺るがす事態に陥ってしまう危険性があることがわかります。
もし少額でも保険料を抑えたいのであれば、特約を減額するのがおすすめです。
例えば、Aさんは人身障害保険の傷害一時金を20万円に設定しています。
これを10万円に変更すると保険料は5,650円となり、月々170円節約できます。
こちらは自分や同乗者を補償する保険ですが、あくまで人身障害保険の特約なので減額しても対物補償ほどのダメージはありません。
また個人賠償やファミリーバイクなどの特約は、他の保険で加入していることを忘れている人も多いです。
特約部分の見直しをしてみると、対物補償を抑えるよりリスクが低く、高額な保険料を節約できる可能性もあります。

節約金額と背負うリスクを天秤にかけて判断
今回は、保険料の節約方法について紹介しました。
事故を起こしていない人にとって、自動車保険は高額な出費です。
保険料改定などで保険を使っていなくても保険料が上がる場合もあり、少しでも補償を抑えて節約できれば車の維持費は軽減できます。
しかしどの補償を削って保険料を抑えるかによっては、事故を起こした時に取り返しのつかない事態へと発展するリスクもあります。
自動車保険は「無制限 = 保険料が高い」というイメージがありますが、そうではありません。
削減できる保険料と、補償内容を削ることで起こりうるリスクを天秤にかけて、自分に1番適した保険料の節約方法を判断しましょう。(執筆者:自動車会社経営25年 河野 みゆき)