障害者手帳について、
「聞いたことがあるけれどよく知らない」
と言う人がほとんどではないでしょうか。
遊園地や博物館等の入場券売り場に「障害者割引」と表示があったり、求人広告に「障害者雇用」と書かれているのを見たことがありませんか。
実は、意外に思うかもしれませんが、障害手帳を持っている人は多いです。
そこで、障害者手帳の対象者の要件やそのメリット等を紹介していきます。

目次
障害者手帳とは
障害者手帳とは、一定の障害のある人が申請をすることで交付されるもので、
「精神障害者保健福祉手帳」
「療育手帳」
の3種類があります。
制度に対する法律等はそれぞれで異なりますが、どの手帳を持っていても障害者総合支援法の対象となり、さまざまな支援策を受けられます。
障害者手帳は、障害があれば誰でも自動的に交付されるものではなく、自ら申請をして審査を経て交付されるものです。
また、内容は一律ではなく、生活においての支障の程度や症状によってそれぞれの手帳ごとに等級が定められています。
障害者手帳の対象者
障害者手帳の対象者は次の通りです。

「身体障害者手帳」の対象者
身体障害者福祉法に定める身体上の障害がある方に対して、障害の種類別に1級から6級の等級が定められています。
7級の障害は単独では手帳交付の対象にはなりませんが、7級の障害が2つ以上重複する場合や7級の障害が6級以上の障害と重複する場合には対象です。
さらに、障害は一定以上で永続することが要件となり、一時的なものは除かれます。
また、手術等で程度が軽くなり、対象外となったり、反対に症状が進んで等級が上がる場合もあります。
「精神障害者府県福祉手帳」の対象者
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定します。
手帳の等級は、精神疾患の状態と能力障害の状態の両面から総合的に判断され、1級から3級まであります。
手帳を受けるためには、その精神疾患による初診から6か月以上経過していることが必要です。最近は申請が多くなっている手帳です。
ただし、身体障害と比べて外見からは判断できないため、医師の診断書がポイントとなってきます。
例として3級の要件を見ると「精神障害であって日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」とあります。
つまり、いくら精神障害と診断されても、普通に生活できれば要件にあいません。
日常生活や社会生活に困難が伴うことが必須で医師の診断書にその旨の記載が必要です。この記載がないと審査に通ることは難しいでしょう。
「療育手帳」の対象者
療育手帳は、児童相談所または知的障害者雇用相談所において、知的障害があると判定された方に交付されます。
ただし、療育手帳制度は、全国統一の基準がなく各自治体において判定基準等の運用方法が決められています。
また、手帳の名称も各自治体により異なります。主に幼少期の頃に手帳を受ける場合がほとんどです。
障害者手帳を持つことのメリット

障害者手帳を持つことでさまざまなメリットがあります。
1. 税金の優遇がある
障害者手帳を持っている本人に対して所得税や相続税、贈与税など国税の優遇措置があります。
また、税金には地方に納める地方税がありこの優遇措置もありますが、各自治体により制度は異なっています。
よくある優遇措置が自動車税の軽減や免除の制度です。
2. 就職をする際に一般枠とは別の障害者枠で応募できる
なかなか就職をすることが難しい公務員や大企業に障害者枠で応募することが可能です。
法律で「法定雇用率」と呼ばれる障害者の雇用率が定められていて、まだまだ未達成の会社や自治体では積極的に求人を募っています。
特に、2021年3月1日から法定雇用率が引き上げられる予定(民間企業2.3%、国や地方公共団体2.6%)で、ますますの積極的な採用が予想されます。
障害者雇用の枠で採用されると身体や心への配慮を受けながら働けるため「体調が悪い=即解雇」という最悪の図式を避けられます。
3. 公共料金等の割引や費用助成がある
NHK受信料や水道料金、公共交通機関の運賃等の公共料金が割り引かれます。
また、ドコモやソフトバンク等の携帯料金の割引や自治体によっては医療費の助成や補装具の費用助成があります。
ただし、これらの割引や助成は障害者手帳の種類や障害の等級によって異なりますので、各自治体等で確認をしてください。
障害者手帳と障害年金は制度が異なる
障害者手帳と障害年金は制度が異なりますので、障害がある場合には両方を取得することをおすすめします。
障害者手帳を持つことで不利益が生じることはありません。また、障害が軽減されれば手帳を返すことや更新をしないことも選択できます。
手帳を持つことで税金の優遇やさまざまな割引、サービスを受けられますので、対象になるかもしれないと思ったら申請をしてください。
各自治体では申請等について相談窓口を設けていますので「対象になるのかな?」と迷ったら、一度相談されるとよいことでしょう。(執筆者:特定社会保険労務士、1級FP技能士 菅田 芳恵)