一家の大黒柱が亡くなった場合、公的年金である遺族年金という制度があります。
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。
国民年金では、遺族基礎年金は「子のある配偶者」または「子」のみしか受け取れません。
その代わりに遺族基礎年金を受け取れない方は「寡婦年金」「死亡一時金」が受け取れます。
今回は、「寡婦年金」「死亡一時金」について解説しようと思います。

目次
寡婦年金とは
妻が年金を受けるまでの「つなぎの年金」とも呼ばれています。
老齢基礎年金の資格期間を満たした夫が国民年金を受けずに死亡したとき、夫の代わりに妻が60歳から65歳になるまで支給されます。
受けるための要件
寡婦年金を受けるためには、以下の要件すべてに該当していることが必要です。
・ 死亡した夫に、第1号被保険者期間(任意加入被保険者期間を含む)のみで10年以上の保険料納付済期間(免除期間も含む)があること
・ 死亡した夫との婚姻期間が10年以上あること
・ 死亡した夫と、死亡時に生計維持関係にあったこと
・ 死亡した夫が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受けていないこと
・ 65歳未満であること
注意点
・ 婚姻関係には事実婚であっても問題ありません
・ 妻が繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けている場合は支給されません
・ 死亡一時金を受けられる場合は、どちらか一方を選択し、受け取れます
年金額と支給開始時期
夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3を受け取れます。
ただし、付加年金部分は除きます。
60歳未満で受給権を取得した場合は、60歳に達した日の属する月の翌月から、60歳以上で受給権を取得した場合は、夫の死亡日の属する月の翌月から支給されます。
受給権の消滅
亡くなった方の妻が次のいずれかに該当した時、寡婦年金の受給権が喪失します。
・ 65歳に達したとき
・ 死亡したとき
・ 婚姻したとき
・ 直系血族または直径姻族以外の養子となったとき(事実上の養子縁組関係にある場合を含みます)
・ 繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権を取得したとき
死亡一時金とは

死亡日の前日において第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった時、その方によって生計を同じくしていた遺族に支給されます。
受けるための要件
死亡一時金を受けるためには、以下の要件すべてに該当していることが必要です。
・ 死亡日の前日において死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての保険料納付済期間の月数が36か月以上である者が死亡したとき
・ 老齢基礎年金、障害基礎年金のいずれも受けないで死亡したとき
・ 遺族が遺族基礎年金を受けられないとき
注意点
・保険料納付済期間の月数は、4分の3納付月数は4分の3月、半額納付月数は2分の1月、4分の1納付月数は4分の1月として計算します
・遺族が、遺族基礎年金の支給を受けられるときは支給されません
・寡婦年金を受けられる場合は、どちらか一方を選択し、受け取れます
・死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です
死亡一時金の支給額
保険料を納めた月数に応じて12万円~32万円です。
付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算されます。
生計を同じくしていた遺族とは
死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者が支給の対象です。
妻が受け取る場合は、年金の同時受給ができないので注意が必要
寡婦年金は妻のみ、死亡一時金は、死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹が支給の対象となる点が異なります。
同一事由により寡婦年金と死亡一時金を受けるときは、その者の選択により、どちらか一方のみが支給されます。
支給の対象が妻の場合、60歳までに「死亡一金」を受け取るか60歳から65歳まで「寡婦年金」を受け取るか選択ができます。
また、寡婦年金を受け取る場合は、妻自身の老齢基礎年金と同時に受給できないことから、繰り上げ支給の老齢基礎年金を受けてしまうと寡婦年金は受けられないので注意が必要です。(執筆者:社会保険労務士 望月 葵)