令和2年5月に「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(年金制度改革関連法)」が成立し、2022年4月1日から順次施行されます。
今回の改正のひとつに、公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大があります。
これは、60歳から70歳の間で自由に選べる公的年金の受給開始時期を70歳から75歳までに引き上げるというものです。
今回は、この年金制度改革関連法における「公的年金の繰下げ受給の上限年齢の引き上げ」について詳しく解説していきます。
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目次
公的年金の受給開始時期
老齢年金の受給開始年齢は、原則65歳です。
しかし、現状の年金制度では、希望すれば60歳から70歳までの間で自由に受給開始年齢を選択できるのです。
ただし、65歳前に受給することを選択する「繰上げ受給」では、最大30%減額された年金を生涯受給し続けることになります。
一方で、65歳より後に受給することを選択する「繰下げ受給」では、最大42%増額された年金を生涯受給し続けます。
そして、今回の年金制度改革関連法により、「繰下げ受給」を選択できる年齢が70歳までから75歳までに引き上げられるのです。
現状の公的年金の「繰下げ受給」
現状の老齢年金は、65歳で請求せずに66歳以降70歳までの間に請求した場合に繰下げて請求できます。
この
のです。
(1)「老齢基礎年金」の「繰下げ受給」
昭和16年4月2日以後生まれの人は、「繰下げ受給」を申し出た日の年齢ではなく、月単位で増額率に応じた年金額の増額が行われます。
また、年金額の増額率は生涯変わることはありません。
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(2)「老齢厚生年金」の「繰下げ受給」
基本的に昭和17年4月2日以後に生まれの人は、66歳に達した日以後に「繰下げ受給」の申出ができます。
増額率 = 繰下げ月数 × 0.007
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年金制度改革関連法による公的年金の「繰下げ受給」
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年金制度改革関連法によって公的年金の受給開始時給を70歳から75歳までに引き上げることに伴う、70歳以降の請求時の年齢と増額率は次の通りです。
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対象となる人はきちんと確認
この公的年金の受給開始時給を70歳から75歳までに引き上げる制度改正は、2022年4月から適用されます。
従って、2022年4月1日以降に70歳に到達する人(昭和27年4月2日以降に生まれ)が対象です。
対象となる人は、よく検討してみるとよいことでしょう。(執筆者:社会保険労務士、行政書士 小島 章彦)