住宅ローン控除の恩恵を最大限にして「当初の自己資金はできるだけ出さないほうが得」というのは本当なのでしょうか。
住宅ローン控除は、所得控除よりもさらにお得な税額控除です。
自己資金に余裕のある方であれば、最大限の恩恵を受けるために「できるだけ当初の自己資金を出さない住宅ローンの組み方が得なのかどうか」非常に悩むところでしょう。
今回は、検証条件を設定したうえでその是非を考えてみたいと思います。
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目次
検証条件
・ 40歳男性 65歳定年時で完済予定
・ 自己資金2,000万円準備可能 建築資金総額4,500万円(消費税込)
・ 住宅ローン返済は月々返済のみで9万円程度に設定
・ 保証料については内枠方式 上乗せ率0.2%
・ 金利タイプは変動金利 保証料上乗後の金利0.6% 2021年12月返済開始
・ 金利は今後変動しないものと想定
・ 融資手数料は定額5万5,000円(保証会社分含む、消費税込)
・ 住宅ローン控除は、控除率1%全額控除可能である
・ 一部繰上げ返済には残りの自己資金と住宅ローン控除額の増加分のみ充当
・ 一部繰上げ返済の手数料は無料
・ 諸経費は別途準備できるものとし、比較については増額分のみ計上
当初自己資金を最大限に設定して定年までを返済期間とするケース
自己資金2,000万円、借入額2,500万円、返済期間25年ですので、
月々返済額:8万9,760円、総返済額:2,692万8,095円 … (1)
住宅ローン控除額:13年総額で249万7,500円 … (2)
当初自己資金を最小限に設定し住宅ローン控除の恩恵を最大化するケース
自己資金1,100万円、借入額3,400万円、返済期間最長35年ですので、
当初月々返済額:8万9,769円 … (3)
住宅ローン控除額:13年総額で371万1,300円(上記のケースより121万3,800円増加)
住宅ローン控除を13年受け切った翌年1月の月々返済日に残りの自己資金+住宅ローン控除の増加分(121万3,800円)を一部繰り上げ返済に回して、最終返済日を定年に合わせたとしますと、
残りの返済回数154回、月々返済額:8万6,158円 … (4)
実質返済総額:2,392万2,726円
※登録免許税増加分 + つなぎローン金利増加分
注)計算結果については、端数処理の関係等で多少の誤差が生じる可能性があります。
検証結果および考察
今回の2つのケースを比較しますと当初自己資金を最小限に設定したケースのほうが、実質返済総額では約51万円減るという結果になりました。
また、今回の検証においては自己資金の残りを約13年間運用等して増やすということは想定していません。
自己資金の残りである900万円を運用して13年間で少しでも増やせるのであれば、さらにお得です。
あとは自己資金の残りを手元に置いておくことでのさまざまな心理的メリットが生まれますので、家計管理などにも好影響がもたらされることでしょう。
個別に計算するうえでの注意点
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今回の検証結果が一般的な結論であるとは必ずしも言えません。
融資条件や諸経費等については金融機関ごとや顧客属性によって大きく異なることがあるからです。
たとえば、自己資金の多寡によって適用金利や諸経費が大きく異なる場合があります。
適用金利や諸経費が大きく異なれば結果が逆転する場合もあり得るのです。
個別具体的に検証をしないと正確な判断ができないということを強く申しあげておきます。
最後に直近のトピックですが、令和3年度税制改正大綱において会計検査院からの「決算検査報告で控除率の1%が高すぎるのではないか」との指摘を受けて控除率や控除額のあり方を令和4年度税制改正において見直すこととされています。
今後、控除率が「1%」をキープできるかは不透明になってきました。そのことも念頭において検討するようにしてください。(執筆者:CFP認定者、1級FP技能士 小木曽 浩司)