最近は高齢者や持病のある方でも保険に入りやすくなっています。
「持病があっても安心!」
などといったキャッチコピーを目にしている方は多いのではないでしょうか。
今回は、老後の保険加入、特に死亡保険において現役世代よりも注意が必要な点について解説したいと思います。
ご自身やご家族の保険選びに役立つ内容とですので、ぜひ最後までお付き合いください。

目次
保険期間と払込保険料総額に注意
まず結論からですが
「払込保険料総額」=トータルいくらの保険料を払うことになるのか
この2点に注意が必要です。
高齢者の加入は割高で、保険期間に注意しないと保険金を受け取れない可能性もあるのです。
現役世代、特に20代や30代の場合には高額な死亡保険に割安な保険料で加入可能です。若い世代の死亡リスクが低いことが理由です。
しかし、高齢者(特に60代以降)は死亡リスクが高くなります。
高齢者が現役世代と同額の死亡保険に加入する場合には、割高な保険料になることは容易に想像できます。
「現役時代ほどの保障額は必要ないから、安く加入することができるのではないか」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、そうでもありません。
期間限定の死亡保険に加入した場合
たとえば、70歳男性がある保険会社で300万円(保険期間10年)の死亡保険に加入しようとしたとします。
保険料
定期保険分野で「保険料が割安」と定評のある会社のシミュレーションで「7,914円/月」になります。
30代であれば、この金額で数千万円の死亡保険に加入できるのです。
「保険期間」
ここで大事なのが
という点です。
保険期間は10年ですので、80歳までの保障です。
80歳までに死亡してしまった場合には300万円の保険金を遺せますが、80歳をご存命で迎えた場合には保険は終了となります。
令和元年の平均寿命は、男性が81.41歳です。平均寿命までご存命だった場合には保険金は受け取れません。
また、「平均寿命というのは0歳から何歳まで生きるか」を現したものです。すでに70歳を迎えた方は平均寿命よりも長生きすることになります。
それが平均余命というものですが、これによると70歳を迎えた方はそこから平均して15.96年生きることになります。
つまり、85歳を超えるのです。もちろん、女性はさらに長生きします。
と言えそうです。
扶養義務のある小さな子どもがいる方ならまだしも、そういったご家庭は稀であることでしょう。
毎月の保険料を貯金しておくほうが懸命な判断だと言えるのではないでしょうか。
一生涯続く「掛け捨てではない死亡保険」にも注意

ここまででは、期間限定の死亡保険の解説をしました。
でも、いつかは亡くなるわけだから一生涯続く死亡保険なら損はしないのかな?
掛け捨てじゃない保険なら解約してもお金が返ってくるし良いんじゃないの?」
このような声も聞こえてきそうです。
「一生涯続く掛け捨てじゃない死亡保険=終身保険」のことですが、こちらにも同様に注意が必要です。
持病をお持ちの方でも加入しやすい「緩和型終身保険」を例に解説します。
70歳男性で300万円の「緩和型終身保険」に加入すると、保険料は毎月2万4,744円です。
保険期間10年の定期保険と比較するとかなり高い保険料です。
一生涯の死亡保障なので保険会社は必ずいつか保険金を払うことになります。その分、保険料も高くなってしまうのが「終身保険」の特徴です。
しかも、保険料払込期間は終身なのでずっと一生涯払い続ける必要があります。
つまり、10年間の加入で約300万円の保険料を払うことになるのです。
10年以内に万が一のことがあると遺せる保険金のほうが多くなりますが、先ほど解説したとおり
という計算です。
保険金額を変えてシミュレーションしても同様です。
70歳男性100万円の「緩和型終身保険(払込期間終身)」なら8,248円/月です。こちらも10年間保険料を払うと約100万円です。
「一生涯続くから安心」ではなく、平均的に生きると保険金以上の保険料を払うことになってしまうので、それこそ「保険会社に払う保険料を銀行に貯金していたほうが良かった」と後悔することになりそうな内容です。
ちなみに「掛け捨てではない」ので途中解約すると解約返戻金が返ってきます。
しかし、払込最中に解約すると払った保険料よりも少ない解約金しか返ってきません。
高齢者が加入できる「緩和型終身保険」は基本的には保険料払込期間が終身です。
つまり、解約返戻金があるといえども払った保険料より少ない金額しか返ってこないことになるのです。
こちらの観点からも銀行貯金のほうが良さそうです。
のでご注意ください。
ちなみに、現役世代が終身保険に加入すると、払込終了後は保険料総額よりも解約返戻金のほうが多くなります。
保険は若い時に加入しておいたほうがお得な商品の代表格なのです。
いつまでの保険にいくら払うことになるのか要確認
ここまでで解説してきた通り、
・ その保険にトータルいくらの保険料を払うことになるのか
この2点の確認が必要です。
現役世代であればそれなりの責任もあるので損得だけで決めるものではないのですが、高齢者ともなると扶養家族は少ないはずです。
無理して保険に加入するのではなく、預貯金など他の資産で対応することができないかをしっかりと確認する必要があります。
なお、本記事で解説した内容は保険設計書に書かれています。
いつまで続けられるのかは「保険期間」に、トータルいくらの保険料を払うことになるのかは「払込保険料総額」の欄にしっかりと明記されているはずです。
老後から保険に加入するには注意が必要です。「保険以外の選択肢」も持ち合わせたうえで検討されることを強くおすすめします。(執筆者:FP歴10年 冨岡 光)