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「小規模宅地等の評価減」とは
親と同居していると、その親が亡くなった際にその居住していた土地の評価が最大330平方メートルの面積までが80%評価減できます。
この制度を「小規模宅地等の評価減」と言います。
以前は、二世帯住宅で玄関が別で内部でも自由に行き来ができない構造の建物の場合には同居とはみなされず、「小規模宅地等の評価減」が適用されませんでしたが、現在は、その建物が区分所有登記されたものではない限り、適用が可能です(なお、同居以外でも適用できる場合がありますが、今回は割愛します)。
同居で適用される場合の他の条件
同居で「小規模宅地等の評価減」が適用される場合の他の条件は、
2. 同居していた親族が、その土地を相続すること
3. 相続税の申告期限までその居住用土地を所有し、居住すること
が条件です。
相続対策前に確認すること
相続対策には、大きく分けて
・ 遺産分割対策
があります。
そもそも、親が亡くなった際に「相続税は発生するのか?」「発生したら、いくらなのか」を確認する必要があります。
たとえば、定年退職の直後に相続が発生すれば、それなりの相続税が発生しても、その後の家のリフォーム、自身や親の介護費用、子や孫への贈与で預貯金は使い果たし、90代で相続を迎えたときには、相続税対策は、全く不要かもしれないのです。
少なくとも現時点で相続税が発生しないのであれば、相続税対策は不要かと思われます。
同居でよくある問題
「夫の親と妻」または「妻の親と夫」の関係は難しいものです。近くに住んでいれば、いるほど難しいのです。まずは、このことを分かっていただきたいのです。
義父母と同居することで離婚につながることもよくある話です。多少の相続税を払ってでも別居のほうがお互い良い関係でいられるのかもしれません。
岡田さんの事例
岡田さんの事例です。
母親名義の土地に岡田夫婦と母が30年間同居していたのですが、母親が亡くなる数か月前に、母親と岡田夫婦が喧嘩してしまい、岡田さんの姉(娘)の家に転居して住民票も写したところで相続が発生しました。
岡田さんは、長年母親と同居していた土地について「小規模宅地等の評価減」の適用した相続税申告をしたところ、当局から否認されたのです。
理由は前述の条件1.の「相続開始の直前において同居」ではなかったからです。
岡田さんにしてみれば、母親と妻の軋轢に疲れ果てたうえに相続税の節税すらできない結果となったのです。
では、相続の発生直前に住民票を戻せば適用されたかというと、そうでもありません。
ポイントは、相続直前において実質的に同居していたかどうかということなのです。
「小規模宅地等の評価減」の適用で、具体的にいくら節税になるのかを事前に税理士さんに確認しておくことが大切です。
住宅資金贈与の利用で「小規模宅地等の評価減」が適用されなくなる
子が家を建てる資金を親が贈与する場合には、現在、
という制度があります。
ただし、この制度を使って親と別のところに家を取得すると「小規模宅地等の評価減」が使えなくなります。
どちらがお得かというより、親の資金力、他の兄弟姉妹との関係もあります。1人だけに生前贈与していると相続時に調整する必要も出てきます。
相続で想定しておきたいこと

親と同居していれば、将来、親が亡くなった際にその不動産をタダで取得できるわけではありません。
他の相続人にしてみれば、「その不動産はいらないが、法定相続分を現金で要求したい」ということもあり得ます。
同居していなかった兄弟姉妹にしてみれば「家賃も払わずに親の家に住んでいた人」と「住宅ローンを払っている私」の対立になるわけです。
そうなると結婚後に親と同居していたあなたは、親の相続が発生することで家を手放さなければならないこともあるのです。(執筆者:1級FP、相続一筋20年 橋本 玄也)