「何となく貯金しているけどこのままで良いのかな」
「とりあえず積立NISAを始めたから大丈夫でしょ」
資産形成と一口に言っても奥は深いです。
実際に資産形成を初めても途中で意図せぬ目的で使ってしまってはそれまでの努力が水の泡になってしまうかもしれません。
賢く将来のお金を貯めていくためにも抑えておいていただきたい「貯金を3つに分ける」ことについて解説したいと思います。
目標とする期間で3つに分けることをお勧めしております。
(2) 10年~20年以内を中期用
(3) 20年以上先のためのお金を長期用
として3つに分ける方法です。
以下、順番に解説していきます。

目次
(1) 10年以内の短期用資金は銀行貯金で準備
まずは10年以内が目標となる短期用資金です。
目先の家具の買い替え費用や車の購入資金、旅行用のお金、年齢によっては子どもの教育資金などが含まれるかもしれません。
こちらについては投資信託などの投資性金融商品を使うのではなく、銀行貯金されることをお勧めします。
理由は10年以内の相場の動きだと元本欠損リスクが高くなるからです。
相場が右肩上がりだと10年以内の短期でも投資信託などでしっかり利益を出すことができます。
ですが相場の動きは誰にもわかりません。
10年以内に始めた短期資金だと相場が急落すれば利益がなくなるどころかマイナスに転じてしまう可能性もゼロではありません。
いざ使いたい時にマイナスだと目も当てられない
積立NISAをはじめとした投資信託はあくまでも長期的視点で資産形成するための商品です。
長期的に保有し続けるからこそ相場の急落に耐えうる資産を形成することができるのです。
ここ最近は相場の上昇傾向が続いているのでかなり楽観的な見方をされる方もいらっしゃいます。
本来は長期的視点で見るべきものだということを忘れないようにしてください。
個別株を用いた株式投資(いわゆるトレード)で資産を形成される方もいらっしゃいます。
長期的に保有し続けるのではなく、1日~数か月での売買を繰り返し利益を狙う方法ですが、こちらも初心者にはお勧めできません。
株式トレードで継続的に利益を出せるのは一部の天才のみです。
なくなっても構わない金額でチャレンジしてみる分には問題ありませんが、ほとんどの方は数年以内に相場から退場(資産が尽きる)ことになってしまいます。
リスクを率先して取りに行きたい方以外は手を出さない方が懸命です。
いずれにせよ、10年以内の短期用資金については相場の変動の影響を受けない銀行預金で貯金されることをお勧めします。
(2) 10年~20年以内の中期用資金は積立NISAなどで準備
次に10年以上、20年未満の中期用資金です。
生まれたばかりの子どもの大学資金や住宅ローンの繰り上げ返済用資金などある程度まとまった資金が想定されるかと思います。
こちらについては投資信託をはじめとした金融商品を使われることをお勧めします。
中でも年額40万円まで、20年の投資期間なら利益が出ても非課税となる積立NISAがお勧めです。
年額40万円以上の大きな金額を投資可能な方については積立NISAにこだわる必要はありません。
通常の投資信託やETF、長期の株式投資もアリです。
非課税措置が使えなくても、利益が出た分に対して課税されるだけなので、損することはありません。
「プラスになる可能性を逃す」ことがデメリット
10年以上先の資金となると「マイナスになるリスクを取らない」ことより「プラスになる可能性を逃す」方がデメリットが大きくなります。
簡単にいうと「本来なら増やせたはずが、銀行貯金にしていたために全く増やせなかった」ということです。
失われた時間が戻ってくることはありません。
積立NISAなどの投資信託を10年以上継続した場合、マイナスになる可能性は過去のデータからはかなり低いです。
むしろ銀行貯金だと10年間のインフレをカバーできない可能性が高いので、安心であるはずの銀行貯金の方が損してしまう可能性さえあります。
10年以上先の目標については積立NISAをはじめとした金融商品を使って運用することをお勧めします。

(3) 20年以上先の長期用資金についてもiDeCoなどの金融商品で準備
最後に20年以上先の資金、老後用と言い換えてもいいかもしれません。
こちらについては基本的に現役引退後の資金準備なのでiDeCoや職場の確定拠出型年金を用いた資金準備が有効です。
運用益が非課税となるだけでなく、受取時も減税措置があるのがiDeCoや確定拠出型年金です。
これを使わない手はないでしょう。
IDeCoも確定拠出型年金も投資信託です。
運用期間が長期であればあるほどプラスになる期待値が高くなります。
投資先ファンドを自身で選ぶのがiDeCoや確定拠出型年金の特徴ですが、元本保障型商品だけは絶対に選択しない様にしてください。
「運用益が非課税」のメリットを全く受けることができなくなってしまいます。
債券ファンドを混ぜてもいい年代も
20代から40代の方は株式ファンドメイン、50代以降の方は場合によっては債券ファンドを混ぜても良いかもしれません。
また、財形貯蓄や持株制度を利用している方がいらっしゃるかもしれませんが、長期的資産形成のメインとしてはあまりお勧めできません。
財形貯蓄は利用が限られる(目的外だと課税される)うえに低利率、持株制度は勤め先への依存度が高くなりすぎる(仮に勤め先が倒産すると毎月の収入だけでなく持株も大変なことになる)リスクがあります。
余力の範囲で加入する分には問題ありませんが、メインとなる制度ではありません。
期間別3つの資金配分にも注意が必要
ここまで目標とする期間別に貯金を分けることを解説してきました。
・ 10年~20年以内 → 積立NISAなどの投資信託
・ 20年以上 → iDeCo・確定拠出型年金など
これの期間はあくまでも目安であり、画一的にしないといけないわけではありません。
大事なのは
「全ての貯金を1つにまとめるのではなく、分散させることによりより賢く貯めることができる」
という点を実践することだと思います。

3つの資金準備の配分を変えることも重要
また、現在の年齢や今後のライフイベントによって3つの資金準備の配分を変えることも重要です。
20代や30代前半の方は長期用資金よりも短期用資金を重視する方が良いでしょう。
逆に教育資金がある程度落ち着いた方は短期用資金よりも中期用、長期用を優先するべきステージでしょう。
年齢によっては中期と長期がひとまとまりになるかもしれません。
最初から期間や金額をはっきり決めて、画一的に運用することが目的ではありません。
ライフステージによってフレキシブルに対応することが大切です。
・ 分散して貯蓄することにより将来への安心感が高くなる
・ マネーリテラシーを高めることができる
そして何よりも
これらが本当の目的です。
もしこれまで何となく貯金されていたなら、少しても参考にしていただき、貯金の3分散を実践していただければと思います。
これまでの貯金に対する考え方が変わるはずです。(執筆者:FP歴10年 冨岡 光)