今まで「相続」という言葉を身近に感じることはなかったかもしれません。
しかし、今まで元気だった人が突然この世を去ったり、終活という言葉を頻繁に耳にするようになると「相続について真剣に、そして具体的に考えなければならない」と思い始めます。
今回は、おうちで過ごす時間がたくさんある今だからこそ考えたい「自分の相続」についてお話ししましょう。
相続には「もらうとき」と「あげるとき」があります。
どちらにしてもトラブルを避けるためには平等に分けることが1番でしょう。
一般的に平等に分ける方法は「同じ量を分ける」と考えてしまいますが、相続には、同じ量ずつ分けても平等だとは言えないことがあるのです。
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目次
面積が同じでも土地の相続は平等だとは限らない
広い土地を持っている人が、3人に同じ面積ずつの相続をさせたとします。
面積が同じだと平等に分けたように感じますが、もらった土地の場所によっては「建物を建てられない」「安い価格でしか売却できない」ということがあるのです。
実は、すべての土地に家を建てられるわけではありません。
建物を建てられる土地には決まりがあります。
基本的には、建築基準法で定められた「道路」に面している土地でなければ建物を建てることはできません。
「広い土地に大きなお屋敷が建っていたけれど、土地を分けあって相続し、それぞれの家を建てる」と考えていても、道路に面していない土地を相続した人は新しい家を建てることができないのです。
もちろん、そのような土地を「売ってしまおう」と思っても売値は安くなってしまいます。
「分割」と「分筆」
土地を分けるときには「分割」と「分筆」の2種類があります。
「分割」は、ただ単にひとつの土地を分けるだけです。
一方の「分筆」は分けたことを登記します。3つに分筆すれば3つの土地になり、それぞれに持ち主がいるはずです。
不動産の相続にはさまざまな法律がからみあっているので、単純に物理的に土地を分けることは難しいことかもしれません。
ひとりが土地を相続し、他の相続人へはお金で支払う「代償分割」という方法もあります。
「平等に分ける方法」をたくさん知っておくことが本当に平等に分けるポイントになることでしょう。
相談は「本物の専門家」にしないと平等にならない
「相続は難しいから専門家に相談」という選択は正しいことだと言えます。しかし、「専門家の選び方」には注意が必要です。
最近の終活ブームでさまざまな専門家が登場しています。
相続には、お金だけではなく、税金や法律も複雑に絡み合っています。
たとえば、先にお話しした土地の「分筆」は土地家屋調査士などが専門家です。
税理士は税の専門家です。土地の分筆については税理士に相談するよりも、土地家屋調査士に相談したほうが的確な答えが返ってくることでしょう。
一方で、相続税については税理士が専門です。相続した時の相続税については税理士に相談します。
最近は「アドバイザー」や「サポーター」というネーミングで「あたかも専門家にみえる人」が増えています。
士業をしている人たちであっても相続のすべての相談に応じられる人は少なく、税理士が土地家屋調査士に相談することもよくあるそうです。
相談料やカウンセリング料を無駄に使わないためにも「本物の専門家」を選ぶことが平等な相続の大切なポイントです。
未成年や認知症の人に平等に相続するなら考えておきたいこと
相続人が全員成人で認知機能に問題がなければよいのですが、相続人の中に未成年や認知症の人がいるときには平等に分けることが難しくなる可能性があります。
未成年は自分で手続きもできません。認知症ならば、平等ではなくても反論できないかもしれません。
そのようなときには成年後見人制度を考えるのも1つの方法です。
成年後見人とは、本人のかわりにお金の管理や契約を行う人のことです。
成年後見人制度にはメリットもありますが、費用面などデメリットもあります。メリットとデメリットを知ったうえで制度を利用したほうが得なのかどうかを考えてみるとよいことでしょう。
財産の洗い出して「公正証書遺言」を作成する
「平等に分ける」ということは、客観的かつ冷静に考える必要があります。思い込みや感情が入ってしまうと思わぬ落とし穴に落ちてしまうかもしれません。
本当に平等に円満に分けるためには「遺言書」が効果的です。
時間がある今だからこそ、自分の財産の洗い出しを行い、相続人が誰で何人いるのか、そしてどのような方法であれば最も平等に分けられるのかを考えてみてはいかがでしょうか。
そして、考えたことは「公正証書遺言」にしておくとより確実です。
公証人役場では、相談を無料で行っています。公証人とは、弁護士や裁判官などの法律に関する仕事にたずさわってきた人たちですので、豊富な経験をもとにした的確なアドバイスをもらうことができます。
「公正証書遺言」をつくる際にはそれなりのお金(財産の金額によって異なる)がかかりますが、みんなが気持ちも平等になれるならば決して高いとはいえないのではないでしょうか。(執筆者:クリエイティブな節約家 式部 順子)