働き方の多様化に伴い、フリーランス(自営業者)の数も増えてきています。
昨今のコロナ禍の影響でフリーランスに転身した方も多いと聞きます。
フリーランスと会社員や公務員では入るべき保険に違いはあるのでしょうか。
今回はフリーランスが入るべき保険について解説したいと思います。
結論からですが、基本的にフリーランスだから特別に加入しないといけない保険というのはありません。
ですが公的保障が会社員や公務員と比較して薄いのは事実です。
会社員や公務員でも加入するべき保険の保障をより充実するべきなのがフリーランスだとご理解いただくとわかりやすいかと思います。
順番に解説していきます。

目次
加入するべき保険その1【死亡保険】
まず入るべき保険が死亡保障です。
こちらは会社員や公務員でも扶養家族がいれば加入しておくべき保険の筆頭格です。
フリーランスはより保障の大きな死亡保険に加入する必要があります。
その理由は遺族年金の額にあります。
会社員や公務員は万一時、遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方が受け取れる厚生年金に加入することになります。
毎月の給与から引かれている厚生年金保険料がそれにあたります。
対してフリーランスは国民年金に加入し、国民年金保険料を納めます。
厚生年金には加入できませんので、受け取れる遺族年金も遺族基礎年金のみになってしまいます。
その分、受け取れる金額も少なくなってしまうということです。
将来受け取れる老齢年金が少ないことは多くの方がご存じのところですが、万一時の遺族年金の金額も少なくなりますので注意が必要です。
具体的には子どもが1人の家庭の場合、
となります。
月額8万円で生活するのはどの家庭でも厳しいものがあるかと思います。
会社員や公務員の場合、収入にもよりますが月額13万円~15万円程度の遺族年金が受け取れることを考えると保障の薄さが浮き彫りになります。
保障の薄いフリーランスはより大きな死亡保険に加入しておくべきでしょう。
保険料は高くはなりますが、万一時のことを考えると悩むべきところではありません。
加入するべき保険その2【医療保険】
会社員や公務員が働けなくなってしまった場合「傷病手当」が支給されます。
給与の約3分の2の金額が最長1年6か月支給されるこの傷病手当、非常に手厚い制度です。
この傷病手当が支給されるため、ある程度の貯金があれば医療保険はいらないといった理論が成り立ちます。
ですがフリーランスにはこの傷病手当はありません。
働けなくて収入が得られなくなった場合の保障がないということになります。
医療保険に加入していれば入院中は給付金を受け取ることができます。
もちろん十分な金額ではないかと思いますが、全く収入がないよりはマシです。
自身が入院してしまうと収入が激減してしまう様な事業を行っている方は医療保険についても加入しておくべきだといえます。
金額についても入院費用を賄うだけでなく、収入の補填にする必要も出てくるので、会社員などと比較すると大きめの保障に加入しておくべきでしょう。
・ 入院一時金を付帯できる保険なら一時金10万円~20万円
は検討したいところです。
十分な預貯金の準備があり、多少の収入低下では困らない家庭については必須ではないかもしれませんが、そうでない方については加入しておくことをおすすめします。

加入するべき保険その3【がん保険(三大疾病保険)】
こちらも医療保険と同じ理由で加入しておくことをおすすめします。
通常の病気よりも治療期間が長引く可能性が高いのががん、心臓、脳といったいわゆる三大疾病です。
こちらに該当される場合は加入しておくことを強くおすすめします。
入院中は医療保険から給付金を受け取ることができますが、退院すると医療保険からの給付金は受け取れません。
抗がん剤治療などは基本的に通院でおこなうことが多いので医療保険のみでは対応できません。
治療費をしっかりと賄うことができる手厚いがん保険もしくは三大疾病保険に加入しておくべきでしょう。
加入するべき保険次点【就業不能保険】
最後に紹介するのが就業不能保険、働けなくなってしまった場合の保険です。
医療保険は入院中に給付金を受け取れる保険ですが、こちらの就業不能保険については入院の有無は問いません。
医者から「働けない」と診断された場合に給付金を受け取ることができます。
就業不能保険こそフリーランスにとって1番必要な保険だと思われる方もいるかもしれませんが、こちらは次点です。
理由としては
・ 精神疾患は対象外の保険が多い
・ 病気やけが入院の場合は医療保険などで対応可能
といったことが挙げられます。
要はまだまだ費用対効果の高い保険がないということです。
働けなくなる理由の大半は医療保険やがん保険などで対応可能なことが多いです。
「障害を負った場合は?」との質問も受けますが、フリーランスも障害認定は受けることが可能です。
もちろん心配な方は加入しておく方が良いですが、現在のところ「加入するべき」とまではいえません。
死亡、医療、がん保険を中心に手厚めに確保
フリーランスだからといって特別な保険に加入する必要はありません。
ですが公的保障が薄いのも事実なので会社員、公務員と比べて保障は手厚めに確保しておくべきでしょう。
特に1番困ってしまう死亡保険についてはより大きめに、十分な保障に加入しておくことをおすすめします。
公的保障が薄い分、社会保険料が安かったり、節税の方法が複数あったりとメリットもあるのがフリーランスです。
賢く支出を抑えてしっかりとした保険に加入し、将来のための準備をすることにより、公的保障の薄さをカバーすることも十分可能です。
本記事がフリーランスの保険選びの一助になれば幸いです。(執筆者:FP歴10年 冨岡 光)