2020年10月、米国次期大統領選でのバイデン候補の優位が鮮明になってきました。
私はバイデン銘柄といわれたクリーンエネルギーETFへの投資を開始しました。
ファーストトラスト社の「NASDAQクリーンエッジ・グリーンエネルギーETF(QCLN)」です。
同年11月の大統領選は、思惑どおりバイデン候補が当選しました。
それでは、NASDAQクリーンエッジ・グリーンエネルギーETF(QCLN)の成績はどうなったでしょうか。
目次
「NASDAQクリーンエッジ・グリーンエネルギーETF(QCLN)」とは
まずQCLNとはどんなETFか説明します。(*1)
QCLNは2007年2月に設定されたテーマ型のファンドで、「NASDAQクリーンエッジ・グリーンエネルギー指数」をベンチマークとしています。
投資対象分野
対象分野はつぎの図のとおりで(2021.5.21現在)、再生可能エネルギー機器、自動車、代替電気(Alternative Electricity)、半導体、化学薬品:多様化(Chemicals:Diversified)などです。

保有銘柄上位10社
保有銘柄は53社で、上位10社はつぎのとおりです。
EVの「テスラ」「ニオ」、再生可能エネルギー機器の「エンフェーズエナジー」「プラグパワー」、半導体の「オン・セミコンダクター」など名うての企業のオンパレードです。

純資産は23億5千万ドル、経費率は0.6%(いずれも2021.5.21現在)です。
自分は投資の天才か!

私がQCLNを買い始めたのは2020.10.13のこと。1株49.48$でした。
その後の上昇相場に乗って私も連日買い上がりましたが、2021年1月民主党が上院でも過半数を獲得すると、QCLNはチャートに窓をあけて高騰しました。
QCLNは1株5千円~6千円で購入できますので、少ない資金でもフットワークよく買い上がることができるのです。
そして2021.2.10ついに上場来高値90$をつけました。
購入開始後4か月で、60%を超える評価益を手にすることができたのです。
このとき「自分は投資の天才か!」と酔いしれたものです。
このあとバイデン政権によるインフラ整備計画が現実に動き出せば、ETFも2倍~3倍になるに違いないと確信しました。
ところがどうしたことでしょうか、このときをピークにQCLNは下落に転じたのです。
4月にバイデン政権は、8年間で220兆円をインフラ整備に投入するとの経済政策を発表しました。
しかしQCLNは下げ止まらず、足元(2021年5月中下旬)では55$~60$を低迷する体たらくです。

私はなにを間違えたのでしょうか。
今ふり返ると、そこには米国ETFへの思い込みがあったのです。
米国ETFへの思い込み
私の米国株投資は、バンガードS&P500ETF(VOO)からはじまりました。
米国ETFは多くの個別銘柄に分散投資されるので、価格変動が滑らかで長期に保有すれば損をするリスクは小さいと思い込んでいました。
ところがQCLNのようなテーマ型ETFは、事情が異なるようです。
「多くの銘柄に分散投資されている」という思い込み
つぎの表は、S&Pセクター指数に連動するセクター型ETFと特定のテーマ指数に連動するテーマ型ETFの代表例を取り上げ、保有銘柄数を比較したものです。
セクター型ETFは約300から400以上の銘柄に投資されていますが、テーマ型ETFは20から50程度の銘柄にとどまります。
QCLNの保有銘柄は45にすぎず、セクター型ETFに比べると分散効果は薄いものでした。

参照:バンガードETF;Teneo Partners株式会社
「値動きが滑らかで安定している」との思い込み
保有銘柄数が少ないだけではありません。
QCLNを構成する上位10銘柄をみると、値動きの激しい暴れ馬ばかりです。
事例としてEVの「テスラ(TSL)」と太陽光発電関連の「エンフェーズエナジー(ENPH)」のチャートを掲載します。
また比較のため、投資運用会社「バークシャーハサウェイ(BRK-B)」のチャートを並べました。
3つのチャートをじっくり眺めてください。
テスラとエンフェーズエナジーのチャートは、怒った龍のように波打ち、1日の値幅が大きく、時に長いヒゲを引いて落ち着きがありません。
一方バークシャーハサウェイのチャートは滑らかで安定しています。
米国株式市場は値幅制限がありませんので、1日に10%~15%動くことがよくあります。
個別銘柄に比べるとETFの値動きはおとなしいと思い込んでいましたが、とんでもない勘違いでした。
値動きの激しい銘柄が集まっているETFは、価格の振れが大きいのです。



「米国経済は世界最強である」との思い込み
QCLNへの投資をはじめたとき、私の頭には「米国経済は世界最強だから、米国ETFに投資すれば間違いない」という思い込みがありました。
ところがQCLNの投資対象分野は、「EV」「再生可能エネルギー機器」「半導体」が中心です。
これらの分野について、世界の企業ランキング上位10社はつぎの表のとおりです。
米国は半導体でこそ存在感を示しているものの、EVは欧州勢と中国が強く、再生可能エネルギーの代表格である太陽光パネルは中国が世界を席巻しています。
米国経済は総体として世界最強であることは間違いありませんが、すべての分野でヘゲモニーを握っているわけではなく、米国ETFであればなんでもOKではなかったのです。

方針を明確にすべき
ということで、ひと口に米国ETFといっても内容はさまざまです。
テーマ型ETFは内容をよく吟味し、長期に保有するのか適宜売り買いするのか方針を明確にすべきでした。
QCLNは、保有銘柄数が限定的で分散効果は薄く、構成する個別銘柄の特徴を反映して値動きが激しく、対象分野は必ずしも米国が覇権を握る産業ではありません。
最初から長期保有と決めつけず、機動的に売買すべきだったのです。
私は完全に売り時を逃しましたが、このまま持ち続けるか売却するか迷うところです。
はたしてバイデン銘柄QCLNの末路はどうなることでしょうか。(執筆者:根元 直角)