資産形成の1つの方法として株式投資があります。
コロナ禍においても日経平均が3万円を突破するなど、株高のニュースを耳にされた方も多いのではないでしょうか。
最近では日経株価も落ち着いているものの、この株高の影響なのか株式投資に関する情報を聞く機会も増えました。
株式投資も資産形成の立派な手段です。
全く否定するつもりはないですし、うまく行えば資産増大も見込めます。
ですが「なるべく早く大きく資産を増やしたい」と考える人が手を出す株式の短期売買、いわゆる株式トレードについては正直おすすめできません。
今回は株式トレードがおすすめできない理由と、結局はコツコツ積立投資が近道であるということついて解説したいと思います。

目次
株式トレードで長期的に利益を得ることができる人はほんのひと握り
まずお伝えしたいことが、株式トレードにおいて利益を出し続けられる人はほんのひと握りであるということです。
市場参加者(株式短期売買をしている人)のほどんとは2年以内に退場(資産が枯渇し株式トレードを続けられなくなる)すると言われています。
早い人では1年以内に借金を抱えることになってしまう人もいるくらいです。
信用取引(実際に証券口座に入金している金額の約3倍の資金で取引ができる制度)を使わない限りは資産がマイナスになって借金を抱えることはありません。
しかし、短期間で利益を出そうと考える人の多くがこの信用取引で大損してしまう傾向にあります。
いわゆる身の丈に合っていない投資ということになります。
まさしく弱肉強食の世界であり「たった数日で資産が倍になりました!」なんて甘い話に乗ってしまうことがいかに危険であるか。
数回のトレードで仮に利益が出せたとしてもそれを続けることは至難の技です。
日々取引時間中に株価を確認できる人ならまだしも、仕事をしながらの株式トレードは危険です。
短期トレーダーに好まれる値動きの激しい銘柄は常に価格が変動しています。
・ しばらくしたら戻るだろうと思っているとさらに下落
・ 数日放置しただけで資産が大きくマイナスに
なんてことはザラにあります。
どんな仕事でもすぐに完璧にこなせる人はいないと思います。
地道な努力を重ねて1人前になる。
投資の世界でも同じです。
始めてすぐに利益が出せるなんて都合の良いことはありません。
ましてや弱肉強食の株式トレードの世界で「ながら投資」ではまず勝てません。

株価は業績で動くのではなく、需給で動く
「業績が良い会社の株価は上がる」というのは半分本当で半分うそです。
確かに長期的には業績の安定している会社の株価は上がる傾向にありますが、短期的には全く逆のことも多々あります。
「今回の好決算は既に株価に織り込み済みのため材料出尽くしで大きく売られました」
株式投資をしている人なら頻繁に聞くフレーズのはずです。
逆に決算が悪かったとしても大きく上がる銘柄もあります。
理由は後からなんとでも説明することができるのが株式の世界です。
本当に決算、業績が良ければ株価が上がるならそんな簡単な話はありませんし、全員が勝ててしまいます。
ですがそんなことはありません。
なぜならば株価は業績で動くのではなく、需給で動くからです。
ある会社の株を欲しい人が多ければ株価は上がりますし、逆に欲しい人が少なければ株価は下がります。
ある意味人気投票のようなものです。
そしてこの受給のバランスを操っているのが機関投資家などのいわゆる「大口」と言われる人たちです。
簡単にいうと資金数百万円から数千万円程度の普通の個人投資家以外の投資家がこれにあたります。
大口投資家の特徴はなんといってもその資金量にあります。
数百万円や多くても数千万円程度の資金しか保有していない個人投資家とはわけが違います。
株価は買いたい人と売りたい人のバランスで動くので、多くの資金を投入し、株を買うことで株価を上げることが可能です。
大口投資家が大量に買い注文を出すと急激に株価は上がります。
急激に上がった株価に反応し、個人投資家が遅れまいと買い注文を出します。
さらに上がるので個人投資家がこれに続いて買い注文を出しさらに株価が上がります。
ある程度上がったところで大口投資家が大量の売り注文を出して利益を確定させます。
「途中で買った個人投資家が気づいた時には買値よりも安くなっていた。」
かなり簡略化しましたがこんなことが日常茶飯事なのが短期トレードの世界です。
短期トレードで勝ち続ける方法はたった1つ。
ことのみです。
ですがその動きを読むことも非常に難しく、一朝一夕でできることではありません。
多少トレードの勉強をしただけでこの世界に足を踏み入れることはおすすめできません。
コツコツ積立投資が1番の近道
ここまで短期トレードで勝ち続けることがいかに困難であるかを解説してきました。
株価を操作している大口投資家についていくしか方法はなく、その動きを読むことも至難の業です。
これが理由です。
では時間軸をずらして長期投資なら可能性はあるのか。
これならあります。
数年から十数年の単位で成長していく企業の株を買えば、長期的には利益を出すことも可能でしょう。
ですがここにも大きなリスクがあります。
ある会社の株を買うということは、その会社に運命を託すことになります。
万が一倒産してしまった場合は資産はゼロとなってしまいます。
大企業でも倒産してしまう今の時代、今後何があるかわかりません。
そこで有効な選択肢となるのが投資信託やETFといったいわゆる「会社の寄せ集めパック」です。
例えば日経平均連動方の投資信託を購入した場合、ある一つの会社の株価が暴落しても影響は少なくなります。
1つの会社に賭けるのではなく、日経平均なら日本の上場企業225社に賭けることになりますので自然とそのリスクは小さくなります。
これが銘柄分散です。
これに時間分散をかけるとよりリスクは下がります。
あるタイミングで1度に購入すると、その時点から価格が下がってしまった時点でマイナスです。
将来の価格がどう動くかは誰にもわかりません。
上がっても下がっても良いようにするのが時間分散、いわゆる積立投資(毎月積立など)です。
こうすることにより購入価格を平均化することができるのでリスク軽減につながります。
購入するタイミングを図る必要もありませんので「ながら投資」でも全く問題ありません。
短期トレードで大きく資産を増やそうとしても大口投資家の餌食になってしまいます。
大切な資産がマイナスになってしまっては元も子もありません。
少なくとも年単位で
積立投資で利益が出るには確かに時間はかかります。
少なくとも年単位で見ていただく必要があります。
ですが資産を着実に増やしていくにはその方法が一番です。
「急がば回れ」ではないですが、株式トレードにはギャンブルに近い性質があります。
時間をかけて積立していく投資方法が結局のところ1番の近道だと考えます。
夢を見ることも大事ですが、こと資産形成については一歩一歩着実に進む道を選ばれることをおすすめします。(執筆者:FP歴10年 冨岡 光)