つみたてNISAやiDeCoなど、積立投資を実践されている多くの方が投資している米国の人気株価指数S&P500ですが、今年に入ってから大きく下落、今でこそ回復基調にあるようにも見えますがまだ不安定な動きのままです。
多くの書籍やインフルエンサーがS&P500を勧めていただけあって、日本人にも大人気な指数となっています。
今年になってから投資を始めた方にとっては
「下がる時もあるとは聞いていたけどこんなに下がるなんて」
「全然最強じゃない」
「もっと安定的なものにしておけばよかった」
といったような不安を感じるのも無理はありません。
昨年までは絶好調だったS&P500ですが、今年に入ってからは下落局面入りし、6月中旬には年初からマイナス20%超を記録するなどこれまでの好調が嘘のような動きになってしまっています。
このままS&P500に投資し続けても良いの?
これから回復していくの?
今から始めるなら投資しないほうが良いの?
特に初心者ほどたくさんの疑問をお持ちでしょう。
目次
主な下落要因は米国CPIの急上昇
S&P500が大きく下落した主な要因として米国のCPI(消費者物価指数)の急上昇があげられます。
消費者物価指数とはその名の通り物価がどのくらい上がっているか、下がっているかを示す指標になります。
2020年や2021年前半頃は1%から2%程度で動いたのですが、後半からどんどん上昇し、2022年に入ってその上昇幅が大きくなりました。
2022年6月のCPIは9.1%の上昇となり、約40年ぶりのインフレ(物価上昇)となってしまっています。
経済の安定成長の目安とされているインフレ率が2%程度ですので、9.1%という数字がいかに急激なインフレなのかということを表していることになります。
直近で発表された日本のインフレ率が2%となり、さまざまなところで物価上昇が取り上げられています。
スーパーなどで値上げを実感されている方も多いでしょう。
2%程度でもこの騒がれようです。
米国では日本の約4倍以上のインフレが起きているということになりますので、経済に与える負の影響は想像に難くないでしょう。
インフレを抑えるためには利上げが必要
急激なインフレは経済成長のマイナス要因となります。
なんとかして物価を安定させなければなりません。
そのための対策をとるのが各国の中央銀行です。
日本の日銀にあたる米国の中央銀行がFRBです。
FRBの至上命題の一つに物価の安定があります。
物価を安定させるために利上げを行い、お金を借りづらくする方法があります。
利上げを行うことによって借金の金利が上がりますので、住宅ローンや自動車ローンも高くなりますし、企業の観点からも融資を受けづらくなります。
必然的に経済活動が落ち着きを見せ、インフレも収まっていくというのが通常の流れです。
インフレ退治には利上げを行うというのが基本路線となります。
急激な利上げは株価にとって向かい風となる
FRBもこれまでにないペースで利上げを行なっています。
急激なインフレも問題ですが、急激な利上げも問題です。
利上げはインフレを抑えることにつながりますが、経済を弱めることにもつながります。
経済を弱めるということは企業収益も減退することになります。
つまり利上げは株安にもつながることから今後の株安を懸念する声も多くあり、先行きは楽観視できません。
米国の経済が停滞することを予想している専門家も多数いるので、いわゆるリセッション(景気後退)入りすれば数年単位で株価の上昇は期待できないかもしれません。
CPIが落ち着けばS&P500も上昇する?
今後のS&P500の動きを占うための着目ポイントは米国CPIです。
CPIが2%~3%程度になると利上げも落ち着きを見せ、経済も安定すると考えられているからです。
つまりS&P500の動きはインフレ次第ということになります。
理想的シナリオとしてはこのままCPIが天井をつけ、なだらかに下落、経済が落ち着きを見せると共に利上げペースも鈍化、利下げに転じて株価上昇という形でしょう。
ですが市場が急激なインフレや利上げに耐えきれず、リセッション入りしてしまうとそれこそ長期的な株安が続く局面が訪れるかもしれません。
いずれにせよこれからのCPIから目が離せないということになります。
長期積立投資にタイミングは不要
株価指数が20%以上下落することは珍しいことで、今はその難しい局面にいます。
多くの投資初心者が不安に思うのも無理はないでしょう。
ですがS&P500をはじめとした米国株式はこれまで幾度となく下落、暴落局面を乗り換え、高値を更新してきました。
既に投資をされている方は今回の下落局面を仕込み期と捉え、投資を継続されることをおすすめします。
下落局面を実際に学べるいいタイミングだと前向きに捉えるべきでしょう。
これから投資しようと考えている方にとっても安値から始める絶好のタイミングともいえるでしょう。
高い時より安い時の方が心理的に始めやすいものです。
いずれにせよ長い歴史から見ると今回の下落も単なる一時の安値となるのではないでしょうか。
そう捉えて投資を継続することが将来の利益につながると考えます。(執筆者:FP技能士2級、証券外務員1種 冨岡 光)