病気や怪我で働くことが難しくなった場合には、いくつかの給付金制度があります。
例えば複数の給付を受給できる権利が発生した場合、それらを併給(同時に両方もらう)できるのかという問題も生じます。
今回は、このような場合の併給について解説します。
目次
病気や怪我で働けなくなった場合の給付金制度
病気や怪我で働けなくなった場合の給付金制度を3つご紹介します。
1. 傷病手当金
1つは傷病手当金です。
これは健康保険に加入している方に対して、病気や怪我で継続して3日以上働けない状態となった場合、4日目から給付されます。
万が一そのまま退職となった場合でも、
- 1年以上健康保険に加入していたこと
- 退職時に出勤をせず、傷病手当金を受給でき得る状態であったこと
という要件を満たすことで、1年6か月受給可能です。
受給額は標準報酬日額(給与の日額相当)の約67%で、非課税となります。
2. 失業保険
2つ目は失業保険です。
前提として、働く意思と能力があって再就職活動をする間の給付制度ですので、そもそも入院中で働く意思はあっても再就職活動が不可能といった状況下では受給ができません。
失業保険の制度の中には「傷病手当」といい、ハローワークに求職の申し込みをした後に病気や怪我などで継続して15日以上働くことができない場合、失業保険に代わって給付を受ける制度があります。
受け取れる額は原則として失業保険と同じで、非課税となります。
3. 障害年金
3つ目は障害年金です。
この3つの中では最も申請に時間と労力もかかりますが、最大のメリットは「年金」として継続的に受給できることです。
もちろん、1度受給が決定したら一生涯受給できるというわけではなく、障害の等級によっては更新もあり、審査の結果支給が停止されるケースもありますが、3つの中では長く、そして金額も多くなるのが特徴です。
傷病手当金と失業保険
傷病手当金と失業保険は、併給できません。
なぜなら、
- 前者は病気や怪我で働けない方が対象となる給付制度であるのに対し、
- 後者は働く意思や能力があるにも関わらず働くことができない方に対しての給付制度
であるため、前提条件がそろっていないということです。
また、失業保険に代わって給付される場合がある「傷病手当」も、傷病手当金が給付される日については給付対象外となります。
傷病手当金と障害年金
傷病手当金と障害年金は原因となった病気や怪我が同一の場合、併給できません。
言い換えると、重複している部分が調整されるという意味です。
具体的には、両方を日額に換算して障害年金よりも傷病手当金の方が高い場合、差額が傷病手当金としてもらえることとなります。
ただし、病気や怪我の原因が異なる場合は調整されません。
障害年金と失業保険
障害年金と失業保険は併給可能です。
言い換えると、全く調整されずに同時に満額受給できるということです。
しかし、失業保険は「働く意思や能力があるにも関わらず、働くことができない方に対しての給付制度」という仕組み上、障害年金を受けられるような場合、そもそも失業保険をもらえる状態には位置しないのではないかという話にもなります。
ここで、障害年金の中の障害等級「3級」について考え方を確認しましょう。
端的には
「労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」
とされています。
例えばフルタイムでの就労は難しいが、週40時間勤務の正社員の半分である週に20時間程度のパートであれば働けるということであっても、「働ける能力はある」とされます。
そして、障害年金は「働ける場合、年金はもらえない」ということにはなりませんので、安易に決めつけずに受給ができないかを模索してみましょう。
障害年金と失業保険を同時にもらえるケースがある
全く働けないという診断が出ている状況下で、失業保険を受給するのは不正受給となりますが、ある程度の配慮を受けながらであれば就労可能という場合、障害年金と失業保険を同時にもらうことができる場合もあります。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)