昨年末の日銀総裁発言から金利について報道やネット記事などで多く取り上げられています年が明けて現在(2032年3月現在)も引き続き
「金利は上がるのか?」
「上がったらどうなるのか?」
と言った内容が目立ちます。
日々の仕事で住宅ローンに携わっていますが、銀行員として金利の予想はできません。
銀行員として個人的に持っている見解そして銀行員としてのこれまでの経験から住宅ローンの変動金利が今すぐ上がるようなことはないと思っています。
今回は、
・現在、変動金利は上昇しているのか
・これから金利は上がるのか
について解説します。
実際に現場で住宅ローンに携わる銀行員で、自分自身も変動金利で住宅ローンを借りている私の考えを紹介します。
目次
現在、変動金利は上昇しているのか
昨年末から現在まで、金利が心配で報道やネット記事を見ている人は「住宅ローン金利が上昇」と見聞きしたことがあると思います。
住宅ローンの変動金利はすでに上昇しているのでしょうか?
「新規」の「固定金利」の「店頭金利」だけが上昇している
「住宅ローン金利が上昇」とは、新規の固定金利の店頭金利だけが上昇しているという表現が的確だと考えます。
新規とは文字通りこれから借りる人に適用される金利です。
そして固定金利とは文字通りの固定金利で、2年・3年・5年・10年といった一定期間は金利が固定される種類、そして基準金利とは「銀行が値引きする前の定価の金利」という意味になります。
例えばメガバンクの三井住友銀行の場合、2022年の12月に 固定金利10年の店頭金利は年3.53%でしたが、翌月2023年1月の固定金利10年の店頭金利は年3.79%となり、確かに+0.26パーセント金利は上昇しました。
「店頭金利(店頭表示金利・店舗表示金利・基準金利)」という言葉ですが、住宅ローンでは申し込んだ人の年収や勤務先といった属性に応じて店頭金利から金利を割り引いて実際の金利として適用(優遇)します。
住宅ローンでは、店頭金利はあくまで値引き前の定価であり、実際にはもっと低い優遇金利が適用されるのです。
同じ時期の優遇金利はどうでしょう?
三井住友銀行では「10年固定金利・最低水準年1.19%~」となっていて、店頭金利より2.60%優遇された金利になっています。
実際の優遇金利は、申し込む人によってまちまちなので一概に言えませんが、店頭金利という定価は上がっても、優遇金利という実際に適用される金利はほぼ動いていないというのが妥当な表現になるでしょう 。
変動金利は今のところ「動きなし」
変動金利はこれから借りる新規の人も今返済中の人も金利に変更はなく「変動金利は今のところ動きなし」と言えます。
新規ですが、メガバンクで見てみると(店頭金利・ほ保証料外枠方式)
りそな銀行: 年2.475%
三井住友銀行:年2.475%
各銀行とも横並び、かつ今のところ動きはない状態です。
今返済している住宅ローンの変動金利ですが、こちらも2022年の年末から現在に至るまで、権利に関する動きはありません。
各銀行のホームページを見ても、住宅ローンの変動金利に関するお知らせなどがないことから分かります。
私自身銀行から変動金利で住宅ローンを借りていますが、昨年末から今に至るまで金に関するお知らせは来ていませんし、返済額もこれまで通りで何の変化もありません。
参照:
三井住友銀行/住宅ローン 金利水準推移(新規)/変動金利型・固定金利特約型の金利水準推移/固定金利特約期間10年(保証料外枠方式)
三井住友銀行/住宅ローン(新規)/金利情報(新規)/WEB申込専用住宅ローンの金利/固定金利特約期間10年(保証料外枠方式)
三菱UFJ銀行/住宅ローン/ローン金利/変動金利
りそな銀行/ローン金利/住宅ローン店舗表示金利
「変動金利は動きなし」だから安心とは言えません
今のところ変動金利に動きはありませんが、今後も変動金利が上昇しないとは言えません。
変動金利はあくまで変動であり、変動金利で住宅ローンを返済していく人は金利変動リスクを理解した上で付き合っていくことが必要です。
これから金利は上がるのか
銀行員として肌で感じているのは「変動金利は上がるかもしれないが、すぐに、そして急激に上昇するようなことはないだろう」というものです。
そう感じるには、いくつかの理由があります。
理由1:今までの動きで考える
住宅ローン金利以外にも言えることですが、将来のことを考える時には一度過去を振り返ってみるのが有効な手段です。
ここで、住宅ローンの変動金利がどのように推移してきたかを見てみましょう。
- 1980年代(いわゆるバブル期)は年8.9%と高水準
- 1991年のバブル崩壊で金利は年2%台まで低下
- その後も若干の上下動はあったが平均して年2.475%台で現在まで推移
ここ30年にわたる住宅ローン変動金利の動きをざっと説明したものです。
バブル景気と言う時代が、通常ならありえない(だからバブル)好景気だったということを考えると、バブル崩壊で8%台から2%まで急降下したのも、通常では考えられない動きだと言えます。
その一方で、バブル崩壊から現在に至るまでほぼ同水準で推移してきたわけですが、その間の上下動もいきなり数日とか数か月ではなく、1年・2年といったある程度の時間で僅かに動いてきた、というのがこれまでの傾向です。
過去がそうだからといって、 これからの変動金利を結論付けられませんが、過去の動きから急速に、そして急上昇することはないだろうと銀行員は考えています。
理由2:銀行では変動金利について「無風」
これは確実に言えることですが、今のところ銀行では変動金利について「無風」です。
ここで言う無風とは、何の動きもないという意味ですが、昨年末から2023年3月現在まで、勤務している銀行からは変動金利に関して何の変更を情報もありませんし、また変動金利に関する指示も一切ありません。
住宅ローン金利などに何かしら動きがある時には、 上層部から私たち現場の職員に対して指示や命令が来るものです。
例えば仮に、 今返済している人たちの住宅ローン変動金利を引き上げるような決定を銀行がしたなら、勤務してる銀行員には必ず伝わります。
金利引き下げと言う、当事者にとってはマイナスとなる情報なら慎重かつ迅速に公表するべきですが、そうした動きもありません。
今のところ銀行では変動金利を引き上げる動きがないので、とりあえず安心してくださいとは胸を張って言えます。
住宅ローンの変動金利が急速に急上昇することはないと、銀行員は肌で感じている
今のところ住宅ローン変動金利に関して銀行は「無風」状態
実際に銀行の現場で、金利に不安を抱えるお客さまから相談を受けた時に、銀行員の私がお答えしている内容でもあります。
金利に関する予想や、社会経済全体を見渡した高所な理論ではありませんが、現場で住宅ローンに携わっている者として、伝えられることです。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)