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住宅ローン審査で銀行が何を重視しているか? 公的データから見えてくるポイントを銀行員が解説

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住宅ローン審査で銀行が何を重視しているか? 公的データから見えてくるポイントを銀行員が解説

「スタートアップ企業の従業員向け住宅ローンを銀行が発表」

このニュースに、銀行員の私は「なるほど、たしかにこの銀行は良いところに目をつけたなあ」と普通に納得しました。

スタートアップ企業や小規模な会社に勤務している人は住宅ローン審査に通りにくい傾向にあったが、そう言った人でも前向きに審査する住宅ローンの取り扱いを始めた銀行があるという内容です。

しかし、

「銀行員でない人は、住宅ローンの審査の中身を、どこまで知っているのだろう?」

という疑問がわいたので今回は、住宅ローンの審査について、公的な調査データを用いて銀行員が解説していきます。

住宅ローンの審査

公的データで見る「住宅ローン審査で重視するポイント」

国土交通省が約1,400の民間金融機関に対し、住宅ローンの取扱いについて調査した資料で、住宅ローンの動向から推移、審査の内容まで踏み込んだデータです。

銀行などの金融機関や不動産業界で、住宅ローンの動向を掴む資料として活用されています。

【一覧表で昔と今を比較】審査で重視するポイントの変化

同形式のデータとして、

  • 平成18年(2006年)
  • 平成25年(2012年)
  • 令和元年(2019年)

の3つで比較してみました。

カッコ( )内の数字は有効回答に占める割合で、高いほど審査で重視する優先順位が高いことを示していると言えます。

審査で重視する順位平成18年(2006年)平成25年(2012年)令和元年(2019年)
1位完済時年齢(99.4%完済時年齢(99.1%)完済時年齢(99.0%)
2位借入時年齢(98.0%)借入時年齢(97.5%)健康状態(98.5%
3位*返済負担率(97.7%)返済負担率(97.2%)担保評価(98.2%
4位勤続年数(96.6%)勤続年数(96.5%)借入時年齢(98.2%
5位年収(96.1%)担保評価(96.2%年収(95.7%)
6位担保評価額(93.2%)年収(96.2%勤続年数(95.6%)
7位カードローン等の他の債務の状況や返済履歴(83.4%)健康状態(94.8%連帯保証(94.2%)
8位*申込人との取引状況(69.0%)*融資可能額(融資率)①購入の場合(92.2%金融機関の営業エリア外(90.6%)
9位*金融機関の営業エリア外(65.2%)融資可能額(融資率)②借換えの場合(91.6%返済負担率(89.2%)
10位健康状態(64.7%)*連帯保証(90.7%融資可能額(融資率)①購入の場合(77.1%)

参照:国土交通省住宅局
民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書(平成18年度)pdf
民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書(平成25年度)pdf
民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書(令和元年度)pdf


【*注釈】
「返済負担率」:一般に「返済比率」と呼ばれ、新規で借りる住宅ローンと、その他利用中の借入返済が年収に占め返済比率のこと

「申込人との取引状況:住宅ローンを申し込んだ金融機関で預金やその他のサービス、家族取引も含めた取引状況のことで、銀行側は「総合取引」「メイン化」などと呼び、取引状況が良好なほど審査にはプラスになる場合がある

「金融機関の営業エリア外」:金融機関には営業基盤のある地域が限定されている(メガバンクなら全国、地方銀行なら本店がある県内と県外の支店周辺、信用金庫・信用組合は市町村単位の営業基盤など)、また各金融機関も支店・営業所周辺がそれぞれの「営業エリア」であり、そこから離れた申し込み(例・千葉県の地銀に愛知県のマンション購入を申し込む、メガバンクの東京都内支店に北海道の一戸建て申し込みなど)は資金使途など、審査で注意を要するため

「融資可能額(融資率)」:住宅ローン審査における考え方の1つで、申込者の年収・勤続年数・担保評価などの個人データ(「属性」と呼ぶ)から、「その人にいくらまで奈良融資可能か?」を数値化して計算するもの。「融資倍率」などとも呼ばれ「年収の5倍までゆう牛可能⇒年収500万円なら5倍の2,500万円まで融資可能」「担保評価額の200%まで⇒担保評価額が5千万円なら1億円まで融資可能」などと使われる。金融機関内部で用いられる尺度で、原則として非公開

「連帯保証」:住宅ローンの借り方の変化を表すもの
2,000万円の一戸建て購入のローンなら
例1.<ペアローン>1人が1,000万円、もう一人が1,000万円をそれぞれ借りて2,000万円の
物件を購入 それぞれが相手の連帯保証人になる
例2.<連帯債務>借入は2,000万円のローンで、2人が平等に債務者(連帯債務者)となる
連帯保証人は原則不要だが、返済義務も平等に背負うので、実質的にそれぞれが相手の連帯保証人になっていることと同じ

重要ポイントのランキング(1位~5位)で見る住宅ローン審査の変化

ランキングをもとに、重視されるポイントと、順位の変動について説明していきます。

年齢(完済時年齢、借入時年齢)

年齢は2つでまとめてみました。

  • 借入時年齢
  • 完済時年齢

住宅ローンのルールでは完済時(最終回返済でローンを返し終わった時点という意味)の年齢と借入時の年齢があらかじめ決められているのですが、審査ではそこを重視しているということです。

具体的な年齢については「商品概要」「お申込できる方」などを見るとわかりますが、以前(平成18年当時・筆者調べ)は一般に「借入時年齢は満20歳以上満60歳未満・完済時年齢は満76歳未満」となっていました。

それが現在では「借入時年齢は満20歳以上満70歳未満・完済時年齢は満80歳未満」(りそな銀行の場合【参考②】)などと変化しています。

借入時年齢

「借入時満20歳以上」というのは、大部分の金融機関とも共通して以前より変わらない部分ですが、一部の金融機関では「借入時満18歳以上」(三菱UFJ銀行【参考③】)などとなっており、これは成人年齢引き下げに対応していると考えられます。

ただし現実に18歳で住宅ローン申し込みをする人がいるか?という問題があります。

私は18歳~20歳の人から住宅ローン申し込みを受けたことはありません。

そして「借入時満◯歳未満」という借入申込可能な年齢の上限は、団体信用生命保険にも関係しています。

完済時年齢

借入時の年齢上限とともに、完済時年齢は団体信用生命保険の変化と関連しています。

団体信用生命保険とは、住宅ローンを借りる人が加入して、死亡や高度障害など一定の上程になると、その時点の住宅ローン残額相当の保険金が支払われて、住宅ローンが完済されるというもので、

「住宅ローンを借りている本人が死亡したら、生命保険でローンがチャラになる」

という仕組みです。

団体信用生命保険には一般的な団体信用生命保険と、がんや特定の病気に特化した「◯大疾病(◯内は数字)団信」や、病歴や持病などがある人でも加入できる可能性がある引受条件緩和型の「ワイド団信」などがあり、一般的な団信以外は特約が付くことに対し、加入や最終時の年齢が一般的な団信とは違うケースがあり、また住宅ローン金利も上乗せされるのが一般的です。

団体信用生命保険の加入には年齢制限がありますが、住宅ローンを保険でカバーするのが目的なので、その年齢と住宅ローンに関する年齢はリンクしているのです。

たとえばソニー銀行の公式サイトを見てみると、申込時年齢の条件は

  • ソニー銀行に円普通預金口座を持っている
  • 申し込み時のご年齢が満20歳以上、借り入れ時満65歳未満で、完済時満85歳未満(ワイド団信の場合は満81歳未満)

団体信用生命保険は、

保障(加入)プラン比較一覧
加入時年齢 満65歳未満
完済時年齢 満85歳未満 ※ワイド団信は満81歳未満

となっています。

参照:

【参考②】りそな銀行/住宅ローン商品概要説明書(pdf)
【参考③】三菱UFJ銀行/住宅ローン商品説明書(pdf)
【参考④】ソニー銀行/住宅ローン商品詳細説明書ソニー銀行/団体信用生命保険(団信)

住宅ローン借入時(借入時に団体信用生命保険に加入)と完済時(完済まで団体信用生命保険に加入できていれば保険でカバーされていることになる)の年齢は密接に結びついていることがわかります。

団体信用生命保険は生命保険会社が取り扱う生命保険商品なので、その内容説明や公表方法は慎重を要するため、銀行の公式サイトなどでは具体的に説明がない場合もありますが、基本的にはソニー銀行のように住宅ローンの年齢は団体信用生命保険の年齢とリンクしていると考えていいでしょう。

完済時年齢と借入時年齢は一覧表で平成18年、平成25年で全く同じワンツーフィニッシュです。

令和元年度に借入時年齢がランクダウンしていますが、それは借入時のことよりも「何歳まで保険でカバーされるのか?」を重視したというだけ(借入時年齢もランクダウンとはいえ4位と引き続き重要)なのと、他に重視されるポイントが「赤マル急上昇」してきたからです。

健康状態

こちらも団体信用生命保険の変化なのですが、異次元の金融緩和などで長いあいだ低金利の状態が続き、金利競争も限界に達した金融機関では住宅ローンを獲得するために団体信用生命保険の商品性で差別化を諮るようになってきました。

「◯大疾病」と特定の病気をカバーする保険も「3大」「5大」にとどまらず「7」「8」「11大疾病保障」などの団信も登場しています。

ワイド団信も含めこういった特別な団信(「付加価値型団信」「ハイブリッド団信」)では、保障内容が特別に手厚くなっているぶん、健康状態はより厳しく見られるのが一般的なのです。

そのため住宅ローンを団信で差別化して獲得したい金融機関では、住宅ローンを申込む人が「元気か?病気はないか?」と健康状態を気にするようになったと考えられます。

一覧表でも10位→7位→2位と、まさに赤マル急上昇なことがわかります。

住宅ローンの審査も状況にあわせて、重視するポイントが変化することを知っておくと、通りやすくなる手段も見つけられるかもしれません。

「銀行が今、何を重要視してるか」という情報収集も大切です。

《加藤 隆二》
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加藤 隆二

執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二 加藤 隆二

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。 寄稿者にメッセージを送る

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