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日常を支える「半導体」を巡った世界の争い 日本の立場と、これからを考える

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日常を支える「半導体」を巡った世界の争い 日本の立場と、これからを考える

工業系に詳しくない方だと、半導体が何か想像しにくいかも知れません。

平べったいパネルに細かい穴が開けられ、そこにたくさんの金属が備え付けられたような姿をしています。

スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコン、冷蔵庫や洗濯機、自家用車などの中にこの半導体が組み込まれ、心臓的な役割を担っているのです。

半導体がないとスマートフォンやノートパソコン、冷蔵庫は作動せず、アプリの使用、テレワークもできません。

自給自足の生活をしている人を除き、ほぼ100%の日本人には半導体は欠かせないになっていると言えるでしょう。

半導体市場

世界の半導体市場が荒れてる

半導体市場で健全な取引が継続されれば、安心して半導体が使われているスマートフォンや冷蔵庫を買え、半導体市場で貿易摩擦が拡大していれば、真夏の中エアコンを買おうとしても、


「品切れです」

「半導体不足でエアコンの製造が遅れています」


といった場面に遭遇することが考えられます。

なぜ半導体市場が荒れるのか

米中の対立が続くなか、中国は7月、国家の安全と利益を守るためとの理由で、希少金属であるガリウムとゲルマニウムの輸出規制を敷くと発表しました。

ガリウムとゲルマニウムは半導体の材料として使われ、スマートフォンの顔認証に使っている面発光レーザーや液晶テレビのバックライトなどの白色発光ダイオードにも欠かせないもので、実はガリウムの世界生産の9割を中国が占めています。

日本は輸入するガリウムを中国にほぼ全部依存しており、現在日本の半導体関連企業の間ではビジネスに影響が出ると懸念の声が強まっています。

規制について、中国は特定の国を標的としたものではないと説明していますが、その背景には米国が主導する中国への半導体輸出禁止があります。

現在、半導体の中でも米中など大国は「先端半導体」と呼ばれる半導体の最新版を如何に獲得するかを競っています

軍の近代化、軍備のハイテク化を押し進める中国にとって、先端半導体は死活的に重要な戦略物資なのですが、今日中国はその分野で米国や台湾などに後れを取っています。

先端半導体は人工知能AIやスーパーコンピューター、ハイテク兵器の開発に欠かせない重要物資で、世界で獲得競争が激化しています。

日本の立場

先端半導体が中国によって軍事転用される恐れを警戒するバイデン政権は昨年10月、先端半導体の製造装置や技術における対中輸出規制を発表しました。

しかし、それだけでは中国への流入が防げないと判断した米国は今年1月、先端半導体の製造装置で高い世界シェアを持つ日本とオランダに対して同調するよう圧力を掛けました。

オランダが先行する形で足並みを揃えることを発表し、日本も3月、繊細な回路パターンを基板に記録する露光装置、洗浄・検査に用いる装備など23品目で対中輸出規制を敷くことを決定し、7月下旬から実行に移しました。

今後、米中だけでなく、日本もこの半導体競争に巻き込まれる可能性があるのです。

米国は、「おい日本、対中国ではいつでも仲間だよね」と迫ってきますし、中国が先端半導体を利用して軍を近代化して困るのは中国に近い日本です。

中国は日本が米国と足並みを揃えることに怒りのボルテージを高めているので、中国は独自に日本の半導体産業にヒビを与える目的で貿易規制を強化してくるかも知れません。

世界は半導体競争の時代

最近、台湾や韓国の半導体企業が日本の熊本や横浜に半導体製造工場を建設し、日本で先端半導体の生産を強化する動きが見られます。

また、日本のトヨタやソニーなどが出資して誕生した半導体会社ラピダスも北海道の千歳市に半導体工場を建設中です。

今後はこういった動きが拡大することで半導体の安定を図ることが求められており、スマートフォンやタブレット端末、ノートパソコン、冷蔵庫や洗濯機、自家用車などを買うことも安定化してくるでしょう。(大学勤務 大谷 国之)

《大谷 国之》
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大学にて世界経済について教えています。 国際問題と国際経済との関係性を調査し、家計や投資などにどのような影響を与えるかを分析し伝えていきます。 寄稿者にメッセージを送る

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