
お盆に親族が集まると、これまで語られなかった家の事情が表に出ることがあります。亡くなった父に別の家庭の子がいたなら、その人は第1順位の相続人です。取り分が半分になるという話も聞きますが、現行の民法にその定めはありません。2分の1が働く場面は、まったく別のところにあります。
四十九日の席で初めて聞かされた父の前の家庭
「父に、前の奥さんとの間に子どもがいたそうなんです」
春に父を見送った50代の長男が、相続の相談窓口でこう切り出したといいます。四十九日の法要で親族から聞かされるまで、その人の存在をまったく知らなかったそうです。父は30年以上前に離婚と再婚をしていましたが、前の家庭の話が家の中で出たことは一度もありませんでした。
母はすでに他界しており、相続人は自分と妹の2人だと思い込んでいたといいます。銀行の窓口で手続きの説明を受け、父が生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべて集めるように言われて、ようやく事情が飲み込めたそうです。名前も住所も知らない相手に、これから連絡を取らなければなりません。
お盆は、こうした話が表に出やすい時期です。親族が顔をそろえ、法事や墓の相談のついでに昔の事情が語られます。動揺しますが、法律の側から見ると、やることははっきりしています。誰が相続人かを確定し、その全員で分け方を決める、という順番です。
認知の有無で分かれる、父の子としての立場
前の妻との間に生まれた子と、結婚していない相手との間に生まれた子とでは、相続人になるまでの道筋が違います。ここを分けて考えると、話が追いやすくなります。
前の妻との間の子は、民法772条の嫡出推定により、父の子と扱われます。同条は、妻が婚姻中に懐胎した子は当該婚姻における夫の子と推定し、女が婚姻前に懐胎した子であって婚姻が成立した後に生まれたものも同様と定めています。改めて認知の手続きを踏む必要はなく、父の戸籍をたどれば記載が見つかります。
一方、結婚していない相手との間に生まれた子は、認知によって父の子になります。民法779条は、嫡出でない子はその父又は母が認知することができると定めています。認知は戸籍法の定めるところにより届け出てするのが原則ですが、民法781条2項は遺言によってもできるとしています。生前に認知していなくても、遺言書が開かれて初めて子の存在が分かることがあるのはこのためです。
父が認知しないまま亡くなった場合は、子やその直系卑属、これらの人の法定代理人が認知の訴えを起こせます。ただし民法787条は、父または母の死亡の日から3年を経過したときはこの限りでないとしています。期限のある手続きです。そして民法784条により、認知は出生の時にさかのぼって効力を生じます。認められれば、生まれたときから父の子だったことになります。
相続分の「2分の1」が働く場面と、働かない場面
ここが最も誤解の多いところです。結婚していない相手との子は取り分が半分になる、という説明を見かけることがありますが、現行の民法にそのような定めはありません。
かつては民法900条4号のただし書に、嫡出でない子の相続分は嫡出子の2分の1とする部分がありました。しかし2013年9月4日、最高裁判所大法廷はこの部分について、遅くとも2001年7月当時において憲法14条1項に違反していたと判断しました。これを受けて同年12月11日に民法が改正され、この部分は削除されています。改正後の規定は、2013年9月5日以後に開始した相続に適用されます。
つまり父の相続で子として分けるときは、母が誰であっても取り分は同じです。民法900条4号の本文が、子が数人あるときは各自の相続分は相等しいとしているとおりです。
では2分の1という数字はどこで出てくるのでしょうか。削除されずに残っているただし書が、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1とすると定めています。これは兄弟姉妹が相続人になる場面、つまり亡くなった人に子も直系尊属もいないときにだけ働く決まりです。父の相続の場面とは別物なので、混ぜないでください。
相続人の順位も民法が定めています。配偶者は常に相続人になり、第1順位が子、子がいなければ直系尊属、それもいなければ兄弟姉妹の順になります(民法887条1項・889条1項・890条)。

相続人を確定させる戸籍のたどり方
誰が相続人かは、父が生まれてから亡くなるまでの戸籍で確認します。いま手元にある戸籍だけでは足りず、除籍や改製原戸籍まで連続してそろえる必要があります。前の結婚も、認知の届出も、この連なりのどこかに記載されています。
2024年3月1日からは、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書と除籍証明書を請求できるようになりました。本籍地が各地に散らばっていても、1か所の窓口でまとめて請求できます。ただし条件があります。請求できるのは本人と配偶者、父母や祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属に限られ、郵送や代理人による請求はできません。窓口へ本人が出向き、顔写真付きの身分証明書を示す必要があります。コンピュータ化されていない一部の戸籍や除籍も対象外です。
子である立場なら、父の戸籍はこの制度で取り寄せられます。一方、異母兄弟は直系ではないため、その人自身の戸籍を同じように請求することはできません。この場合は戸籍法10条の2第1項1号により、相続手続きという自己の権利を行使するために戸籍の記載事項を確認する必要があるという理由を明らかにして請求します。
住所を調べる段になると、扱いがもう一段変わります。戸籍の附票の写しを請求できるのは、記録されている本人と配偶者、直系尊属、直系卑属です(住民基本台帳法20条1項)。異母兄弟はここにも当たらないため、同条3項に基づき、自己の権利を行使するために必要だという理由を示して申し出て、市町村長が相当と認めた場合に、記載事項を限定した写しの交付を受けることになります。見通しが立たないときは、弁護士や司法書士などの専門家に依頼する方法もあります。
連絡がつかないとき、後から相続人が現れたとき
遺産の分け方は、共同相続人が協議で決めます(民法907条1項)。一部の相続人を外した協議は効力を持たないため、金融機関や法務局の手続きも進みません。まずは所在を確かめ、手紙で事情を伝えるところから始めます。いきなり訪ねるより、経緯を書いた手紙のほうが受け取る側の負担も軽く済みます。
戸籍をたどっても居所が分からない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を求める道があります。民法25条1項は、従来の住所や居所を去った人が財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所が利害関係人または検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができると定めています。選ばれた管理人は、民法28条1項により家庭裁判所の許可を得たうえで、その人に代わって協議に加わります。
分割が終わったあとに相続人が現れた場合はどうなるのでしょうか。すべてやり直しになると思われがちですが、民法910条は、相続の開始後に認知によって相続人となった人が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有すると定めています。分け直すのではなく、金銭で精算する扱いです。
相続放棄を持ちかけたくなる場面もありますが、放棄するかどうかを決めるのは本人です。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する手続きになります(民法915条1項)。また、子である異母兄弟には遺留分があります。民法1042条1項が兄弟姉妹以外の相続人は遺留分を有すると定めているためで、遺言で取り分を与えない内容にしても、この部分は残ります。
お盆のうちに、父の戸籍だけは頼んでおく
異母兄弟の存在が分かっても、進め方そのものは変わりません。相続人を確定し、全員で分け方を決める、という順番をたどるだけです。まずは父の戸籍を出生までさかのぼって集めるところから始めてください。全部そろうまでには時間がかかります。連絡や住所調べで行き詰まったときは、弁護士や司法書士などの専門家に相談する方法もあります。


