日本では長い間、デフレ経済による賃金と物価の下落が続いていますが、世界の人口は増え続けており、新興国を中心としたインフレと物価上昇の波がいつ日本を襲っても不思議ではありません。来たるインフレと物価上昇リスクに対して、どのように資産防衛していくべきか、今日はその話をさせて頂きます。

平安時代以前の日本は「土地」が財産の柱でしたが、鎌倉時代以降、武士、商人の間に貨幣経済が行き渡り始め、財産の多様化が見られるようになりました。近世に至り、商人の間で、政変、自然災害など様々な環境の変化に対応して、財産を守る手段として、「財産三分法」という考え方が生まれました。これは、財産を「お金(貨幣)」「商品」そして「不動産」の3つに分けて保有することを意味します。現代における財産三分法は、現金的な性格を持った「預貯金」、運用益を期待する「株式など証券投資」、そして「不動産」で構成されます。

デフレ経済化においては、証券、不動産の価値が下がり、物価も下がり続けるので、基本的に預貯金を多く保有していた方が有利です。過去20年間、日本は典型的なデフレ経済に陥っていたので、一時期の景気回復期間を除いて、日本国内で証券、不動産投資をしていた人達は、市場に裏切られたという思いを抱いている人が多いことと思います。

しかし、海外では全く事情が異なります。ここ香港では、香港ドルが人民元に対して過去5年間で20%以上も下落し、中国国内の労務費も上昇が続いており、多くの食糧品や日用品の供給を中国に頼らざるを得ないため、昨年は多くの食糧品、日用品の価格が上昇しただけではなく、不動産の賃貸価格も過去最高となりました。現金保有比率が高く、賃貸住宅に住む多くの一般市民の可処分所得が大幅に減る結果となる一方で、2003年SARS前後に不動産を安値で購入していた人達が、いまその賃貸収入で潤う結果となっています。

いままで世界の工場と言われて、低価格商品を世界中に供給してきた中国で今後も労務費の上昇が続くようであれば、日本も世界的な物価上昇の波を避けられなくなるでしょう。工場を中国以外の労務費が安い国に移したら良いという意見もありますが、様々な部品メーカーが集積する中国の工場群を一斉に他国へ移動させることは現実的ではありません。中国製の商品価格が何割か上昇したとしても、日本は中国から多くの商品を買い続けざるを得ないでしょう。

来たる物価上昇、インフレリスクに対応するためには、預貯金だけでは不十分であり、歴史的にインフレに強く、物価上昇を上回るリターンを期待することができる証券資産、不動産資産をバランス良く保有することが、中長期的な資産防衛を図る手段としても有効と言えます。