本日は日経ビジネス社からの取材で、掲題のとおり、中国在住者が香港で資産運用するメリットについて、私なりの考えをお話させて頂きました。現在、中国大陸の邦人駐在者は13万人余りで、香港では約2万人の日本人が暮らしているので、中国全体では15万人以上の日本人が滞在しています。弊社は香港在住者だけではなく、中国在住者から資産運用の相談を受けることも多いのですが、中国在住者の方につきましても、まずは、香港で銀行口座を開設して頂き、資産の流動化を図ることを推奨させて頂いております。

なぜ香港で口座開設をして頂く必要があるかと言えば、中国内で法人の輸出入業務では人民元の自由化が徐々に進んでいるものの、中国内で個人の銀行業務に関しては依然として多くの外為管理規制があるからです。世界随一のオフショア金融センターである香港の経済自由度はウォールストリート誌調査で18年連続で世界一の評価を受けており、香港の銀行から主要外貨への両替・送金は自由に行なえます。

また、香港の法人税・所得税は累進課税で最大17%と非常に低く、ビジネスで英語が通じるメリットを生かして、世界中の金融機関が香港に集結しているため、香港を通して、ほぼ世界中の金融商品へアクセスすることができます。

ここまでの話が、香港で資産運用して頂く上での一般的なメリットの話となりますが、中国在住者にとって、香港で資産運用することに関してどのようなメリットがあるかと言えば、1997年の香港返還以降、中国と香港の距離が急速に縮まっていることだと思います。

例えば、香港から中国に入るとき、以前は事前に訪問ビザを取得しなければならなかったのですが、今では2週間以内の滞在であれば、訪問ビザは必要なくなりました。広州や深センから陸路で香港に戻るときは、以前は出国審査の長い行列に並ばされて閉口していましたが、いまでは審査手続きのID化が進み、窓口の混雑はかなり解消されました。香港と上海・北京間に格安航空の就航も始まり、空路での移動も国内出張に近い感覚で行なえるようになってきたと思います。

香港で資産運用する最大のメリットは、投資・配当収益が全て非課税になることですが、これについては一長一短で、メリットとデメリットがあります。香港内で投資・配当収益が非課税でも、日本へ帰国後は国外資産の投資・配当収益が課税対象となりますし、中国でも5年以上滞在される予定の方は同様に国外資産の収益が課税対象となります。

こうした課税申告手続きが煩わしいと思われる方は、満期まで収益が確定しない年金型プランで運用された方が良いと思います。この場合は満期時点の居住国で課税申告手続きを行なうことになるので、香港かシンガポール在住なら合法的に非課税、生活費と所得税が日本よりも安い東南アジアの国でリタイアビザを取得する方法もあると思います。例えば、いま現在、日本人のリタイア先として人気のあるマレーシアの所得税は累進課税で最高26%なので、日本で老後を暮らすよりも税金、生活費ともに安くなります。

既に中国で海外在住の経験がある方であれば、海外でリタイア生活を送ることにそれほど違和感はないはずなので、これも中国駐在経験者にとってのメリットの一つと言えます。