インターネットで検索すると,「離婚専門」を謳う,行政書士事務所がたくさん出てきます。離婚問題も扱うという,司法書士事務所も,いくつか出てきます。離婚問題について,どの専門家に相談すればよいのか,わからない方がおられると思いますので,解説してみます。

弁護士にしかできないこと

(1)依頼者の代理人として,相手方と交渉すること
(2)離婚調停の期日に同席すること
(3)離婚訴訟で,当事者の代理人として訴訟活動をすること

  もし,離婚案件で相手方と交渉を行っている司法書士や行政書士がいたら,弁護士法違反という犯罪行為です。

  交渉ができないのに,どうやって離婚問題を解決するのか。当事者同士で交渉させつつ,合意書や公正証書の文案を作成するということのようです。当事者同士の話し合いの席に,同席したりするのかもしれません。しかし,口を開いて直接相手方と話をしたら,アウトではないでしょうか。

離婚調停について

  しかし,当事者同士で話がまとまらないから困って専門家に相談しようという方が,引き続き当事者同士で直接交渉して,話が前に進むでしょうか。当事者同士で話し合いが難しいのであれば,自分で調停を申し立てれば,安価に解決できることが多いでしょう。

  離婚調停の申立は,自分で簡単にできます。
   ひな形→ http://www.courts.go.jp/vcms_lf/32001001.pdf

  この書式を埋めて,戸籍謄本を取得し,提出するだけです。書き方がわからなかったら,家庭裁判所の窓口で聞けば,形式的なことなら教えてくれます。詳しい事情は,調停期日に口頭で説明すれば,大抵は大丈夫です。調停申立書を何万円で作ります,などとホームページに書いている司法書士もいますが,ニーズがあるのだろうかという気がします。

  調停期日では,「調停委員」という方が話を聞いてくれます。相手方とは直接顔を合わせず,調停委員を介して話を進めていきますので,感情的な言い合いになるようなことはありません。行政書士などに同行してもらって直接話をするよりも,話がしやすいのではないでしょうか。

  調停が成立した場合,裁判所が,合意内容を書面にしてくれます。この書面には判決と同じ効力があり,不履行の場合には差し押さえができます。つまり,公正証書と同じ効力があります。調停を利用するのなら,公証役場は必要ありません。司法書士や行政書士のホームページには,「公正証書を作りましょう」などと書いてありますが,手段はそれだけではありません。

  費用も,公正証書を作るより,調停の方が安価です。公証人に支払う手数料は,数千円~数万円。
   公証役場のサイト → http://www.koshonin.gr.jp/index2.html

  離婚調停を起こす手数料は,調停申立書に貼る1200円の印紙と,900円(広島家裁の扱い)の切手だけです。
   裁判所のサイト
    → http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_01/index.html

  司法書士や行政書士に依頼したうえで公正証書を作ると,結構高くつくかもしれません。調停を自分でやれば,2000円かそこらで解決できることも多いと思います。調停を進めて行くうえで,わからないことや不安なことがあった時に,その都度弁護士に相談されるという方もおられます。相談料だけであれば,大した金額にはなりません。

公証役場の使い方

  当事者同士ですでに話がついているのであれば,自分で公証役場へ行って,公正証書を作ってもらうことができます。ただ,公証人さんは,積極的に「こういう条項にした方がいい」といったアドバイスまではしてくれないかもしれません。事前に弁護士に相談し,どのような条項を盛り込むか,相談するのが無難かもしれません。

司法書士,行政書士が離婚案件に関与する問題点

  実は,そもそも行政書士が離婚相談に応じて良いのか,ということが問題です。

  ↓の弁護士のブログをご覧下さい。元裁判官の方のようです。
  行政書士は離婚相談はできません

  問題はまだあります。司法書士や行政書士は,自分ができる範囲の中で,依頼者の問題を解決したいはずです。調停となると自分の手を離れてしまうので,調停を起こすように勧めないかもしれません。中には,調停期日に裁判所まで同行する,とホームページに書いている司法書士もいます。司法書士は調停室には入れませんから,待合室で待機し,相手方が調停室に入っている間にアドバイスをするということでしょう。

  そこまでして・・・という気がしてしまいます。相手方が無茶なことを言って譲歩しない場合に,司法書士はどのようにアドバイスするんでしょう。「訴訟になったら,弁護士費用が馬鹿高いよ」などと言って,無茶な要求を呑むように説得したりするようなことがなければよいが,と思います。要するに,司法書士・行政書士の利益と,依頼者の利益とが,相反する場合が想定できるということです。

  また,司法書士も行政書士も,調停室でどのように話が進むのか,見たことがありません(自分が離婚調停の経験者であるとか,調停委員の経験者でもない限り)。

  訴訟になったらどうなるのかも,経験がないので語れないでしょう。とことん争ったらどうなるのか,という見通しなしに,この辺で話をつけよう,という判断はできないはずです。

私の思い,考え

  私がこんなことを書いているのは,行政書士や司法書士から顧客を奪って収益を上げようということではありません。行政書士や司法書士の関与で解決できるような離婚案件は,私のところに相談に来られても,5000円程度の相談料で終了することが多いはずです。

  お金になるような案件ではないので,弁護士も目くじらを立てず,野放しになっている,というのが現状だと思います。

  前にも書きましたが,一般市民の方々にも,専門家を選ぶ目が求められる時代だと思います。しかし,そういう目をお持ちでない方が多数派だと感じています。それが残念なことだと思っているので,こうして書いている次第です。

  私は,離婚の相談では,
・解決の方向性,落としどころ
・解決の手続

  などをご説明しています。もちろん,話合いが困難なら調停を自分で起こす方法があることや,そのやり方もご説明しています。

  その後自分で調停を起こされ,解決に至られた方も多いはずです。その方がかかった費用は,弁護士の相談料5000円,調停申立にかかる2100円,合計7100円,という感じかもしれません。

  「公正証書を作っておきましょう!」などとホームページに書いている司法書士や行政書士に相談したら解決までにいくらかかるのかは,知りません。それぞれのホームページに書かれている料金表をよく見て,考えてみてください。
 
  たくさん離婚のご相談をお受けしていると,時々,弁護士が関与しなければ解決が難しいと思われる案件があります。そのような案件を,弁護士費用をいただいて受任し,依頼者の代理人として,交渉,調停,訴訟という手続の中で解決しています。繰り返しますが,こういうことができるのは,弁護士だけです。

  なお,離婚に関して,1つだけ,司法書士に依頼すべき問題があります。財産分与で不動産の名義変更をする場合の登記手続です。ただ,実はうちの事務所では,財産分与の登記も自前でやっています。

  離婚のことなら,何でもご相談下さい。