株式市場以上に大盛況の不動産市況

  アベノミクス効果により、不動産市況は株式市場以上に大盛況である。上場不動産投資信託いわゆるJ-REITのみならず、私募ファンドによる不動産投資が活発になっているという報道を最近見聞きする読者も多いであろう。安倍政権下の経済政策によるインフレ期待を背景に、将来の賃料上昇を見込んでいる投資家が増加しており、アベノミクスは不動産マーケットにとってはまさに神風と言ってよいかもしれない。

  東京証券取引所に開示された不動産売買取引実態によれば、2012年度下期の10月から2月までの5か月累計で取引金額は、約1兆2500億円に上ったとのこと。半期ベースで1兆円を超えるのは、実にリーマンショック以前の2007年度下期以来、5年ぶりだ。

  今年2月から3月にかけて、大型オフィス物件売却で話題となった「ソニーシティ大崎」や「パナソニック汐留」は不動産取引の活況を象徴している。それぞれ1,100億円と500億円を超える取引だが、両物件はREITが取得したと報じられた。REIT市場への資金流入はもちろんのこと、REIT銘柄の新規上場も相次いでおり、REITによる物件取得は、2月末までで9200億円、なんと不動産売買の7割以上を占めているとのことだ。

  不動産市場の活況が今後も持続するかは、金融政策と財政政策に続き、現政権が議論している様々な成長戦略が日本経済に定着するか否かが、カギになると言えるだろう。

不動産投資商品には透明性が求められる

  ところで、近年、個人投資家向けに広告・宣伝が活発に行われている不動産共同事業法(不特法)に基づく不動産投資商品はご存じだろうか?

  具体的な商品名は避けるが、「○○○で大家さん」や「○○○○ファンド」等々の商品名で、年率5%から6%の確定利回りで、元本確保型(もちろん元本保証ではない)の運用が比較的安定した数十万円や百万円単位から購入できる個人向けの不動産投資商品だ。

  実は、以前、当FP事務所へ相談をされる複数の方から、これらの不動産投資商品について「5%前後の確定利回りで安定した運用商品のようだが、投資して大丈夫でしょうか?」というご質問を何度か受けたことがある。

  不動産特定共同事業法に基づく投資商品うんぬんという詳細な商品の設計や、個別不動産に投資する際のリスクがどうなのかということ以前に、「透明性に欠ける商品です。ちゃんとした運用報告書が作成されておらず、また外部の監査が行われていないので、お勧めできる投資商品ではありません。不動産投資信託すなわちREITの方が、はるかに透明性が高く、また利回りも5%程度の銘柄も少なくない」というのがFPである私のアドバイスでした。

  ちょうど同じころに、「○○○で大家さん」の販売会社から、たびたび電話連絡や郵便物の送付があり、「先生の事務所のお客様をご紹介して頂けますか?」という依頼を受けていた。

  その際、「○○○で大家さんシリーズは、マスコミ等で頻繁に宣伝していることもあり存じている。現在で1号~10号までの募集・運用実績がありますが、各号の詳細な運用報告書を見せて頂けますか?大切な顧客を紹介するには、運用内容の透明性が大切ですから」という問いかけをしたとたん、「えー、そのような報告書は簡易なものでしたら、投資家向けには作成しておりますが・・・・でも、お見せすることは・・・」等々と苦しい回答、そしてその後、連絡は来なくなりました。

  当然のことだが、すべての不動産特定共同事業法に基づく、投資商品が問題がある訳ではありません。大手不動産会も不特法に基づく商品シリーズを長年にわたって展開(最近の商品は想定利回りが1.0%から1.5%と低いが)している。また優先劣後システムを導入して、投資する当該物件の価格下落リスクが投資家(匿名組合)へ及ぶことを、一定程度和らげる仕組みも取り入れられています。

問題なのは、透明性だ。

(1)     運用状況を開示していること—>外部監査を受けていることが望ましい

(2)     過大な広告宣伝をしていないか—>広告宣伝費はだれが負担?

(3)     投資対象となる不動産物件を実地調査する

(4)     登記簿をあげて当該物件の権利関係を確認—>第三者の抵当権はついていないか)

  これらの項目は、投資を検討する際に最低限必要だ。

  実は、FPの中でも、「○○○で大家さん」については、肯定的な意見もあり積極的に購入を推奨しているケースがあるようです。しかしながら、顧客を紹介して手数料を得ている場合、中立公正なコメントができるのかは甚だ疑問。

  さらにいえば、「○○○で大家さん」の運営・販売会社は昨年8月に東京都と大阪府から行政処分を受けている。顧客を紹介したFPは、すでに投資された方々の不安にどのように答えるのでしょうか?運営会社は、これらの行政処分により、1か月から2か月の間、新規募集を含むすべての業務の停止命令を受けました。

  もし、「○○○で大家さん」の不動産事業が自転車操業であった(過去に募集したファンドの配当金や償還資金を、後に募集したファンドの募集資金で賄うこと)場合、新規の資金が入らないことで、資金繰りがつかず、いっきに破たんする事態に至ることもありえます。

  そもそも信頼できる運用レポートが出されていなければ、それぞれのファンドで想定される家賃収入は得られておらず、定期的に支払われる配当金の原資もあやふやである可能性がある。外部監査がなされているかどうかがは、会計帳簿や運用レポートの信頼性はもちろんおこと、不動産運用事業の信頼性を判断する重要なファクターなのである。

  「○○○で大家さん」の投資商品と運営会社が今後どのような結末をむかえるかは興味深いところであるが、一部のFPと提携して商品勧誘と販売を大々的に行っていることを鑑みると、しっかりとした判断基準を持たずに安易に購入・投資に踏み切る個人投資家の存在を懸念せずにはおられません。

J-REITは情報開示と信頼性を持つ優れた投資対象

  不動産投資は元来、投資対象の不動産物件の立地や現況に収益性が大きく左右される個別リスクのため、専門的な知識・経験といった目利きが求められます。また、上場会社に投資する株式投資とは違い、必ずしも透明性の高い財務諸表や会計情報が公表されているとは限らない。

  一方、J-REITは総じて優良物件が組み入れられおり、複数の物件へ分散投資もされている。さらには、会計監査を受けた、きわめて透明性の高い情報開示がなされています。

  また日本のREIT市場は開設されて約12年が経過しており、関連する法整備もかなり進んでいるので、相応の価格変動リスクはあるものの、不動産私募ファンドや一部の不特法に基づく不動産投資商品とは一線を画しています。REIT市場は、アベノミクス効果により、ほとんどの上場銘柄の投資口価格は高騰しており、利回りも低下しています。また、これまでの価格高騰の反動による価格下落リスクもあります。

  しかしながら、不特法関連の不動産投資商品と比べて、個人投資家にとって重要な情報開示と信頼性という点で、非常に優れた投資対象であることを、FPとしてあらためて強調したい。