足もとで、新興国経済の成長鈍化が目立ってきている。IMF・国際通貨基金は今年7月、2013年の新興国の経済成長率が5.0%程度まで低下すると予測している。もちろん米国・欧州・日本等の先進国に比べたら、依然高成長であることは確かだか、今年4月時点のIMF予測から成長率が0.3%も下方修正されているので減速傾向は明らかだ。
新興国経済減速の主たる理由は、米国の量的金融緩和縮小の観測が強まったからだと言われている。どういうことかというと、2008年に起きたリーマンショック以降、米国の中央銀行であるFRBは大胆な量的緩和金融緩和つまり、大量にドル資金を市場に供給して 、米国経済の底割れを食い止めようとした。その結果、溢れ出たマネーが新興国投資へ流れ込んでいったのだが、その資金の流れがこのところ逆流を起こしているのだ。
これまでは、新興国経済の高成長を期待した投資マネーであったが、米国の金融緩和の縮小が意識されただけで 、市場が大揺れするのは、いまだに新興国は経済基盤が非常に脆弱であることを示す証拠であると言えるだろう。
BRICsをはじめとする新興国諸国は、国によって状況に差はあるものの、大量の資金流出による株価下落や自国通貨の下落に悩んでいる。自国通貨安は、輸出競争力強化につながるため新興国および資源国経済にとってプラス要因にはなるが、それ以上に、輸入物価上昇によるインフレ率上昇の影響が大きく、国民経済全体が大きな打撃を受けているのである。
インフレで国民の生活が困窮し不満が高まれば、社会不安につながる恐れがある。そのため、インドネシアやブラジルは、自国通貨防衛とインフレ回避のため、度重なる金利引き上げを実施している。これでは、ただでさえ減速した経済の回復は遠のくばかりだ。
難しい新興国への投資
「ブラジルは、来年サッカーW杯そして、2016年はオリンピック開催をひかえている。よって、スタジアム建設やインフラ整備の需要が旺盛のため、高成長が期待でき、投資対象としていまだ有望です!」といってブラジル債券ファンド等の投資信託を勧める金融機関の勧誘に安易に乗ってはいけない。
現在、シャドーバンキング問題への懸念で大揺れしている中国について考えてみても、新興国経済への投資がいかに難しいかは明らかだ。ちなみに、過去を振り返れば、2008年開催の北京オリンピック開催の1年以上前に、上海の株価はピークを迎え下落を始めていた。
投資家への3つのアドバス
さて、ここからが当コラム読者である投資家へのアドバスである。
アベノミクスによる円安で、順調に業績と株価が回復しているようにみえる日本企業への投資にも注意が必要である。よくよく調べてみると、円安の好影響を除けば、実質的な業績が赤字である会社も少なくないからだ。
先般から今年第2四半期の企業決算発表が相次いでいる。デジカメ販売が苦戦しているキヤノンや、新興国への売り上げ比率が大きいコマツの株価が比較的奮わないのはなぜかを考えてみよう。
あくまで個人的な見解だが、今、新規で投資を考えるのなら、米国株がお勧めだ。一部で異論はあるだろうが、量的金融緩和の縮小議論が高まっているのは、米国経済の回復が明らかになってきた証拠である。米国株価指数であるS&P500に連動するインデックスファンドやETFはもちろんのこと、企業業績の中身をチェックの上、IT業界の個別株を選んでもいいかもしれない。