なぜ年金分割が始まったのに、熟年離婚は増えなかったのか?

  3組に1組の夫婦が離婚する時代です。特に熟年離婚を呼ばれる30年、40年と連れ添った夫婦が離婚するとなると問題山積で当事者はあっぷあっぷ。長年の蓄積を清算するのは大変な作業ですが、どうしたら良いのでしょうか?今回は「離婚時の年金分割制度」についてご紹介します。

離婚時の年金分割制度 勘違いしやすい3つのポイント

(1)すべて対象という誤解

  年金で勘違いしやすいポイントは3つあります。まず1つ目はすべて対象という誤解です。離婚年金分割の対象は厚生年金と共済年金のみ、国民年金、企業年金、年金保険は対象外です。

  これは婚姻期間中に納めた厚生年金、共済年金の最大2分の1を分割する制度です。按分割合は自由に決めることができます。通常、年金は夫>妻なので、夫が納めた年金を妻に分割しますが、男女平等なので、夫<妻なら、妻が夫に分割するケースも。夫婦が共働きの場合、夫が怪我や病気、リストラ等で失業中の場合など。また別居期間中の年金も対象。一方、独身時代の年金は対象外。

  この制度が画期的なのは離婚時に手続をすれば、65歳時に何もせずに、分割した年金が「国から振り込まれてくること」(ただし裁定請求は必要)今までは元夫が自主的に元妻に振り込まなければならず、あまり現実的ではなく、年金はあきらめるしかなかったのです。

  よく相談者が間違えるのは、年金分割は熟年離婚の場合しか利用できないという誤解。実際は婚姻期間に関係なく利用可能。もちろん、年金の納付期間が短ければ、メリットは少ないが財産がまったくないケースでは、「やらないよりマシ」だから年齢に関係なく、勧めた方が良い。

(2)試算の重要性

  2つ目は試算の重要性です。「年金分割のための情報提供通知書」を発行してもらい、見込額を知った上で老後のキャッシュフロー表を作りましょう。厚生年金の場合は年金事務所で、共済年金の場合、共済組合で無料で発行してくれます。ここでは分かりやすく、夫が妻に年金を分けるというケースに絞って見ていきましょう。

  「年金を分割することで65歳からもらう年金が夫<妻になってはいけない」というルールがあります。これは共働きの場合に起こる現象ですが、どんな場合でも、このルールに抵触していないことを証明する必要があります。

  年金分割のための情報提供通知書を取得する理由は何でしょうか?

  ルールに違反していないか、そして老後の生活設計を試算するためです。年金事務所(共済組合)に申請書と戸籍謄本を提出すれば、無料で発行してくれます(2~3週間待ち)50歳以上だと、具体的な試算を発行してくれる。ただし、これは現時点で年金をもらった場合の試算です。まだ今後も年金を納めていくので、金額は変動していきます。

(3)年金の見込みと離婚の是非

  3つ目は年金の見込みと離婚の是非です。分割できる年金が少なすぎて、生活の目途が立たない場合、それでも離婚すべきか、どうかです。年金分割が始まったのに離婚件数は増えなかったのですが、なぜでしょうか?それは妻が夫の年金をもらったところで、結局、離婚しても生活が成り立たないから。試算すると、そのことが明らかになり、離婚への歯止めになったのです。

  例えば、離婚しない場合、夫婦の実入りは夫の収入+夫の年金+妻の収入+妻の年金ですが、今までの生活水準を維持することができます。

  一方、離婚する場合、妻は妻の収入+妻の年金+夫の年金の2分の1で自分1人が生活しなければなりません。一方、夫は夫の収入+夫の年金÷2で自分1人が生活しなければなりません。後者の場合、二重生活になるので生活費や家賃は約2倍になるのでその分、負担は重くなる。

  しかも最近は晩婚化、高齢出産の増加で、夫婦が60歳でも子供が大学生というケースもあり、そうすると、限られたお金のなかで、夫はどうやって養育費を払うのか、妻は子供を育てるのか。それも熟年離婚のハードルを高める一因になっています。

この記事を書いた人

露木 幸彦 露木 幸彦()»筆者の記事一覧 (29) http://www.tuyuki-office.jp/rikon01.html

露木行政書士事務所 代表
1980年生まれ。国学院大学・法学部出身。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7,000件、離婚協議書作成900件を達成した。サイト「離婚サポートnet」は1日訪問者3,300人。会員数は20,000人と業界では最大規模にまで成長させる。「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。読売、朝日、毎日、日経各新聞、雑誌「アエラ」「女性セブン」「週刊エコノミスト」テレビ朝日「スーパーJチャンネル」TBS「世界のこわ〜い女たち」などに取り上げられるなどメディア実績多数。また心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し、累計部数は50,000部を超え、根強い人気がある。
<保有資格>:行政書士、AFP
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