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相続税対策のポイントと注意点 遺産分割、不動産を総合的に考慮

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相続税対策のポイントと注意点 遺産分割、不動産を総合的に考慮

 今年の税制改正で相続税の基礎控除額が現状の60%に減額されることとなりました。実施されるのは再来年の平成27年からです。再来年といっても今年も残りわずか・・・実質、あと一年と迫ってきました。

基礎控除額が60%になるとどうなるか?

 基礎控除額が60%になるというのはどういうことかと申しますと、一次相続で相続人が母と子ども2人の合計3人の場合、現状の相続税法の基礎控除額は、5000万円+1000万円×3人=8000万円となりますが、改正後の基礎控除額は、3000万円+600万円×3人=4800万円となり、実に、その差額は3200万円となります。

 つまり、再来年からは、相続人が3人の場合、相続財産の課税価格が4800万円を超えてくると、相続税がかかってくることになってきます。

 相続税の課税価額とは、被相続人が相続開始の時に所有していた財産を、相続税法の財産評価基本通達に基づく計算方法で評価した金額の合計額から、債務(住宅ローンや事業用のローン、敷金や預り金の将来返済義務のあるもの等)や葬式費用を控除した残額となります。

本末転倒の相続税対策に注意

 相続税がかかってきそうな場合は、相続税対策として相続税の課税価格を下げていく手段を講じていくわけです。が…大事なことは相続人間の遺産分割と納税対策となってきますので、相続税の課税価格を下げることばかりに気を取られ相続財産のほとんどを、相続税の課税価格を下げやすい不動産に集中させてしまうと本末転倒の結果となりかねません。

 遺産分割で思うように分けられない。いざ、納税という時に、結果、不動産を売却しなければならなったが思うように売れない。等々…

 特に、平生18年から物納要件が厳しくなったことにより、延納によっても金銭で納付することが困難でなければ物納は認められなくなりましたし、他には隣地や道路との境界が確定していること、土壌汚染がされていないことなどの条件も厳格に求められています。

 これは、平成18年にファンドに対する不動産融資が厳格に規制(信託受益権化する不動産の融資については法令順守や土壌汚染リスクの対策などをきちんと抑えておくことが義務付けられた)されてきたときと同時に決めらたものです。高額な不動産の取引が厳格化されたことに伴っての処置であったようです。

 このように、相続対策は相続人での分割方法を考えて、納税の方法を考えて、そして節税できる方法を考えていくこととなります。

 優先順位が相続税の節税でも構わないとは思いますが、あくまでも分割のしやすさと意識して納税のしやすさを考えていきながら進めていくべきでしょう。

相続税評価額の算出方法

 現預金や多くの金融資産は相続開始時の額面が相続税評価額となりますが、土地の場合は路線価という国が算定した相続税の財産評価の基準となる数値をつかって求めます。(市街化調整区域内の多くは路線価が付されていませんので固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算します)

 この路線価は、公示価格か基準地価格(いわゆる時価に近い金額)の8割程度で設定されますので、例えば現金5000万円で土地を購入すれば相続税評価額は何をせずとも4000万円近い評価額となってきます。

 さらに、この土地に現金で5000万円のアパートを建てた場合(この土地の借地権が60%、借家権が30%として)4000万円×(1-借地権70%×借家権30%)=3160万円の評価額となります。

 さらに、さらに、建物の相続税の評価額については固定資産税評価額となりますので時価のおおよそ60%程度が目安となってきます。

 つまり、何をしなくても5000万円×60%=3000万円となり、アパートのような貸家の場合は借家権相当分が控除されますので、3000万円×(1-30%)=2100万円となってきます。

 これを土地と建物で考えた場合、5000万円+5000万円=10000万円が3160万円+2100万円=5260万円となりその差額4740万円相当の相続税評価額の減額効果が得られることとなります。この場合に、現金が準備できなければ銀行から借り入れしてその対価にあてることとなります。

 その借入金が債務として相続税の評価額を下げる役割を担うこととなります。

 この対策から得た相続税の評価額の減額分4740万円は相続人が3人の場合の基礎控除額の減額分3200万円を上回ってきます。

注意すべきポイント

 一見、よさげに見えますが、注意をしなければいけないのは、そのアパートの計画がシビアな事業計画書によって検討されたものかでしょう。アパート等の建築業者は、まず、契約ありきとなりますので事業リスクにはあまり触れない事業計画書を提出してくる場合があります。

 金利の変動を何も考えていない計画、あろうことかそれを指摘すれば銀行がお金を貸してくれるということは金利上昇によるリスクはない。だって、銀行が貸すのだ
からと言い切ったアパート建築の営業のかたもいたくらいです。

 また銀行も、アパートの事業収支も、もちろん重要な判断基準となりますが、担保がしっかりしている場合や、その他の不動産に根抵当権がつけられるなど、いざとい
うときの回収に不備を残さないような案件であればその融資は通るでしょう。

 要は、銀行の判断そのもは、100%の信頼は置かない方がよろしいでしょう。最後に何かしらの方法で回収出来ればよいわけです。相続税の減額を狙っての土地活用であっても、事業としてきちんと成り立つものを行うべきでしょう。そして、その事業収入のストックで納税資金を貯めていく方法もあります。

不動産に関する相続のポイント

多くの不動産を所有している場合

 もっとも、多くの不動産を所有しているかたの場合は、単独の土地活用の検討よりも優先して大事なことは、しっかりとした不動産の調査による現状分析を行って、残すものと、活用するものと、納税用にするものと、処分する土地、等に分類することでしょう。

 その分類をしてからでないと、遺産分割や納税対策、さらには節税対策の検討には着手できませんので、まずは相続に詳しい人に不動産の調査や現状分析を相談してみるべきでしょう。

 そして、自分の希望通りの分割を考えてみる、希望通りの土地活用を考えてみる、納税の方法を考えてみる・・・そして出来得る限りの節税を考えていく・・・生前贈与なども効果的です。

不動産は自宅のみの場合

 また、不動産は自宅しかないという方も安心ではありません。再来年の相続税の基礎控除額の減額により都市部や都市近郊の路線価の高い地域に住宅を所有しているかたは相続税の納税の対象となる可能性が高まってきます。

 一次相続は配偶者の優遇措置(配偶者の税額軽減)がありますので相続税のかかるケースは少なくなりますが、問題は二次相続でしょう。二次相続でのポイントは『小規模宅地等の相続税の課税価格計算の特例の適用の適用』が受けられるか否かとなるでしょう。

 基本的には親との同居が前提です。若しくは相続開始前3年以内は持ち家を持たなくするとか…この要件をきちんと確認して、今後のライフイベントを考えていくという方法もあります。

 将来、実家に住むのであれば、今の住居は賃貸でいいのか…賃料を払い続けて大家さんだけが儲かるのに抵抗があれば持ち家とするか…どっちの選択がいいのかということになってきます。

相続を総合的に考える視野が必要に

 このように不動産は自宅しかないというような場合の子供の住宅取得はどう考えるのか? 購入か…賃貸か…どちらが得か…将来の相続税まで見据えての判断も必要でしょうし、購入しようとしている住宅の将来性も見定める必要がありそうです。

 これからは、税務はもちろん遺産分割から不動産まで、総合的に考えられる視野が必要となるでしょう。特に一部の不動産を除き不動産価額の上昇が望めない時代では、不動産の目利きはものすごく重要なポイントとなってきます。

 備えあれば憂いなし。将来の相続に向けての第一歩としては、ご自身や親御さんの不動産をはじめとした財産の調査や現状分析に着手してみるべきしょう。(執筆者:荒木 達也)

《荒木 達也》
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荒木 達也

株式会社ARK財産承継コンサルタンツ 取締役 (荒木不動産コンサルティングFP事務所 代表) 不動産会社での経理業務、大手不動産会社系列の住宅メ-カ-での住宅・不動産の営業、財産コンサルティング会社での財産コンサルティング業務、会計事務所での相続税等税務全般の申告業務に従事した後、相続対策での不動産対策の重要性を痛感し、公平中立な視点で提案を行う不動産・相続をメインとしたFP事務所を開設し今春新たに法人化。株式会社ARK財産承継コンサルタンツ(荒木不動産コンサルティングFP事務所)は、CFP、不動産コンサルタント、トータルライフコンサルタントである一人のコンサルタントの視点で、財産の現状分析から税務、不動産、相続、保険、資産運用等の総合的な財産コンサルティングを行います。不動産・相続・ライフプラン・保険・資産運用・住宅取得・住宅ローンなど、お気軽にご相談ください。 <保有資格>:CFP、1級FP技能士、不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、証券外務員2種、住宅ローンアドバイザー、トータルライフコンサルタント、MBA・税理士試験(簿記論・財務諸表論取得)、日商簿記1級 寄稿者にメッセージを送る

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