政府・与党は、自営業者が会社を作って事業をする『1人オーナー会社』への課税を強化する方向で検討に入ったそうです。現状では、社長本人の給与を人件費(経費)として法人税を減額することができますが、その一部を認めなくさせるために改めるようです

1人会社の税務上のメリット

 1人会社の場合、会社形態を取っていない個人の事業主と比べると、『二重で減税が受けられるので不公平』との声が、以前から挙げられているからのようです。今月半ばにまとめられる2014年税制改正大綱で盛り込むことを目標としているようです。

 この1人オーナー会社はどのような会社をいうのか…具体的には次の様な会社です。

・役員が社長1人だけ
・社長とその親族が発行済み株式の90%以上を持ち、役員の過半数を占める同族会社

 ほとんど、個人の事業と変わることのない事業規模の会社です。

 1人会社にする税務上のメリットは、社長は自分で給与の金額を決められますので、給与を多く支払い、人件費(経費)として会社の利益を軽減できますので、結果、法人税を節税できます。さらに、社長個人の給与に対する所得税は、給与所得者の仕事上の経費として見積もられている給与所得控除分が事業所得として申告した場合と比べて減額されることとなります。

 要は、個人の事業の大きな財布に法人の財布を用意して、事業の売上や経費はその財布を使って処理し、余った余剰金は給与として個人の財布に戻す…というようなイメージでしょうか。いくつもの財布を用意することで、給与として個人の財布にお金を入れれば給与所得控除という経費以外の所得を減らせる特典を得ることができます。

 さらに、法人の財布から多くの給与を得ることによって法人を赤字化し、法人の財布から払えない給与分は個人の未収金扱いとして、法人の累積赤字が貯まったところで、個人は債権放棄をするなどといった方法もあるようです。

 この場合の個人の財布は、社長や奥さん、子供、等々、その財布の数をより多く用意すると所得が多く分散され超過累進税率の低税率の恩恵も受けられることとなります。

不動産業界における現状から考える

 貸家オーナーさんが不動産管理法人をつくり、オーナーの社長が不動産管理法人に管理料を多額に支払い、その法人から家族が給与をもらい、所得を数多く分散することに拠り給与所得控除の恩恵をより多く受ける、超過累進税率の恩恵をより多く受ける…そんな節税スキームが流行りました。

 余りに高く管理料を支払っていたケースでは、その管理料が適切な金額ではないとの理由で税務署から否認の事例がでてくるようになってきました。適切な不動産管理料は具体的にいくらという基準はないものの…。

 家賃収入の18%位までが限度であるとの見解がでてきました。租税法律主義の見地からは、法律の条文で何%と謳ってているわけでもなく、その否認の根拠はと思ってしまいますが。この場合の不動産管理法人は、当然に同族会社であるわけですから、同族会社の行為計算の否認規定での否認となるでしょう。

 この規定の概要は、税務署長は、不当に税負担が減少する結果となると認められるときは更正または決定ができるとあります。この不当とは何か…税負担の軽減を目的として、不自然又は不合理な異常な行為を行った場合…という風に言われています。

 おおまかな概要はこんなところでしょう。

 不動産管理法人に高い管理料を払ってその経費が否認される…その根拠は、一般的に不動産業者に支払う管理料に比べて著しく乖離している高い管理料を支払っていることが、不自然な異常な相場の管理料を払っているということになり、否認の要件としての立証の余地があるということでしょう。

 不動産管理料の場合、一般の不動産会社の相場がありますので、不自然・不合理・異常的なものが数量的に推し量れますので行為計算の否認規定での否認の余地があるように思えます。

 が、しかし、1人法人の場合の給与は税負担の軽減を目的とするところは該当しようとも、きちんとした手順を踏めば給与をいくら支払おうとも自由であり、不自然・不合理・異常な行為としての立証は困難なことでしょう。

 このような場合の手当ては、税法の改正、いわゆる立法させることです。これを租税法では『個別的否認規定』などと呼ばれています。法律で1人法人の社長の給与の一部は経費として認めません、と法律で定めるしかないでしょう。

 今年の税制改正で、相続税・贈与税の納税義務所の改正(日本国籍を有しない海外居住者が海外の財産を相続・贈与でもらった場合は非課税であったものが、相続人や贈与者が国内に居住している者であれば課税されることとなった)がありました。

 ここにきての増税は、いままでの節税のできる余地をなくす条文の改正にも表れてきているようです。

 課税の公平のためといえばその通りですが、節税ができる対策が一つ、一つ、減っていく。イコール増税でしょう。増税路線は、どこまで続くのでしょうか…。生命保険金の非課税など税法上の特典的規定には税制改正に注意が必要そうです。(執筆者:荒木 達也)