いささかローカルな話になりますが、12月15日、埼玉県北本市でJR高崎線の桶川-北本間(4.6キロ)に新駅建設の賛否を問う住民投票が行われました。

 結果は、賛成8,353票に対し反対が26,804票と、圧倒的多数で否決されました。しかも投票率が62.34%と国政選挙並みで前回の市長選を上回る投票率でした。市長は、一票でも多い方に従うことを明らかにしていましたから、この計画は白紙撤回となりそうです。

 元々、この新駅は、JR東日本が自ら作ろうとしたものではなく、市が建設費等を負担する「請願駅」であるため、人口約69,000人あまりの市で50億円超の負担を強いられることが大きな反対要因であったと思われます。

 地元でない方が大半だと思いますので、位置関係を簡単に説明しますと、北本市は地理的に埼玉県の中央に位置し、高崎線で北本駅から大宮駅まで20分弱、上野駅や池袋駅(湘南新宿ライン)まで通勤タイムで約50分と東京のベッドタウンです。2014年度末に高崎線が東京駅まで延伸し、東海道線と相互直通運転が始まると、丸の内・新橋・品川方面への通勤も便利になります。

 とはいえ、新駅設置が予定されている北本市南部からは都心までドアツードアで1時間半を超える遠距離通勤の方が少なくないという微妙な位置でもあります。ここに新駅ができれば周辺住民にとってメリットは大きいのですが、新駅が市の南端に近く(東京側にある桶川市に近い)、市全体からすると利用するエリアが限定される、利用者が多い東京方面に1駅増えることで既存の北本駅からは通勤・通学時間がさらに長くなることも懸念されているようです。

白紙撤回で懸念されるトラブル

 ところで、この新駅構想は約30年前にも出ていましたが、バブル崩壊などもあり、一度頓挫した計画が復活したものです。ここにきて新駅誕生への期待で、バス便(しかも本数が少ない)の所が駅近になる、開発に伴い不動産価格の上昇が見込まれるなどを期待して、すでに住宅を購入した方、あるいは購入を検討中の方もいるかもしれません。

 消費税増税に伴う住宅の駆け込み需要もあります。さらに、この周辺は2014年度中に圏央道の開通が予定され2020年度の新駅設置と合わせた区画整理事業の計画があります。しかも、すでにこうした計画の実行を見込んで住宅を販売した不動産業者もいるようで、白紙撤回となるとトラブルになることも懸念されます。

 筆者は北本市民でもないし不動産の購入を考えているわけでもなく、税金を投入することの費用対効果については触れませんが、新駅設置で、将来、駅の周りに商業施設や公共施設ができたり、大型マンションが建設されたりして、活気ある街に変貌する可能性はあります。

住宅購入や不動産投資時には都市計画のタラレバに注意

 とはいえ、新駅設置による効果といえば、田町-品川間が注目されていますが、夜間人口に比べて昼間人口が少ないベッドタウンでは、同様の効果は期待できそうにありません。企業を誘致して大規模複合施設のようなものが出来れば別ですが、都心から約40キロという微妙な立地条件が気になります。

 埼玉県は、経済的に東京を中心とする首都圏エリアでありますが、北関東という側面もあり、実際、さいたま市には企業の北関東支店も結構あります。埼玉県は北関東なのか南関東なのかといった論争もあるくらいです。

 その埼玉県内のさらに中間的なところに位置し、東京都心や県都・さいたま市への影響が少し緩和される程の距離があるものの、猛暑で有名な熊谷市のような一地域として独立した経済圏を持たないというトカイナカ的なエリアです。車を持たない人が多い東京と全国屈指の車社会である群馬県に挟まれ、その間を走る高崎線のさらに中間付近、地図を見れば見るほど何とも微妙なところに感じます。

 もっとも、駅ができてもできなくても、都心との程よい距離がオンとオフの切り替えには良い所だと思います。このような北本市で、新駅設置の是非を問う住民投票の結果が、4分の3を超える反対だったのです。

 将来どうなるかはわかりませんが、都市計画は実際に着工してから頓挫するケースもあるくらいで、住宅購入や不動産投資では、街づくりの計画段階でのタラレバは禁物であるというリスクをあらためて実感しました。(執筆者:高橋 政実)