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「借地権」でよくあるトラブル例 使う場面によって意味が異なる

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「借地権」でよくあるトラブル例 使う場面によって意味が異なる

 私は職業柄、いろいろな場面で「借地権」についてお話しやご相談を受けることがあります。そして借地権には普通借地定期借地なんてのがあるというのはご存知の方も多いと思いますが、この「借地権」そのものが様々な法律上に登場し、それぞれ定義が異なるのをご存知でしょうか?

 そんな誤解から様々なトラブルが生じている場面をよくみますので今回はその内容を整理してお伝えしたいと思います。

1. 貸し地≠借地権の場合

 旧借地法、借地借家法第2条第1項にて借地権は 「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう」と定義づけられています。我々の不動産鑑定評価基準や、相続税・贈与税上の定義も同じであり、簡単に言い回しで表現すると「“建物”を建てるために土地を借りること」であります。

 従って借りる目的が建物でない場合、例えば農地として利用するとか駐車場として利用することとか、はたまたフットサルコートのような建物利用が主な目的ではないような土地の賃貸借はこれらの法律上の借地権とはなりません

 それ故よくあるケースとして、「人に貸している=借地権が設定してある」と誤解して、相続税は借地権割合に基づく評価の減額があると思ったら、結局自用地としての評価となってしまい、予想よりも大幅な相続税の納税をしなければならなくなったということがあります。

 相続対策をご検討されている方は、まずもって貸している土地がこの法律上でいう借地権が設定してある土地か否かをチェクすることをお勧めします

2. 貸し地=借地権の場合

 上記の定義がすべての法律上いっしょならいいのですが、ややこしいのは所得税法や法人税法上の定義が上記と異なっていることです。 所得税法上は「建物若しくは構築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権」と定義し(所得税法施行令79条、同施行令80条)、法人税法上は、借地権を「地上権又は土地の賃借権」と定めています。(法人税法施行令137条)

 すなわち所得税法上だと借地借家法に該当しないフットサルコートなどの構築物も借地権であるとされ、その収入もちゃんと申告しなさいよ-ということであり、さらに法人税法上では建物や構築物の有無に関わらず賃貸借が設定されていて、収入となるなら全部を借地権と考えなさいとなっています

 これらの法律は、企業や個人の所得に関する法律なので、より広範な範囲で収入に該当するものをカバーしようという目的のためこのような定義付けがされているのかも知れません。

 このように法人税>所得税>相続税・贈与税=借地借家法という関係で借地権というものをそれぞれの立法趣旨に応じて捉えているようです。しかし同じ用語を用いて、なおかつ所得税と相続税は同じ国税庁管轄というのに、定義が違うなんて、我々にとっては非常に分かりにくいですね-。

 よく知られた用語である借地権も実は使う場面によっては意味が違ってしまうわけなので、用語の意味を確認したり、契約内容を確認することは、とても大事であることが分かります。いわゆる税金や相続対策でいろいろシュミレーションの計算をする前に是非されてみてはいかがでしょうか?(執筆者:田井 能久)

《田井 能久》
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田井 能久

執筆者:不動産鑑定士 田井 能久 田井 能久

株式会社 タイ・バリュエーション・サービシーズ 代表取締役/専任不動産鑑定士 大学卒業後、国内最大手の不動産鑑定事務所に勤務し、1995年に不動産鑑定士資格を取得。その後、米国系不動産投資ファンドに転職し、資産評価業務を担当。全国各地でさまざまな物件の現地調査と価格査定を行った。2006年に独立し、株式会社タイ・バリュエーション・サービシーズ(http://www.valuation.co.jp/)を設立。1,000件以上の評価実績を有し特に相続や訴訟に関連する案件を得意とする。海外事業では滞在型余暇を楽しむ人に助言する「ロングステイアドバイザー」業務を行い、2015年にマレーシアの企業と業務提携開始。MM2H取得アドバイス業務や海外不動産投資アドバイスを行い(https://malaysia-longstay.com/)自身も2018年にMM2Hを取得。元愛知大学非常勤講師で現在セミナー活動もしながら各種WEBメディアに記事提供を行う。 <保有資格>:不動産鑑定士 寄稿者にメッセージを送る

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