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国外財産調書の不動産価額はどうやって書く?

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国外財産調書の不動産価額はどうやって書く?

 確定申告が始まり、今年も税務署に伺う時期となりましたが、「国外財産調書制度」のポスターにお気づきになられた方も多いと思います。それは平成24年の税制改正により、平成25年12月31日における国外財産の保有状況を記載した調書を、平成26年3月17日までに提出する制度であり、日本に居住し5,000万円を超える資産を海外で保有する人が対象となります。

 資産と一口に行っても株や債券など様々であるのでその制度の詳細はとてもご紹介しきれませんが、不動産鑑定士として関心が高いのは「国外にある不動産の価額をどうやって決めるのか?」です。記載例を見るとシンプルに価額(それも円建て)で書いてあるだけでこの価格は「時価」または時価に準ずる「見積価額」とされています。

 それでは「時価」とはなにかということですが専門家による鑑定評価額もそのひとつであるという認識のようです。ただし「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書関係)の取扱いについて(法令解釈通達)」なんてのを注意深く読むと「固定資産税の評価額でもOK」との解釈もでています。

 法令上は固定資産税の相続税も「時価」ですが、現実的に取引される価格は違います。日本でもやはりその差はあり、海外でもその差は確認され、その証拠にFair value(公正価値)やTax assessed Value(税制上の価値)と言われその相違が議論されています。制度上あまりこの価値論に関し詳細な定めがなく、とりあえずは保有する国で資産税が課税されている場合はその金額を記入すればよさそうです。

 しかしそもそもすべての国が日本のように固定資産税評価額が明示され課税されているか分からないですし課税明細のフォーマットも違う可能性がありますのでどれが「価格」に該当し、どれが「課税標準額」に該当するかも結構読み解くが難しいかも知れません。

 じゃあ「路線価で査定するか」といってもこれまた路線価を実施していない国もあり、さらに地価の上昇が著しい国では数年前の「取得価格」が「時価」を反映しておらず実際に売却などをしたらすごい乖離がある可能性があるので十分注意が必要です。またそもそも論として不動産を土地と建物の別々ととらえず一体として考える国も多くあるので建物は償却後の価格と言われてもどうやって分けるのかが素朴に疑問であります。

 我々の監督官庁である国土交通省では、海外不動産を鑑定評価する際の「海外投資不動産鑑定評価ガイドライン」を平成20年に策定してどのように海外の鑑定士と業務を進めるべきかのルールを定めています。

 ただしこの制度ができた背景としてJリートによる海外不動産投資が可能となった場合の必要性に対応するのが目的だったので、”Jリートなどの投資法人による大規模な投資不動産の正式な鑑定評価”を念頭に置いているようでした。

 そしてあれからわずか5年で海外不動産の価値を適正に把握する必要性は個人にも及んできました。国土交通省や協会としても今回の税制の改正を捉えて”海外個人所有不動産の評価ガイドライン”なんかを簡易評価版と正式評価版に分けて提示してほしいものですし、私個人としても大変興味がある分野なので、依頼がこればいつでも対応できるよう準備を進めて行きたいと思います。(執筆者:田井 能久)

《田井 能久》
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執筆者:不動産鑑定士 田井 能久 田井 能久

株式会社 タイ・バリュエーション・サービシーズ 代表取締役/専任不動産鑑定士 大学卒業後、国内最大手の不動産鑑定事務所に勤務し、1995年に不動産鑑定士資格を取得。その後、米国系不動産投資ファンドに転職し、資産評価業務を担当。全国各地でさまざまな物件の現地調査と価格査定を行った。2006年に独立し、株式会社タイ・バリュエーション・サービシーズ(http://www.valuation.co.jp/)を設立。1,000件以上の評価実績を有し特に相続や訴訟に関連する案件を得意とする。海外事業では滞在型余暇を楽しむ人に助言する「ロングステイアドバイザー」業務を行い、2015年にマレーシアの企業と業務提携開始。MM2H取得アドバイス業務や海外不動産投資アドバイスを行い(https://malaysia-longstay.com/)自身も2018年にMM2Hを取得。元愛知大学非常勤講師で現在セミナー活動もしながら各種WEBメディアに記事提供を行う。 <保有資格>:不動産鑑定士 寄稿者にメッセージを送る

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