先日、新聞をぱらぱらとめくっていると某ハウスメーカの相続対策セミナーの案内広告が掲載されていました。相続増税に向けて相続税の財産評価額を下げるために、貸家を建てようと進めるものです。今年に入って、何度か同様のセミナーの記事を目にしました。来年からの相続税の基礎控除額減額に向けて、各ハウスメーカーは新規顧客開拓に躍起の様です。

 そんな記事を読みながら、何気に日経WEB版に目をやると興味深い記事が目に入ってきました。その記事の内容は、昨年の住宅着工数の増加に関する内容から、空家の状況についての記事でした。

 住宅着工数が増えるのは、経済の活性化という側面では非常に喜ばしいことと考えがちでしたが、その反面、現状の空き家数は、全国でおおよそ800万戸近くあるようです。このまま、現状のような住宅着工数で推移すれば、当然に人口は減少してきていますので、この空き家は無尽蔵で増えていく恐れがあります。

 ここで問題なのは、日本の場合、住宅総量を管理したりとか住宅総量を調整する概念をもっていないことにあるようです。

 例えば、東京都の場合、土地の価格の推移にもよるでしょうが、先ずは23区、次に23区の外側へと住居を求めることとなるでしょう。人口減少や住宅の増加に伴って空き家が膨大に増えてくると、価格は下がるは…賃料は下がるは…多摩ニュータウンのように都心から遠く離れた郊外型団地はスラム化してしまうことも考えられます。

 このようにして考えると、相続対策の貸家建築は、賃料の下落や空室等のリスクは非常に高くなってくると考えられます。目先の相続税を下げるのか、思いきって売却して他の資産に移しておくのかの判断も必要となってくるでしょう。むしろ、人口の増える国の不動産を所持した方が、資産価値は高いともいえるでしょう。

 相続税は上がってくるは…相続後に土地を売却した時の譲渡所得の取得費加算は削られるは…空室や賃料減額のリスクは高いは…今後の相続対策は一筋縄ではいかなさそうです。不動産の知識、税務全般の知識、保険の知識、資産運用の知識、等々の総合的な財産コンサルティングのスキルが必要となるでしょう。とにかく、冷静に総合的に、判断することが必要となってくるでしょう。(執筆者:荒木 達也)