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銀行窓口での”一言”で夫の預金が引き出せない… 相続の失敗事例(2)

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銀行窓口での”一言”で夫の預金が引き出せない… 相続の失敗事例(2)

 「一般の常識ではあたり前のことが通用しない。」相続の世界ではよくあることです。今回は「相続での失敗事例」の2回目で、本人死亡による預金凍結の話

銀行窓口での”その一言”で口座は凍結


 夫が亡くなり、その口座から当面の生活費や葬儀代に必要な資金を出そうと銀行の窓口へ。そこで「夫が亡くなり…」と伝えた時点で口座は凍結となります。それ以降は口座から引き出すことは不可能となり、後述する大変な手続きが必要となります。

 なお、一般の方から「銀行は預金者の死亡を市の住民課からの連絡や新聞の訃報欄から知るのでは?」と聞かれることがありますが、そのようなことはありません。公的機関が個人の死亡を銀行に知らせることは絶対にありませんし、訃報欄の情報では本人を特定できません。同じ地区に住む同姓同名の別人の預金を勝手に凍結すれば、銀行が訴えられます。

 ただし、「夫が亡くなったので…」と言ってしまえば遺族からの申告となり、もはや銀行は口座を凍結せざるを得ません。その口座を解約したり払い戻しを受けようとしたら、

故人の戸籍謄本または除籍謄本(法定相続人の範囲がわかるもの)
相続人全員の戸籍謄本
相続人全員の印鑑証明書
相続人全員の実印が押印された銀行所定の用紙(相続届)

 これに故人の実印、届出印、通帳、さらに手続きをする人の身分証明書が加わります。これを解約・払い戻しする通帳(金融機関)の数だけ用意するわけです。さらに遺産分割協議書または遺言原本が求められるケースも

 相続人全員の同意は、残された人が奥さんと子供たちだけというシンプルなケースなら問題にならないでしょうが、普段疎遠な甥や姪、叔父や叔母が相続人に入っていたり、相続をめぐって親族間に争いのある場合は大変な作業となります

ではどうすればいいのでしょうか?

☆アドバイス

シルバー世代の資産運用は預貯金が中心となるため、複数の銀行口座を持つ場合が普通でしょう。しかし、たくさんの口座を持つと後始末が大変! ある時期からは普段使っている

銀行2口座程度に絞り、残りは整理するか、残高を最小限にする

ことをお勧めいたします。


 しかし資産の多い方はそうもいきません。というのも一般の預金の場合、預金保険制度で保護されるのは、元本1千万円までだからです。そういう方は、公正証書遺言の作成をお勧めいたします。

 公正証書遺言は、法律で定められ公務員である公証人が作成する公文書であり、「私文書と異なった種々の法的効力が認められています」(判例)。預金口座を最もスムースに解約する方法は「公正証書遺言」で定める方法です。事実、公正証書遺言により払い戻しを求めたケースで裁判所は銀行に預金の払い戻しを命じています。

 さらに、遺言の執行者を相続人以外の第三者の中から選び、預金払い戻し(解約)の権限をその者に委ねておくとさらに有効です。相続争いから中立で公正な第三者からの申し出であれば、金融機関もより払い戻しに応じやすくなります。

 公正証書遺言の気になる費用は、資産の総額、相続人の数によって変わりますが、一般的なケースでは十万円~二十万円程度と思われます。自筆の遺言が無料なのに対して多いと思われるかもしれませんが、預金解約に伴う手間、行政書士などの専門家に手続きを依頼する費用と比べると、決して高い額とは思えません。

「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」を比較

 最後に、公正証書遺言と自筆証書遺言の比較を作ってみました。

☆遺言

 自筆証書遺言には「低コストで簡単に作れる」、公正証書遺言には「法的効力があり無効になるリスクがない」というメリットがあります。2つの遺言はどちらか1つを選ぶという排他の関係ではなく、互いに補完しあうものです。うまく使い分けることが肝心です。(執筆者:綾田 亨)

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《綾田 亨》
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綾田 亨

綾田FP事務所、㈱綾田商店 代表 大阪大学法学部卒。四国電力㈱に23年間勤務後、在職中に取得したFP資格等を活用して独立。香川県で数少ない独立系ファイナンシャルプランナーとして個人相談を行うと同時に、香川県金融広報アドバイザーとして県内各地で各種セミナーの講師を務める。また、NPO法人日本FP協会香川支部支部長としてFPの普及活動にも携わる。本業として駐車場運営会社を経営するほか、25年以上にわたって株や外貨、債券取引を行う個人投資家でもある。個人投資家としての長年の経験から、資産運用や節約術に関するテーマを最も得意としています。 <保有資格>:ファイナンシャルプランナー(CFP®、1級ファイナンシャルプランニング技能士)、宅地建物取引士、1級企業年金総合プランナー、証券外務員2種 寄稿者にメッセージを送る

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