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貯蓄と投資の違いを考えよう 脱「持ちっぱなし長期投資」へ

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貯蓄と投資の違いを考えよう 脱「持ちっぱなし長期投資」へ

 投資と貯蓄、本来比べること自体がナンセンスなものです。貯蓄と投資はその役目が異なるもので、同じ土俵で語るものではありません。銀行と証券会社とでは、役目は全然違います。

「銀行の金利が低いから投資」は失敗のもと

 銀行は決済を行うところです。毎月の電気代引き落としなど、日々生活の上での支払いを行うところです。証券会社は、まさしくお金を殖やす目的で利用するところです。銀行と証券会社の収益構造も違いますし、そもそも銀行はお金を殖やすところではありません。

 これを同列に語ること、銀行に預けていてもお金が増えないので投資をしようという考えは間違っています。投資をする理由として、銀行預金金利が低いことを理由にしてはいけません。そういう理由で投資と向き合うと、たいていの場合、失敗することが多いです。ここはとても重要なところです。

貯蓄と投資の基本的な考えの違い

 もう少し数字を駆使して、貯蓄と投資を考えてみましょう。

 貯蓄は、目的のための資金準備という意味合いが強いですね。「貯蓄」のイメージは「積み上げる」というもので、積木を重ねて高くすることを想像してください。積木の大きさで積み上がるスピードは異なります。毎月1万円貯蓄と10万円貯蓄では、明らかに貯蓄できる額は違ってきますよね。

 銀行預金には利息がつきます。これは結果的に利息が付くだけで、積極的に利息を付与するものではありません。銀行は、皆さんから預かった預金を、企業融資や住宅ローンなどでの貸付金利(借りた側は借入金利)が大きな収入源です。そこから、銀行従業員の給料やシステム代、建物維持などの経費を除いて残った分を預金者に還元します。それが預金金利と言われるものです。

 普通預金は、いつでも自由に引き出し可能で、それは、銀行にとっては使い勝手が悪いものですが、定期預金は、決まった年数は引き出さないもので、銀行にとっては使い勝手がいいと言えます。それゆえ、普通預金よりも定期預金の方が、預金金利を高めに設定しているのです。

 一方、投資は積極的に利息を取りに行きます。投資は「増やす」ではなく「殖やす」です。投じた資金の成長を期待します。投資金額の多い少ないは、もちろん影響はありますが、基本的には投資は、少ない元手で大きな利息を生む手法と言っていいでしょう。

 銀行の利息は、貸出業務の結果生まれるもので、投資における収益、たとえば100万円投資して120万円になった時の20万円は、積極的に取りに行くものです。

「持ちっぱなし長期投資」では勝てない

 さて、貯蓄と投資の基本的な考えの違いをご説明した後で、数字で考えてみましょう。

 預金金利は、いまさら改めて言うまでも無く超低金利で、数字に表すことすら難しい、コンマいくつの世界です。その預金金利は、先ほど述べたように銀行側の都合で決められるものです。

 一方投資に関しては、2013年日経平均株価上昇率は56.7%でした。2013年1月にお金を株式市場に投じていれば、年末には56.7%殖えているのです。100万円が1年で156.7万円になっているのです。2012年の日経平均株価上昇率は23%でした。

 日経平均株価上昇率をピックアップしますと、2011年は▲17.34%、2010年は▲3.01%、2009年はプラスで19.04%でした。

 年間を通して株価を上昇した年を「勝ち」、その逆を「負け」とした場合、2013年から過去10年さかのぼった成績は6勝4敗、15年までさかのぼると8勝7敗、20年では10勝10敗、何となくイーブンになってきていますね。

 その中身をよく見てみると、上昇率の方が下落率よりも圧倒的に大きいのです。2013年から過去20年で見れば、上昇率10勝の平均は21.48%に対し、下落率は▲17.59%でした。20年前から、年初に日経平均株価を買って、年末に売ることを20回繰り返していれば、今の時点ではプラスになっているのです。

 20年前に買ったままの持ちっぱなしはだめですよ。20年前の年初の株価は17417.24円でしたから、今よりも高い水準ですからね。必ず1年で精算して、それを20回繰り返すと言う行動が大事です。

 巷の長期投資というものは「Buy & Hold」という持ちっぱなしを意味しているようですが、それでは今の投資環境では勝てないようです。1年で投資期間を区切る、買ったものは利益が出ていれば売ると言うことを繰り返せば、投資に関しても勝機はあると言うことがわかりますね。

 長期投資は、今投資を始めて60歳までそのまま放置という投資手法ではありません。投資において、先を見通すことは実に難しく、プロでも1年後の投資環境を言い当てることは難しいです。1年という投資期間は十分に長期投資です。繰り返しますが、長期投資は、決して買ったら持ちっぱなしという意味ではありません。利益が出ていればいつでも売っていいのです。

 20年、30年の老後に向けて、1年というくくりで考える投資、やってみてはいかがでしょうか。そうすれば、投資は、老後資金準備の強力な武器になってくれますよ。(執筆者:原 彰宏)

《原 彰宏》
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原 彰宏

原 彰宏

株式会社アイウイッシュ 代表取締役 関西学院大学卒業。大阪府生。吉富製薬株式会社(現田辺三菱製薬株式会社)、JTB日本交通公社(現(株)ジェイティービー)を経て独立。独学でCFP取得。現在独立系FPと して活動。異業種経験から、総合的に経済、企業をウォッチ、金融出身でないことを武器に「平易で」「わかりやすい」言葉で解説、をモットーにラジオ出演、 セミナーや相談業務、企業労組の顧問としての年金制度相談、組合員個別相談、個人の年金運用アドバイスなどを実施。個人投資家として、株式投資やFX投資を行っている。 <保有資格>:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP 寄稿者にメッセージを送る

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